幕間 「待ちに待った水着回!!」
第七十話 蒼海
「青い海!! 白い砂浜!!!」
ここは地上の楽園か!
南国の暖かい風が、そよそよと吹いてくる。
暑いけれども不快感はなく、ただただ気持ちがいい。
心地よい波の音を聞きながら、ビーチでボーっとしているだけでも得られる幸せ。
大丈夫、安心してくれ。
君は読み飛ばしてはいないよ。
前話は、サーモンでヒクイドリを餌付けしたところだよ。
それからどうして海になるのかって?
それは……。
――――――――――
僕達は、無事任務を完了した。
誰も欠けることなく、帰ってきた。
もちろん目的の書類も回収した。
お城に帰ると、健康診断やらなんやらをして、終わったころにはみんな疲れて寝てしまっていた。
かくいう僕もそう。
結局ごちそうどころかなにも食べずに寝てしまった。
それほどまでに、今回の任務は過酷だったんだ。
それで、翌朝もしや朝食がごちそうだったり……と妄想しながら食堂に入ったところで、こう言われたんだ。
「改めて、よく私の課した任務を遂行したわね。素晴らしいわ」
「ありがとうございます」
「本当に、よく戻ってきましたね」
柔らかな笑みを浮かべて僕達を眺めるX。
数日前とは違い、緊張感が抜けている。
「ゆえに、相応の報酬を与えます」
報酬か。
なんだろう。
ボーナスでももらえるのかな。
「ごちそうは?」
「ごちそうもあるわよ。それも込みよ」
込み?
「あなた達には、休暇を与えます」
「休暇……ですか」
遊園地にでも招待してくれるのかな?
それとも、もっとすごい?
「青春って大事なのよ。その大切な時期を、こんな血なまぐさいところで過ごさせるわけにはいかないの」
それはそうだ。
連れてきたのは僕だが、こんなところに籠もりっきりはいけないとは思う。
「思いっきり、夏を満喫してきなさい」
――――――――――
ここまでが回想。
飛行機に乗って、なんと僕達はハワイ……の近くにある、Xが個人所有しているプライベートビーチに来た。
観光客で混んでいることもない、最高の場所だ。
だが、混んでいないとまた問題がある。
「怪物……いるのでは?」
と訊いてみたら。
「安心なさい、定期的に殲滅しているから」
と返って来た。
「そんなことできるんですか? じゃあ、なにも僕達が怪物を倒さなくても……」
「水着回に道理を求めない!!!! 男女の水着が見れればそれでいいのよ!!!」
うわーお。
この作品、突然コメディ路線に歩み始めたな。
なーんて、メタなツッコミ入れてても始まらない。
「鈴木さーーーん!! 海! 海ですよ!!!」
「あはは、気を付けるんだぞー」
青い海パンを履いて、波打ち際で楽しそうに走っている真くん。
こんなに楽しそうな顔は、初めて見るかも。
海に来たことないのかな。
たしかに、彼が住んでいた場所は、海から遠かったが。
「あ……」
そうか、彼は目が見えないから。
海を感じるのが初めてなんだ。
目が見える僕達は、写真で海がなにか知れるけど。
うん、ここに来れてよかったな。
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