第18話 きさらぎ駅2
都市伝説が生まれ、全国的に有名になっていた。
それは、天てらすと日登与が住む県庁所在地の都市と同じ県の、政令指定都市にある都心と郊外をつなぐ私鉄電車に関係していた。
ある女子高生のツイートが発端だった。
次のような経緯だったと噂されていた。
女子高生A子は学校の中で弱い者をいじめる集団のリーダだった。
彼女にどのような理由があったにせよ、人として絶対にやってはだめなことをくり返し自分の心を充足させていた。
その日もいつもと同じようないじめを複数人に対して行い、郊外にある自分の家に帰宅するため、通学で使っている都心の中心にある三州鉄道の伊浜駅で電車を待っていた。
次の電車は、上り伊浜駅16時20分着、折り返し、郊外の終点駅である東鹿島駅行き16時30分として発車することになっていた。
時刻は16時10分だった。
(まだ20分以上待たなければならないの、うざいな。)
彼女がそう思った途端、ホームにアナウンスが流れた。
「お気をつけてください。間もなくホームに電車が到着します。その電車は折り返し16時16分発、東鹿島行きになります。」
(えっ、そんな電車なんてあったかな。)
淳子は、スマホの検索サイトを呼び出し、伊浜駅を出発駅に入力して検索ボタンを押した。
すると、いつもよりかなり遅い動きで画面が動き、結果が表示された。
――あっ、確かに16時16分発があるんだ。早く電車に乗れるなんてラッキー
そのうちに、電車が列車に到着した。
彼女は、ホームに入る電車を確かに見た瞬間までは意識があったが、なぜかその後の時間をワープしたようだった。
次に意識を取り戻し目を開けると、既に動いている電車に乗っていた。
(知らないうちに電車に乗り眠っていたんだ。今どこらへんを走っているのだろう。)
既に日は暮れて、電車は暗闇の中を走っていた。
彼女がふと見ると、視線の届く範囲の全てに人影はなく、がらんとしていた。
不自然な状況で電車は走り続けていた。淳子は大きな違和感を感じ、不安を打ち消そうとしてスマホを出し、ツイートした。
「帰宅の途中、知らないうちに電車に乗っていた。電車の中はがらんとして誰も乗っていない。郊外に向かって走る三州鉄道だけれど、いつもより早く走っている。東京の私鉄みたい。」
すぐに「いいね」の数が増え、返信もされた。
「今、三州鉄道に乗っているとすると、伊浜駅を何時何分に出たの。」
彼女はすぐに回答を投稿した。
「伊浜駅16時16分発の電車です。」
投稿が画面に表示されたが、しばらくの間、不気味に無反応だった。
ふいに、書き込みが始まった。今度は複数あった。
「えっ。それはほんとうに恐いのでは。」
「大丈夫。気をつけて。」
「今確認したけれど、伊浜駅16時16分発の電車なんてないよ。」
「外を見て。運転席を見て。」
その書き込みに促され、淳子は電車のガラス越しに外を見た。
すると、外には光りが全くなく完全な暗闇だった。
次に恐る恐る運転席をのぞいた。
なんと、誰もいなかった。
彼女は恐怖した。
そして、半分錯乱した状態で新しくツイートした。
「外は完全な暗闇、ここは伊浜市ではない、どこなの。それに運転席を見たけれど誰もいなかったわ、電車はなんで動くの。恐怖しかない。」
返信があった。
「大丈夫だから。冷静になって。」
「恐怖に負けなければ、必ず現実に戻れるから。」
「どこかに必ず停まるから降りてみたら。」
「いや、電車に乗っていた方が安全だろう。」
「どこかの駅で停まっても、絶対に降りてはだめよ。」
彼女はこの返信に返信した。
「なぜ。」
答えが返ってきた。
「異世界を走る電車が停まり、その駅で降りると、ほんとうに異世界に迷い込んで帰れなくなるわ。」
彼女の最後のツイートがされた。
「こわい、こわい、どうすれば良いの。あっ、今電車が減速した。そして止った。駅名が見えた。『きさらぎ駅』って聞いたことがない。どうしよう………」
その後、彼女がどうなったのかわからないが、SNSの中で拡散して、事実かフェイクかわからないような状態でバズっていた。
時を同じくして、三州鉄道を通学で利用している女子高生の行方不明事件の発生が公表されたので、関連性が注目を浴びて都市伝説に成りつつあった。
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