第五十一話 封印
「さて、これで最後かな。もうおしまいだ」
お昼ごはんを食べてからもいろいろ回ったから、みんなはすっかり疲れている。
もう長い長い廊下のほぼ端まで来てしまったし、帰ろうかな。
「ぐう〜〜〜!!」
廊下を引き返そうとしたときだ。
オーくんが、廊下の突き当りを指さして唸る。
「どうしたんだい?」
「うあ〜!! う〜!!」
「さっぱりわからんな……」
僕が困っていると、真くんが通訳してくれた。
「オーくんは、あの奥の部屋にあるものが気になるみたいですよ」
「そ、そうなのか……」
よくわかるな……。
「で……。あの部屋……かぁ」
あそこは行かない予定だったんだけどな。
それに、よりによってあの部屋かぁ……。
他の部屋ならまだしも……。
「あう!!」
しかし、言い聞かせても聞かなそうだな。
「しょうがない、これが最後だよ」
僕達は、長い廊下の果て。
非常口の薄明かりしか灯っていない部屋に入った。
「わぁ……広いですね」
「こんなに大きい部屋があったんですわね」
ここだけは、他とは違い格段に広い。
天井も高く、中央には吹き抜けがある。
何階も下へと続く。
「ここには、世界を滅ぼしかねない魔神が封印されているんだ」
「魔神?」
「ほら、これだよ」
電気をつけると、広い部屋の中央に置かれている巨大なシルエットの正体が明らかになる。
「ロボットだ!!」
そう、男の子が大好きなやつだ。
鋼鉄でできたメタリックなボディ。
スリムな体型で、かっこいい。
「あまりに大きいから、この地下一階では頭しか見えないけどね」
「すげー!」
案の定、大興奮だね。
「このロボットは、今から千年ほど前に京都の陰陽師達が怪異を打ち倒すために作られた……と言われている。実際にはいくつかの戦で兵器として使用されてきた記録がある」
もちろん、それらの記録は一般には公開されていない。
この研究機関に関係する一部の人しか知らない情報だ。
「最後に使われたのは、第二次世界大戦の真っ只中……らしいんだけど、これ以上は僕も知らない。危険なアイテムだから、担当研究員以外には詳しい情報が公開されてないんだよね」
だから、語れることはここまでだ。
「まあ、今はただのオブジェみたいなもんさ。平和な日本で……これを使う日なんて来ないでほしいね」
「動かないんですか?」
「気持ちはわかるが、さっき言ったように、これは危険な兵器だ。目的もなしに動かしちゃいけない」
「……」
男子3名はつまんないって、顔してるな。
けど、だめなもんはだめだ。
「さぁ、見るものは見たから帰るぞ」
と、僕がロボに背を向けたときだ。
「えい!」
ゴン!
「あ?」
今なにかしただろ?
変な音がしたぞ。
「ウウウウウ……」
「なんだなんだ!?」
地の底から響いてくる重低音が聞こえる。
「起動……してますわ」
「……あれが?」
そんな馬鹿な。
「頭の中、人間でいう脳のところがどんどん熱くなってきてますわ。エンジンがかけられた……みたいな?」
「どうして……!?」
僕が困惑していると、太一くんが少し申し訳無さそうにしながら走ってきた。
「鈴木、ごめんね。俺がちょっと叩いたら動いちゃった……」
「……なっ!!!」
壊れたテレビじゃねーんだから、叩いて動き出すなんてことあるか!?
「ァ……アァ……」
「……」
「我ハ今再ビ目覚メタリ……」
なんかしゃべってる!!
目開けた!!!
「敵対存在多数確認。排除スル」
てめーはなにを排除しようとしてんだよ!?
僕達か!?
それとも、さっき見てきた愉快な仲間達(回転寿司や人間オオカミ)か!?
「鈴木ぃ!! これまじーよな!?」
まるで地震でも起きたかのように、建物全体が大きく揺れている。
言わずもがな、まずい。
こいつが野に放たれるだけでも大問題だし、おそらくこいつが暴れ出せばこの施設に収容されている魑魅魍魎の類がすべて解放されてしまう。
そんなことになってしまったら、一足早く人類滅亡だ!
「な、なんとか止める方法はないのか!?」
と叫んではみたものの、ここにいるみんなは知る由もないよな……。
「俺、知ってるぜ!」
さっきとは打って変わって、自信満々な太一くん。
「なんだ……!?」
「ぶっ壊すんだ!!!」
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