第8話 神話小学校に入学2

 次の日の昼休み、担任の教師が教室に入ってきた。

「天君と日さん、ちょっと来て。」


 先生のそばに近寄った。

「校長先生が2人に会いたいそうよ。」


 それを聞いて、登与が敏感に反応した。

「えっ、何か叱られるのでしょうか。」


 登与は昨日の放課後、学校の近所の家に彼と忍び込んだことがわかってしまったんだと思った。


「さあ、なんだかわからないけれど、校長先生は微笑んでいらっしゃったから、少なくとも、叱るつもりはないと思うわ。ついて来て。」


 校長室の前まで来ると担任の教師が言った。

「校長先生が2人とだけ、ざっくばらんに話したいことがあるそうだから、私はここで失礼するわ。」


「失礼します。天てらすです。」

「失礼します。日登与です。」


 2人は扉をノックして開き、おじぎをして校長室に入った。校長は一番奥の執務机の椅子に座っていたが、すぐに立ち上がり近づいてきた。


「折角のお昼休みなのに申し訳なかったね、さあさあ、こちらのソファに座ってください。」

 校長と2人は対面して座った。


 校長が話し始めた。

「天てらす君、担当直入に言うよ。君はとても強い神聖をもっているね。昨日もこの学校のそばに仕掛けられていた闇の穴を瞬間的に消滅させてしまった。」

「えっ。」


 彼は、自分が昨日やったことは、その場にいた登与しか知らないと思っていたので、校長先生が知っていることに非常に驚いていた。


「それに、日登与さん。日巫女様の後継者ですね。年齢から推測すると、たぶんお孫さんですね。」

「そうですが、校長先生は私の祖母を御存知なんですか。」


「おやおや、日巫女様はこの小学校に登与さんが入学する前に、紹介してくれなかったみたいですね。お互いにもう60歳近くなりましたが、昔、ある仕事を一緒にさせていただいた仲間です。帰ったら聞いてください。」

「わかりました。」


「天てらす君。君はこの小学校にいる間にだんだん成長して、もっている神聖の力も更に強まるようになる。」

「はい、日巫女様にも同じ事を言われました。」


「そして、昨日の闇の穴は、神聖が強い君がどこにいるか確認するために、この地方の全ての小学校周辺の家に仕掛けられた物の一つだ。あの闇の穴を見つけることができるのは神聖が強い者だけだからね。」


 彼は聞いた

「誰の仕業しわざですか。」


「登与さんは、おばあちゃんに聞いたことがないだろうか。あなたち『日一族』と長い歴史の中で敵対してきた『闇一族』のことを。」

「はい。聞いています。」


「てらす君がこの学校にいることに気がついた『闇一族』は、必ずてらす君に会いにくる。そして、彼らはてらす君を混乱させようと攻撃するに違いない。」

「僕をどのように攻撃するのですか。」


「まだ君は幼いから、究極的な攻撃はしてこないだろう。ただ予想されることは、君の回りにあり、君を支えているものを否定させようとするだろう。


 言い方を変えると、家族、友達など人間同士のつながり、優しさは、全く価値のないものだと思わせようとするに違いない。」


 校長はそこで話しを区切り、少し黙った後、ゆっくりと感情を込めた声で話し始めた。


「てらす君。どうか彼らの攻撃に惑わされないように、心の底から願っています。」


「家族、友達など人間同士のつながり、優しさのおかげで、僕の毎日はとても幸せに満ちあふれています。捨ててしまうなんて、とても考えられません。」


「それから登与さんにお願いします。もう日巫女様から聞いているかも知れないけど、てらす君が攻撃を受けた時、彼の心をできる限り守ってください。」


「はい、祖母から私の指命だと言い聞かせられています。」


「2人に私の素性を説明しましょう。私は、古代の神話に出てくる八咫烏やたがらすの指命を担った一族の末裔です。この国の人々、人間の未来を守る者です。『日一族』とは協力関係にあり、古くから『闇一族』と戦ってきました。」



 放課後、彼と登与は一緒に下校した。

 そして、その途中、北と南に別々に分かれる道にさしかかった時、登与が言った。


「てらす、大丈夫。ここから1人で帰ると『闇一族』が襲ってくる可能性があるわ。もう少し私も一緒に帰りましょうか。」


「大丈夫です。僕には『闇一族』に惑わされるような弱い心はありません。今戦ったとしても、十分に撃退できます。」


「むしろ、僕と一緒にいて、登与さんが危ない目に合う方がもっと心配です。」

「まあ、てらす。私のこと心配してくれてありがとう。とてもうれしいわ。」



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