INTER MISSION01:新ボディ選定(6)
「よし、マッチングテスト完了。しかし無茶を言ったな。ディサイド」
「その分の技術料はしっかり支払うって、言ってるだろう?」
腕を2重に組むゲッカ・シュラークの
基本はコンツェルト。だが元の青い装甲の砕けた部分を、補強する様に白のパーツが無数に組み込まれ。全体的に鋭くなった印象を纏っている。
「しかし、ボディのフルミキシングで。連動ヴァルター機関……」
特にパーツ単位で組み直されたボディは、コンツェルトとイカロス2つの位相ヴァルター機関、そしてコックピットを組み込んだにしては綺麗にまとまっていて。
原型よりも一回りは大きくなり、重量も増加したものの。それは傭兵として運用可能な限界に近い高出力と、更に背中から突き出したヴァルター
「こんな無茶なオーダーをこなしたのは100年ぶりだったぞ」
「けど、スゲェ。期待を120%、いや200%超えている」
単純な積載量と機動力に関しては、ヘラクレスやパラディンのようなハイエンド機に匹敵し。更に短期間であればイカロスから移植したヴァルター
流石に装甲強度に関しては、どちらにも遠く及ばずばす
そもそもそのレベルの攻撃を受け。良くて小破、悪くても中破で耐えきるハイエンド機の装甲がおかしい。その手の攻撃に対してはシールドユニットで強引に受けきるのが
何よりこの性能で整備コストを1500CASHに抑えているのも有難い。イカロスではなくコンツェルトをベースにすることで、高い性能の割に消耗するパーツの価格を限界まで抑え込んでいるところに匠の技が光る。
「けど、こいつは…… イカロスなのか、それともコンツェルトなのか」
とてつもなく、悩ましい。そもそもあまり
理由は色々とあるが、機体名と機種名と傭兵名で混乱するのが一番大きい。
結果として、極端なカスタム機に乗るものはブロッサムストームのように傭兵と愛機を合わせて通り名で呼ばれることが多い。
もっとも、今のところ。ブロッサムストーム以外にそこまで極まった
「別にユニティに登録された機体管理番号がある。極論機体名などなくても良い」
「けどなぁ、それじゃ…… なんというか、数字に出来ない感覚で味気ないなって」
そんなくだらない事をゲッカ・シュラークと話しながら、強化された愛機を見上げていると。居住区画のドアが開く音が耳に届く。
「折角ですし、名前でも付けてあげれば良いのでは?」
ずっとスピーカー越しに聞いていた声。いや、すこし違う。デジタルデータとしての音声データを
けれど、その口調に込められた意志は間違いなく。これまで付き合って来たアイリスのものと同じ響きを持っていると断言できる。
くるりとディサイドが振り返ると、ブロッサムストームに付き添われ。居住区から出てくるアイリスの姿があった。
けれどそれは
更に画面の中で見せていた姿と比べると、少しポニーテールが短くて。更にその表情も少し困惑や、不安が浮かんでいるようにも思えた。
「うーん、しかしアイリスさん。一人で服も着れないなんて……」
「当たり前です、生まれて初めて
ブロッサムストームからのからかうような声で、ようやくディサイドはアイリスは文字通りデジタル化されたネットワーク空間から、3次元に文字通り生まれ変わったのだと理解する。
「なぁ、アイリス……」
「なんですか、
ディサイドはアイリスに向けてゆっくりと歩み出す。彼女はブロッサムストームと同じタイプで、体のラインが出る
当たり前の話として、
結局のところ、
「いや、なんというかさ」
「はい」
「頭を、撫でてもいいかな?」
半ば脈絡を無視して放たれた、ディサイドのセクハラになりかねない言葉に、ブロッサムストームは吹き出し。ゲッカ・シュラークは4本の腕のうち2本を組んで。残った2本で
「この新型機の名前の話は?」
すこし、怪訝そうな視線をディサイドに向けてくる。
「いや、それも重要だが。今はアイリスの髪を触ってみたいんだ」
ディサイドの心に、スケベ心が一切ないかと言われれば。それは分からない。自分の心を全て分かった気になれるほど長く生きていない。
けれどずっと画面の向こうにいたアイリスが、こうやって触れる距離にいるのだから指先で触れてみたいという衝動をどうしようもなく止められないだけだ。
「……少し、だけです。10秒間だけ。どうぞディサイド」
「じゃあ、10秒間だけ」
リストバンド型の端末にアラームをセットして、普段使っている手袋を外し、小脇に挟み込み。ディサイドはアイリスの青い髪に手を伸ばす。指先で触れた瞬間、手触りが甘いなんて矛盾した感覚が体を突き抜けた。
頭頂部から、側頭部に向けてゆっくりと彼女の存在を確かめるように。その髪に沿って手を動かせば。それは初めて食べた砂糖菓子のように、ディサイドの
「どうせなら――」
アイリスが何かを呟こうとしたが、それよりも先にディサイドのリストバンド型の端末からアラームが響く。
「いや、うん。これで十分というか。これ以上は……」
「もしや、なのですが。ディサイド君は童貞なのでしょうか?」
「別に、童貞だからって死ぬわけじゃないだろう!」
ブロッサムストームから下種な視線と共に放たれた、下世話な言葉に。ディサイドは半ばキレ気味に答えを返す。アイリスと出会うまではそんな事をする余裕はなく、アイリスに出会ってからは彼女がずっと一緒にいたのだから。
それこそ、アイリスに断りを入れてそれこそCASHでそういう経験を積むという選択肢はあったが。それを出来るほど彼女に割り切った想いを向けられていない。
「……二人とも、公衆の面前でやるにはハレンチなのでは?」
「あなたも含め、全員気心が知れた間柄ですからセーフです!」
「まぁ、肌を見られた間柄ではありますが」
一瞬ディサイドはぎょっとするが、当たり前といえば当たり前の話だ。
そもそも自分やゲッカ・シュラークよりも、同性の方が細かいサポートに向いている。そう思ってわざわざ
「ふふふ、それどころか友達なんですよ。友達!」
「……流石に、一足飛びでは?」
「いやぁ、何せ
いつも通りのブロッサムストームの笑顔に、ほんの少し悲しそうな色が混じる。
「それは…… どういう? いえ、この体に、登録番号が、ある?」
「不要なら、抹消してくれても構わん」
いつの間にか、ゲッカ・シュラークがディサイドの後ろに立っていた。
「その気になれば
「まぁ、その上で…… その
「あなた達二人の気持ち、という訳ですね」
つまるところ、いまアイリスが使っている体には。かつてゲッカ・シュラークの娘であり、ブロッサムストームの友人だった少女の
そこに、どういう感情があるのかは。ディサイドには分からない。そこまで娘の、あるいは友人の
けれど、自分が知っている故人と同じ記憶をもって。連続した
だからこれは、感情や、理性が、技術に追いつかなかった結果。生まれてしまったバグみたいなものなのだろう。
故人を故人として悼みながら、その全てに無くなって欲しくはない。
とても傲慢で、自分勝手な考え方だとディサイドは思う。
「……私は、この
「その時は、俺の見る目が無かったって事だ」
「まぁ、私は友達として止めに来ますけれど」
この感情を歪んでいると感じるものもいるだろう。あるいはそもそも理解できないものもいるかもしれない。
けれどその上で、ディサイドは――
「なら、この体に紐付けられた
ゲッカ・シュラークと、ブロッサムストームの想いに応えた。アイリスの選択を意味があるものだと感じる事にした。
□□□―――RESULT―――□□□
MISSIONRANK:-
整備費:-50000CASH
諸経費:-491CASH
収支合計:-50491CASH
□□□―――STATUS―――□□□
ユニティ登録番号:個人情報により非開示
ユニティ登録名称:ディサイド
所属:傭兵組合
傭兵登録番号:0874
性別:男
年齢:18
総資産:90000CASH
・所持スキル
AM操縦免許
傭兵免許
基礎電脳操作技師
読書家
・コネクション
ゲッカ・シュラーク市民:アイリス《NEW》
No.7787:ニアド・ラック
No.0666:ブロッサムストーム
No.0278:ジャック
未登録傭兵:ヤンスド・ナンデーナ
ユニティ自治区:ゲッカ・シュラーク
ユニティ自治区:名称未定
ブルーレイリー社:リリル・レイリー
ライテック社アキダリア支部:アグライン
・実績
オリンポス杯完走
・保有装備
ウェポン:360mm
ウェポン:
ウェポン:
ウェポン:
ウェポン:
ウェポン:
ウェポン:対ビームコーティングマント(ノンブランド)×1
ウェポン:シールドユニット(ノンブランド)×2
・メインAMアセンブル
ヘッド:名称未定ヘッド(ゲッカ・シュラーク社)
ボディ:名称未定ボディ(ゲッカ・シュラーク社)
レッグ:名称未定レッグ(ゲッカ・シュラーク社)
・予備パーツ
ヘッド:レイヴ(ライテック社)×4
ヘッド:オーガ(マグガイン社)×1
ボディ:レイヴ(ライテック社)×2
レッグ:レイヴ(ライテック社)×3
レッグ:オーガ(マグガイン社)
To be continue Next MISSION......
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