第4話 地味モブは入学式イベントを見たい。
いよいよ。学園の入学式だ。
花吹雪の中転んでしまったヒロインに手を差し伸べるシルビオ様素敵だったな。
爽やかに微笑んでて銀の髪がさらさらと揺れるのよね。
はぁー。素敵。
落ちた花びらが飾りのようで、推しグッズを作ろうと近所の神社に桜の花びらを拾いに行ったのよ。
虫がいて、悲鳴をあげたけど…。
「マーガレット、この私が横にいるというのに、上の空とは良いご身分だな。」
周りから見たら、婚約者の耳元に優しく話しかける非の打ち所もない貴公子なんだろうな。
周りの女性陣がざわめいてるもん。
しかし、間近で見るその瞳は凄みを帯びていて獲物を狙う猛獣のようだ。耳元で低く囁くハスキーボイスも迫力が半端なくて恐ろしい。今日も現実は反社会的だ。
心の中で南無阿弥陀仏をとなえていると。
背中にどんと衝撃が走った。
これは、刃物突き立てられたりしてます、私?
「なんじゃこらー」とか叫んだら良い系ですかね?
いよいよ、シルビオ様ファンによる実力行使?
シルビオ様が転びそうになる私の脇にガッと腕を入れて引き上げる。
確かに効率的に転ばずにすみましたけど、ここ乙女ゲームの世界ですよ。
「大丈夫?」っていいながら、手を差し伸べるやつ、私にもやって欲しかった。
「助けてやったのに、随分不満そうだな。」
俺様が、俺様がここにいますよー。
視界が傾ぐ。
私は俵のようにシルビオ様の肩に担がれた。
シルビオ様、一度でいいです。乙女の夢お姫様だっこしてほしいです。
日常の脅しに耐え、ひたすら日々のおやつを上納する私に夢を。推しへの幻想よ!カムバック!!
それに私、今からはじまる出会いのシーン、見逃したくないんです!
私は知らない。
ヒロインが取り残されていた事を。
彼女は、マーガレットがクッションとなったおかげで転ばずにすんだのだった。
「シルビオ様?待って。私が転ばなかったからなの?どーしてオープニングがはじまらないのー?」
後にはヒロインの叫びがむなしく響くだけだった。
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