CHAPTER-05『Wild nature』
MISSION11:テムペ地区救援任務
また1機、火星の荒野で。装甲より先にフレームが歪んだオークが動きを止める。
「くそっ! 何なんだよ!」
最近はどうにも風向きが良くない。アキダリア地方ではライテック社が勢力を伸ばし始め。暴力で甘い汁を吸えていた未登録市民のスラムが自治区に格上げされ、手が出せなくなり。
なにより、ポッと出の新人に白兵戦でボコボコにされてしまった。
フル・オーガを揃えても2万CASHでお釣りが来るが。それはそれとして手痛い出費である事には変わりない。
その上で、少しでも日銭を稼ごうと。野生AIの間引き任務を受注した結果が――
「くそ、なにがただの野生AIの群だ!」
No.5842は肩に据え付けた
出来ればアームドマキナの腕で、グリップを握った方が弾道が安定するが。この大軍を目の前にしてそんな悠長なことをしている余裕はない。
装備どころか、構造すら不均一。そんな規格という言葉から解き放たれた野生種のAIが駆る推定レイブが数体まとめて吹き飛ぶが――
レーダーの上では、敵の数は全く減ったように見えない。
それどころか砲撃で吹き飛ばされた数よりも、更に多数の機体が空いた隙間から飛び出して、機体内部に仕込まれたレーザー砲塔をNo.5842に向けて放つ。
「ちぃっ!!」
その程度でオークの装甲は貫けない。だが――
「くそがっ! オーバーヒート!? いや、まだか?」
耳を貫くアラートと共に表示されたステータスを確認。致命傷のレッドではない。だがイエローの表示と共に、無情な予測値のカウントダウンが刻まれていく。
たとえ
本来ならば、そうなる前に殲滅できるだけの火力をオークタイプは持っているが。文字通り地表を覆い尽くすほどの軍勢に囲まれてしまえばどうしようもない。
(オレ以外、全員――っ!)
僚機の数は10機、そのどれとも通信は繋がっている。だが稼働状態にあるのはNo.5842の駆る1機のみ。それもあと何秒続くか怪しいところだ。
表示上ではあと30秒。だが野生種のレイヴ達は、まだ稼働状態にあるNo.5842のオークに対して内蔵レーザーの砲門を向ける。
「くそがぁぁぁっ!」
No.5842は腰のウェポンラックから
これまで、碌な生き方はしてこなかった。端的に言ってユニティの法が許す範囲で倫理的に顔をしかめられるようなことをやり続けて生きて来た。生きた他人を力でねじ伏せるのが何よりも好きだった。
だから、その上で。数という暴力にすり潰されるのはお似合いの末路で。
しかしその上で、一機でも多く目の前の敵を叩き潰す。理不尽を向けられたからと、折れて何もしない位なら。最初から生きるべきではない。
屑には屑なりの、矜持というものがあるのだ。
「まずは、テメェからだ!」
不用意に距離を詰めて来た推定レイヴの群を、薙ぎ払うように
鞭と棒の双方の性質を持つ
その気になれば、二刀流の棍棒として振るう事も。あるいはヌンチャクのように狭い半径で遠心力を叩き付ける事も出来るのだ。
だが、そんな小手先の技で2機3機と倒しても結末は変わらない。
倒しても倒しても、赤い大地を埋め尽くすように迫る黒い推定レイヴの群は幾らでもNo.5842の前に現れる。
「はっはっ! こうまで来ると、逆に面白れぇじゃねぇか!」
オークの太い腕が、
だが、この戦闘での撃墜数が10機を超えるよりも早く――
「――チィ、クソがぁぁっ!」
甲高いアラートと共に操縦席が赤い警告灯に染め上げられる。折角新調したフル・オークのシステムはショート寸前。かといって今すぐ操縦席を抜け出したとしても、生身でアームドマキナ相手に立ち向かうような真似は不可能。
No.5842の命運はここで終わり。後は野生のAIに機体をゆっくりと解体されて。最悪の場合、彼女自身も生体パーツとして使われてしまう可能性すら考えられる。
まぁ所詮、性能よりも見た目を優先した少女型の
生体パーツとしても、機械パーツとしても有用な所は対してない。逆に相手が人類なら色で媚びて生き延びる手もあるが。野生のAI相手にはそんな手段は通じない。
「くそ、くそ、クソォ!」
No.5842は黄色いショートボブの髪を揺らしながら、操縦桿を必死に振う。意味がないとは理解している。だがその上で、オーバーヒートした機体が万が一にも動けばコンマ1秒でも時間を稼げれば――
「援軍が間に合うなんて、クソ浅ましいがよぉ!」
しかし、当然のようにオークはNo.5842の必死のあがきに応える事はなく。眼前に野生種のレイブが迫り――
その手が装甲に届き、解体するためにレーザーカッターが押し付けられたその時。
オーバーヒート以外のアラートだけが響いていた操縦席に、接近警報が響く。
「あ、援軍が。マジで――?」
それなりに、オーク乗りに気心が知れた相手はいる。例えば
援軍は、地上を亜音速で駆け抜けて、こちらに迫る。
機種は照合結果無し、推定イカロスか、あるいはコンツェルト。だがそんな些細な事よりもその傭兵登録番号に見覚えがあった。
「クソがっ! こいつは、
『……そんな、知らん相手から名前呼ばれる位に有名だったのか。俺は?』
『以前倒したオーク乗りなのでは?
黒いコートを着込んで、無駄に目に力が入ったガキと、青いロングヘアーをポニーテールでまとめた女の顔がモニターに映る。どうやら奴らは2人乗りなんて恐ろしく酔狂な代物を使っているらしい。
「なんで、こんな無茶な依頼を受けやがった。テメェは?」
『120%こなせる依頼だからだ。
正気ではない、十分な武装を施されていないが。100機に迫るAMを単機で制圧することは不可能だ。オークとは違ってコンツェルトや、イカロスベースの機体なら逃げ切ることは余裕があるが。
しかし、それではNo.5842を含む10人のオーク乗りを救出することはできない。
『ディサイド、サブのヴァルター機関。臨界状態に到達』
ようやくNo.5842の駆るオークの光学カメラが、
『テイク・オフ―― コンチェルト・グロッソっ!』
そして、一番の違いは。その背に据え付けられたヴァルター
イカロスの代名詞ともいえる、翼上の推進器を広げて。
「飛ぶのか!? コンツェルトが!!」
『跳ぶさ、その上で――』
『ターゲットロックオン、No.5842。動けば身の安全は保障しません』
宙を舞う青いアームドマキナが、背面から2門の
『拡散弾だからなぁっ!』
空を見上げ、迎撃のためのレーザーを放とうとするレイブの群に向け。2門の砲口から文字通り雨の如く火線が炸裂する。
APFSDS弾のように貫通力に特化したものではない。1発の弾頭から無数の破片が文字通り拡散しながらレイブの群に降り注ぐ。
1発1発はそれこそマシンガンの弾丸とそう変わらないだろう。だが上空からたたきつけられる鋼の雨はレイブの群を効率的にただの鉄屑に変えていく。
「飛行可能で、あの火力かよ……」
当然、戦域に向かうまで地上を走ってきたのだから。ある程度制限時間はあるのだろう。しかしその上で、あの重火力と飛行性能を両立できているのならば――
『目標の30%を撃破ってところか?』
『それはそれとして、
『ならさっ!』
青いアームドマキナは高度を下げつつ、重長砲をしまい込み。腰のウェポンラックから引き抜いた
『脅威度の優先順位は?』
『大差がないので、撃破効率で優先順位を表示します』
だが、その上でフル・イーグルに匹敵する速度と機動力で制空権を制圧してくるのだから殲滅効率が段違いだ。No.5842とフル・オークでは絶望的な死地となる野生のレイブの群は。
「なんだよ、あんときはまだ。オレより少し上程度だったのによ」
先ほどまで、生きるか死ぬかの手前だったのに。もうNo.5842は機体のダメージを気にする程度の余裕が生まれていた。
「くそ、こんな風に助かるなら―― あんな無茶するんじゃなかった」
No.5842のそんな後悔を知る由もなく、
□□□―――RESULT―――□□□
MISSIONRANK:SS
依頼報酬:50000CASH
整備費:-3000CASH
弾薬費:-3000CASH
収支合計:44000CASH
□□□―――STATUS―――□□□
ユニティ登録番号:個人情報により非開示
ユニティ登録名称:ディサイド
所属:傭兵組合
傭兵登録番号:0874
性別:男
年齢:18
総資産:134000CASH
・所持スキル
AM操縦免許
傭兵免許
基礎電脳操作技師
読書家
・コネクション
ゲッカ・シュラーク市民:アイリス
No.7787:ニアド・ラック
No.0666:ブロッサムストーム
No.0278:ジャック
未登録傭兵:ヤンスド・ナンデーナ
ユニティ自治区:ゲッカ・シュラーク
ユニティ自治区:名称未定
ブルーレイリー社:リリル・レイリー
ライテック社アキダリア支部:アグライン
・実績
オリンポス杯完走
エースパイロット《NEW!》
・保有装備
ウェポン:360mm
ウェポン:
ウェポン:
ウェポン:
ウェポン:
ウェポン:
ウェポン:対ビームコーティングマント(ノンブランド)×1
ウェポン:シールドユニット(ノンブランド)×2
・メインAMアセンブル
ヘッド:コンチェルト・グロッソ(ゲッカ・シュラーク社)
ボディ:コンチェルト・グロッソ(ゲッカ・シュラーク社)
レッグ:コンチェルト・グロッソ(ゲッカ・シュラーク社)
・予備パーツ
ヘッド:レイヴ(ライテック社)×4
ヘッド:オーガ(マグガイン社)×1
ボディ:レイヴ(ライテック社)×2
レッグ:レイヴ(ライテック社)×3
レッグ:オーガ(マグガイン社)
To be continue Next MISSION......
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