第13話 2つの一族のいわれ

 登与はてらすに、日巫女と灰目九郎との間のエピソードを話し終えた。

 その後、彼は疑問を感じたことを話した。


「『日一族』と『闇一族』って、いったいどうして生まれて、どれくらい前から戦い始めているのでしょうか。それと、光りとそれを遮る闇の力についても、もっと詳しく知りたいです。」


「それじゃあ、今度の土曜日、陽光神社に行って、おばあちゃんに聞きに行かない。」


「はい、お伺いしたいです。僕は日巫女様とお話すると、なぜだかわからないけれど、とても元気がでるんです。」


「午前9時に陽光山のふもとにある私の家に迎えに来て。」

「だいたい場所はわかりますが、登与さんのお宅まで行くのですか、陽光神社の鳥居の前ではだめですか。」


「デートする時は、男の子が女の子の家まで迎えに来るのが普通じゃない。それにこの前から、私のお母さんがてらすに会いたいって何回も言うのよ。」


「デートではないのだけれど…はい、それでは登与さんの家に行きます。」



 土曜日になって、彼は登与の家を訪ねた。玄関のチャイムを押すとドアが開いて登与が姿を見せた。


「入って。」

「失礼します。」

 中に入ると女の人が立って出迎えていた。登与によく美しい人だった。


「いらっしゃい天君、登与の母親の日静花ひしずかです。陽光神社に行く前に少し寄っていってください。」

「はい、おじゃまします。」


 リビングの通されて座った。


「てらす、私のお母さんどう。美人でしょう。」

「はい。それに登与さんにそっくりですね。」

「そうそう、100%の答えね。」


 静花がお茶とお菓子を運んできた。

「いつも、学校で登与が大変お世話になっています。この頃、家に帰ると登与は天君のことばかりずっとしゃべり続けているのですよ。」


「お母さん。家の中でのことをてらすにばらさないで。」


「はいはい。ところで、私は霊力がないから、あまりその方面のは関わっていないのだけど、おばあさんに『日一族』と『闇一族』のことを聞きに行くのですってね。」


「はい。僕と僕の力にも関係することですので。登与さんにお願いしました。」

「私は難しいことはあまりわからないけれど、そもそも、光りと闇の2つの正反対の力を使う人々に分かれて敵対していることが問題だと思うのです。」


「お母さん、それはどういうことですか。」


「光りと闇って、敵対するものではなく、2つが調和してお互いを生かしていくことが本来の姿じゃないかしら。例えば、光りは熱で闇は冷気、人間に当てはめると光りは活動で闇は休息とか。」


「なるほどですね。」

「てらす、私のお母さんは霊力はないけれど、いつも冷静に物事を見て、分析できることがすばらしいところだわ。」



 登与の家にしばらく過ごしてから、2人は陽光山を神社に向かって登り始めた。

 鳥居をくぐって登り始めると、また、彼の体が緑色に変わり始めた。

「精霊達がまた集まってきました。」


 精霊達がささやいていた。

「また、この子が来たね。日巫女の跡取りと一緒だ。お似合いの2人だね」

「それにしても、この子のオーラーはとても美味しいね。」


「精霊達はなんて言っているの」

「大したことは言っていませんけど、登与さんと僕がお似合いの2人だと言っています。」


「そうなの。精霊公認のカップルでうれしいわ。」


 頂上の陽光神社に着くと、直ぐに社殿の中に入った。そこには、日巫女がにこにこした顔で2人を出迎えていた。


「てらす君、灰目九郎と戦ったのですね。」

「戦ったといえるかどうか――僕が歩いていると勝手に闇に包んで、そのうち絶えられないと言って闇を解きました。」


「灰目が直ぐに術を解いたとは、てらす君の光りの力がそれほど強かったのでしょう。その他に何か言っていなかったですか。」


「黄泉の国の女王のことを言っていました。疑問なのは、その女王が僕のことを良く知っているような口調だったんです。」


 彼がそう言った時、微笑んで話を聞いていた日巫女の顔が、ほんの一瞬、ほんのわずかだけ険しいものになった。

 しかし、彼も登与も気がつかなかった。


「登与から聞いています。今日は『日一族』と『闇一族』のいわれについて、お話させていただきますね。」






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