第5話 地味モブは生徒会長が見たい。



 


 どうも。


 婚約者に俵担ぎされてるお荷物地味モブ。マーガレットです。


 先程は、楽しみにしていたシルビオ様の出会いのシーンを見逃して、少しやさぐれています。



 しかし、次は入学式。シルビオ様は、新入生代表の挨拶をするのです。ということはですよ。会場では、俵担ぎから解放されるはず。


 ゆっくりと新入生席から、シルビオ様や生徒会の皆様の挨拶を眺め倒しましょう。


 それにしても、お腹が圧迫されて苦しいです。頭に血も登ってきたし。お荷物も楽じゃないですね。



「シルビオ様、苦しいです。そろそろ解放して貰えませんか?」



「…。」


 無視かー。無視なのか。


 前世の自分よ。お前がすべてを注ぎ込んだ最推しは、やべーやつです。




 シルビオ様が立ち止まった。


 すわ、解放か?と思ったら誰かと話し始めた。



「シルビオ・ランドールです。会長、本日はよろしくお願いします。」



「シルビオ君か、新入生代表のよろしくね。その、に、ご令嬢はどうしたの?」



 その甘い美声はゲームの人気キャラ、生徒会長ではありませんか?この人私の事、荷物って言いかけましたけどね。



「私物なので気にしないでください。」



 シルビオ様、私は人間であって私物ではありませんよ。



 ゲームでは、制服が汚れた事を気にするヒロインをシルビオ様が気遣って、生徒会のメンバーの集まる控え室に連れて行くんだ。



 ヒロインと生徒会長との出会いの名シーン。



 あれ?見逃した?これから?


 いや、もはやどちらでも良い。華麗なる生徒会の面々が控え室に集う様が見れたら、それだけで良い。


この地味モブは本望ですとも。



 モブ立ち入り禁止の呪いですか?


声が聞こえてるのに、全く見えないなんて。


シルビオ様、いい加減降ろしてくれないかな。



 かくなる上は。


「シルビオ様、そろそろ入学式が始まるので、席に戻りますわ。シルビオ様の挨拶、楽しみにしてますわ。」


 これでどうだ。



「先生には、ここにいると伝えているよ。」



 一見、優しげなそのセリフ。


長年いたぶられ続けた私は知っている。


 こいつわざとだ。


そして、まだまだ何か企んでるに違いない。




 神様、今まで従順にこの麗しい最推しの悪魔の所業に耐え続けた私に、入学式に参加するチャンスを!!


 そして、地味モブのそんなささやかな望みは、神に届く筈もなく、控え室の中で私の入学式は終了した。



 まあ、一番見たかったシルビオ様の新入生代表挨拶は舞台袖という特等席から見ることができたから、プラマイゼロなのかもしれない。


 はぁー。舞台袖から見るシルビオ様最高だわ。


これくらい離れた距離感で推しを愛でる事に安心感を覚える。



 モブだから?



 それにしても、ヒロインどこにいるのかな?





「あら、同じ新入生の方ね?迷子なのね。案内するわ。」


「なんで、悪役令嬢が親切なの?ちゃんと仕事してー。」



ヒロインの叫びがむなしく響いた。




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