第七十二話 水泳
「おらおらぁ! どうしたどうしたぁ!!」
真くんと有栖がスイカを食べながらイチャイチャしている裏で、こっちの三人はだいぶ盛り上がってるな。
「もっといけるぞぉ!!」
鬼コーチかな……?
少し遠くにある岩場まで泳いでいって、戻ってくる。
それをただひたすら繰り返しているのが、太一くんとオーくん。
それを見て、砂浜でバット片手に留美子が怒鳴っている。
いかん、体育会系のノリにはついていけんぞ。
やっぱり、僕もスイカ食べに……。
「鈴木もやりたいんだな?」
「あ、え!?」
やばい。
ヤンキーに目を付けられた(ヤンキーは事実)。
留美子は笑顔で、僕を海まで引っ張っていく。
「ほら、泳いで来い!!」
「うわっぷ!!」
背中を押され、半ば倒れこむように海に入った。
「あっちの岩場まで泳いできな!!」
ええ、そんなぁ……。
運動不足の僕にそんなことできないよぉ……。
「……」
とりあえず、やるっきゃない。
僕は泳ぎ始めた。
が。
「はぁ……はぁ……」
ま、まずい。
予想通り、泳げなかった。
それに、いつの間にか足が着かないところまで流されていた。
これガチで溺れるって……。
せめて浮き輪でもあった……ら……。
「も、もう……だめ……」
足が疲れて動かなくなってしまった。
視界が青く染まる。
きれいな海の中だ。
僕はこのまま熱帯魚に囲まれて……。
「あう~~!!!」
「おおお!?」
急に体が浮上した。
なにかと思えば、オーくんが僕を引っ張ってくれている。
「うあうあ!」
一緒に泳ごうって?
「ふふ、ありがとう!」
お気遣い感謝するよ。
力持ちのオーくん、それにここは水の中だ。
軽々と僕を引っ張って泳ぎ始めた。
もちろん僕も精いっぱい泳ぐ。
頼ってばかりじゃいられないしね。
「あーーっ!! オーくんとコンビを組むなんてずるいぞ鈴木!!」
追い越された太一くんは、負けじと並んでくる。
いい勝負だ。
「ふふ、後もう少しでゴールだよ!!」
気づけば、岩場はすぐそこだ。
「「ゴール!!」」
「あう~~!!」
岩に手が付く。
ほぼ同時だった。
「引き分け……かな?」
「そう……だな」
いやー、疲れた。
三人とも、岩に上がって倒れ込む。
「また、泳ごうな」
「おう!」
「あう!」
こういう熱い青春も悪くないな。
「お前ら、遅かったな」
「あれ?」
留美子が寝転がっている僕達の顔を覗きこんだ。
なんで留美子がここに?
波打ち際を見ると、彼女の姿はない。
てことは?
「お前らは力任せに手足を動かしてるだけだ。そんな泳ぎで水泳部部長のあたしに敵うと思うなよ」
「す、すげーーーー!!」
「あうううーーー!!!」
水泳部部長か……。
それなら納得だ。
泳ぎ方がちゃんとしてるんだろうな。
「留美姉ちゃん、もっと泳ぎ教えて!!!」
「おうよ!!」
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