19話
「あー、お友達になろうな?」
「えっ?!それって、断られた?!俺?!」
涼し気な表情で淡々と返答する『しぐれ』
音も消えた様に沈黙が2人の間に降り落ちる。
黒瀬はサァーっと顔色を悪くさせ、叫ぶように詩音に確認する。
「そうとも言えるな……。あとは、『しーちゃん』って呼ぶな……。その呼び方を許すのは俺にはたった一人しかありえないから……」
バツが悪そうに項に手をあて、黒瀬の言葉を肯定する詩音。
そして、視線を伏せ泣きそうな顔で『しーちゃん』呼びを止めるよう『しぐれ』は黒瀬に対して消え入りそうな声で言葉を紡いだ。
黒瀬はそんな『しぐれ』のもの悲しげな姿に目を奪われ、訳もわからず再び頬を雫がとめどなく伝う。
「そ、のっ、たった、1人に……俺はなれないの?」
黒瀬はしゃくりあげながら、縋るように声を震わせ『しぐれ』に問いかける。
「あぁ……。俺にはあいつしかいないよ……」
『しぐれ』は泣きじゃくる黒瀬を真正面に捉え眩しげに目を細め、酷く幸せあふれる笑顔を浮かべた。
黒瀬の啜り泣く声だけが緋色に染め上げられた教室内の空気を揺らす。
『しぐれ』はしゃがみ込み両手を覆い泣く黒瀬に近づき、膝を付く。そっと黒瀬の背中に腕を回し頭を優しく撫でおろしながら口を開く。
「ありがとう。トラ。俺を好きになってくれて……。これからはお友達になろう、な?」
「ず、るい……、しおんちゃん……。ゔぅぅ……、ま、だ、お友達で良いよ……」
「……あぁ。これからもよろしくな……」
黒瀬は縋るように『しぐれ』を抱きしめ返し、肩口に顔を埋める。
『しぐれ』は黒瀬の気の済むまで大人しく抱き締められることにし、そっと腕に力を込めた。
ガラッ
「あ゙ぁんっ?!」
教室の扉が開かれ、暗黒魔王が到着した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます