第16話 時間が止った家2

 全てが終わった後、日登与が天てらすに聞いた。

「この古民家は、これからどうなるの。」


「隠された3つの空間に留まっていた人々がいなくなり、空間がある意味もなくなり消滅しました。そして時間が止った空間が無くなったことで、この古民家の止っていた空間も動き出します。」


「だんだん古くなり、老朽化していくということね。」

「はい。そうです。」


「術が解けたから、老朽化は急速に進むの?」

「術が解けた瞬間、この世界とは普通な関係が再び結ばれますから、この世界の時間の流れと同様な時間が流れるようになります。」



 夜見の国の女王の城の中、女王夜見の執務室に女の子が入室していた。

咲希さき、どうしました。」

「女王様。私の術が完成しました。」


「いつですか。」

「ほんの少し前、私が時間を止めた3つの空間に光りの橋がかかり、それぞれ引き裂かれた家族が1つになることができ、望みが叶いました。」


「いったい誰の仕業でしょう。光りの橋ということは、『日の一族』の能力ですが『闇の一族』が使った術の目的がわかったとはいえ、それを助けて完成させようとは思わないでしゅう。光りの橋に何か特徴はありましたか。」


「はい、わずかな時間で人間の世界全体にくまなく、とても強い|縁《えにし捜す捜す光りが放射されました。その光りのおかげで、さまよい人の霊にしっかり言霊が伝われ、光りの橋をかけることができたのです。」


「わかりました。そのようなことができるのは、あの方しかいらっしゃいません。今、人間の男の子に転生されて、まだ幼いですが神聖な力は神に近いところまで現われています。」


「その方のことは私も存じ上げておりますが、もう消えてしまった3つの光りの橋の残留思念を強く感じました。それは、優しさです。3つの家族の辛い気持ちにしっかり寄り添い思いやる気持ちでした。」


「そうですか、あの方の尊い御性格は何回転生されても昔のままなのですね。」


「女王様。今日はお願いしたいことがあって参りました。」

 咲希が強い決意を込めた顔で言った。



 天てらすと日登与は、いつも特別な世界に接していて、小学生にしてはかなり精神年齢が高かった。

 普通の子供達の尺度で、2人は小学校2年生になった。


 新年度の最初の日、担任が女の子を連れて教室に入ってきた。


「みなさん、静かにしてください。今日の朝は新しいお友達を紹介します。お父様のお仕事の関係で今まで外国で暮らしていました。夜咲希よるさきさんです。咲希さん、自己紹介をお願いします。」


「はじめまして、私は夜咲希と申します。夜とお呼びください。ただし、1人だけ咲希と呼んでいただきたい方がいらっしゃいます。付け足しますと、『咲希さん』ではなく『咲希』です。それは、天てらす様です。」

 いきなりの話に教室中が大混乱になった。


「えっ、今まで外国で暮らしていたのに天君のことをなんで知っているの。」

「なんで、天君だけ好かれるんだ。もう美少女の登与さんと仲が良いのに。」

「女の子が呼び捨てで呼ばれるのは相当だと、お兄さんが言っていたぞ。」


 先生が混乱をしずめようとした。

「みなさん、教室の中で大騒ぎしてはいけませんよ。ところで、夜さんは天君のことを知っているの。今まで外国暮らしなのに………」


「先生の御質問ですが、御質問を受けたことに大変びっくりしております。この倭の国、失礼しました、日本の国で天てらす様のことを知らない日本人などいないと思っておりました。」


「もう、どっちでもいいわ。夜さん、席についてください。ちょうど日さんの隣の席が空いていますね。そこを夜さんの席にしましょう。」

 先生のこの言葉に登与が猛反発した。


「先生、私は絶対にいやです。詳しいことは言うことができませんが、この子は先祖代々、私の一族と敵対している一族の子なんです。それと、いきなり、てらすに対して言い寄るなんて許せません。」


「日さん。確かに名字は日と夜で反対用語ですが、先祖代々敵対なんて発展しすぎじゃないでしょうか。」

 その時、天てらすが手を上げて言った。


「僕が登与さんの隣の席に移動します。夜さんはここの席に座れば良いのではないでしょうか。」

「夜さん。どうですか。」


「はい、天てらす様のご意向でしたら謹んでお受けします。」

 それから、彼が席を移動し開いた席に夜咲希は静かに座った、


 彼が座ってから登与がささやいてきた。

「てらす。あの子、『闇の一族』の子よ。」

「はい、しばらく様子を見ましょう。」



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