第9話 闇一族との遭遇
登与とわかれた天てらすは、帰り道を1人で歩いていた。1人で歩く道は人通りも普段どおりで、特に異常なことはなかった。
ところが、いつもの曲がり道に入った瞬間、周辺の風景が変わってきた。光りが遮ぎられ、だんだん暗くなり、とうとう全くの暗闇になってしまった。
彼は考えた。
――天界空間に入り込んでしまったわけではない。誰かが、現実空間の光りをどこかで奪っている可能性が高い。
全くの暗闇の中で、彼は唱えた。
「ミチノ、コトワリヲシメセ。ミチヲ、ツナゲヨ。」
こうして、彼は方向を全く間違えないで正常に歩き始めた。
すると声が聞こえた。
「困りますな。アマテラス様、あなたは今人間の年齢で7歳、小学校1年生じゃないですか。そんなに幼いのに、暗闇の世界の中で、全く動じないで平常心で歩かれるのですね。あなたがいるだけで光りがあふれる。光りを遮るのは、もう限界です。」
暗闇が解消された。
そこは、光りに照らされた現実空間だった。道の前方20メートルほど先に男がいた。長い髪を後ろに束ねた背の高い男だった。
「お初にお目にかかり光栄でございます。私は『闇一族』の灰目九郎と申します。本日は、アマテラス様が人間としてどういう方になって転生されたのか、我が一族の女王に伝えるため、確かめに参りました。」
「それで、僕のことをどのように伝えるのですか。」
敵のことを詳しく知ろうと、彼はあえて会話を長引かせた。
「私は我が一族の中では序列三位の能力をもち、どんなに強い光でも完全に遮って暗闇の世界を構築できるのですが、私の能力をフル回転させても数分しかもたないほど、あなた様の神聖な力は強い。」
「それだけですか。」
「いえいえ、それだけではありません。私が光りを遮った最初、あなた様はパニックにならず平常心をもって進むべき方向を把握し正常に歩き始めた。私が期待したのは錯乱状態に陥り、過剰に御身から光りを放たれることでした。」
「僕は光りを放つこともできるのですか。」
「そうですよ。だって、太陽神アマテラスの転生者ですから。」
「ありがとうございます。次に『闇一族』の方々と戦う時に、武器として使わせてもらいます。もしかして、灰目さんが来られますか。」
「滅相もない。本当に今日は完全に一本とられました。あなた様はほんとうに胆力も備えた立派な方ですね。女王がおっしゃるとおりです。」
「女王?僕はそんな方、全然存じ上げていませんが。」
「そうですか。でもきっと必ず、想い出されるでしょう。」
次の瞬間、灰目は消えた。
それから彼は家に向かって歩き続けたが、今後のことを考えていた。
「『闇一族』の能力は光りを遮ることか。きっと、それだけではなく関連していろいろな能力があるに違いない。これから調べなくては。」
家に帰ると固定電話鳴り、心配した登与がかけてきた。
「てらす、どう、大丈夫だった。『闇一族』から攻撃を受けなかった。」
「ええ、数分ほど帰り道の光りを遮られましたが、相手は直ぐに、僕から出ている光を遮るのは難しいことに気づいて止めました。」
登与はそれを聞いた後、電話の向こうで他の人と会話してから再び電話で話した。
「おばあちゃんからの質問、攻撃をしてきた『闇一族』はどんな人だったって。」
「長い髪を後ろに束ねた背の高い男でした。灰目九郎と名乗りました。」
登与が日巫女に伝言すると、電話口で強い反応があった。
「てらす!大変だったのね!その灰目とかいう人、おばあちゃんに聞いたら『闇一族』で序列三位の強い人だそうじゃない!」
「でも、そんなに強くて恐そうな人には見えませんでした。」
「油断しちゃ、だめよ、わかった。」
「はい。」
「闇一族」は人間であるが、死者の霊が集まり作られている夜見の国に出入りすることができた。
夜見の国の女王の城で、灰目九郎は女王に謁見していた。
「アマテラス様は、私がかけた『光り遮断』に全く動じませんでした。」
「どのような反応だったですか。」
「言霊を使い、道に進むべき方向を示させ、平常心で歩き続けました。さらに、あの方の神聖の力はまだ人間として幼いのに、全く神と変わりません。」
「今度の転生は特別なのですね。」
「それから、あの方に、太陽神アマテラスの転生者だから、光りを武器にして放つことができることをお教えしました。すると、今度、『闇一族』と戦う時に使ってみようとか、私が戦いにくるのとか、おっしゃるのですよ。」
「ほ、ほ、ほ、ほ、ほ――あの方らしい。愉快ですね。」
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