第14話 2つの一族のいわれ2
日巫女が話し始めた。
「遠い遠い昔には、『日の一族』と『闇の一族』はもともと同じ一つの一族でした。そして一族の者は、光りの力と闇の力の両方を身に宿していました。」
「おばあちゃん。光りと闇の力の両方を使えるとすると、一つの一族だった時はみんな相当強かったのね。」
「こういった方が、わかり安いでしょう。2つの力を同時に使えることのできた一族は、やろうと思えば世界を完全に支配できる強さをもっていました。そして、力が全くない大多数の普通の人間からは、こう呼ばれていました――神と。」
「私達『日の一族』は半分神なんだ。神のままでいた方が強いのに、なんで半分に分かれてしまったの。」
日巫女がとても険しい顔をして答えた。
「神々と人間はとても仲良く暮らしていました。しかし、俗悪な人間がある神に対して行ったことが、神々の中に対立を生じさせたのです――人間は滅ぼすべき敵か、それとも守るべき味方か。」
「俗悪な人間がある神に対して行ったこととは、どんなことですか?」
彼が聞いた。
「残念ですが、遙か昔のことなので、全く記録が残っていません。ただ、あまりにもひどいことだったので、神々を引き裂いて変貌させてしまいました。」
「おばあちゃん。引き裂いて変貌させたって?」
「とてもとても残念なことです。人間を許し寛容でなけれなならないと、自分を抑え続けた神々は光りの力しか使用できなくなり、反対に人間に対する憎悪をたぎらせた神々は闇の力しか使用できなくなりました。」
「もしかして………」
登与が大きな声を出した。
「そうよ、結局、片方の力しか使えなくなった神々の一方の集団は『光の一族』に、さらにもう一方は『闇の一族』になったのです。そしてそれぞれ神聖を失い、人間になりました。」
彼がおずおずと聞いた。
「神々が人間の中の2つの一族になったのであれば、僕が神の転生者であるアマテラスは、いったい?」
「てらす君、ごめんなさい。なぜ、アマテラスのみ神の魂が人間に転生しているのかはわかっていません。一つだけ言えることは、アマテラスは最高神として特別な存在だということです。」
「わかりました。」
その時、日巫女は心の中で謝ったいた。
――申し訳ありません。日巫女は全てを知っておりますが、今、まだ若いあなたにその真実をお伝えすることはできません。
「今日、私からお話できることはこれだけです。ところで、てらす君。折角ここまで来たのだから、また、神の物見の場である天界空間に行って見たらどうでしょうか。
いろいろなことがわかると思いますよ。」
「はい日巫女様。行ってみようと思います。」
「てらす。私もついて行くわ。」
「まだ登与さんは、天界空間の中に入れないと思いますが。」
「いいわ。でも中で見たことを私に教えてね。」
社殿なら出て、彼と登与は山の頂上の広場にある手洗い場の所まで行った。
「この間もいろいろな景色を見ることができましたが、何を見ても、とても懐かしい感じがしました。」
彼は手を清めて、彼にしか見えない参道に進もうとした。
「それでは登与さん。行ってきます。」
「気をつけてね。」
前回、登与が大変驚いたように、彼の姿が空中で消えた。
「いつ見てもどきどきするわね。まるで、てらすが山の山頂から空中に向けてジャンプしたように見えるわ。」
神の物見の場である天界空間の中を彼は歩いていた。
この前と同じように、遠い所まで時間を動かしながらしながらいろいろな美しい景色を見ることができた。
ところが彼は、その景色の中に異常なものを見つけた。
――あれ、あそこにある家は時間が止り動いていない。
そして、心の中で意識して、家にズームアップして視線を集中させた。
すると、あることに気がついた。
「えっ、これは! 」
手洗い場の前で待っていた登与の前に、彼が姿を現わした。
「てらす、どうだった。いろいろな景色が見られたの。」
「はい。ほんとうに美しかったです。でも、それよりも、大変気になる物を見ました。時間が止っている家がありましたのです。」
「えっ、そんな家があったの。」
「確かにありました。そしてそれにさらに驚くことは、時間が止っている家の空間の中に、何人もの生きた人間がいたのです。」
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