第6話 皇子と道化と剣

言葉は、スッーっと胸へ落ちる。


あぁ、自分は"代替え品"なのだと…。



そんな事には、気付きたくはなかった…。



けれども、気付いてしまった。

その事実は変わらない。


自分の中で、信じていたかったものが、急に色褪せていくのを感じた。


「…私に…、意味はあるのだろうか…」


暗く沈みそうになったディアライルへトリスは明るく。


「その意味を知る為にも、殿下!だからね!殿下は殿下の"愛"を見つけるんだよ!"最愛"を見つけるんだ!」


と、言う。


「愛…。愛か…、愛とはなんだ?最愛?…私には…、分からない。…愛とはなんなんだ…」


今まで、祖母や母から与えられてきたのは純粋な愛ではなく、彼女たちのエゴだったのだから、分からなくとも当然なのかもしれない。


「それは、殿下が殿下自身で見つけるのさ!。じゃなきゃ、意味が無い!ねぇ、タトス!なんか言って!」


雑にトリスから、会話のバトンを渡されたタトスは。


「殿下、まずは、"遊び"を覚えるのです。貴方は”白い”…、その眩しいまでに”白い”あなただからこそ、今から学ぶのですよ」

と、答えた。


また意味が分からない単語が出たと、ディアライルは思った。


「"遊び"…?学ぶ?」



「いわば、人の心を操る"遊び"です。そして、そこから、学ぶのですよ。人というものをね…。あぁ、ダドリィー。それは君の得意分野でしょう?」


続いて、タトスからダドリィーへバトンが渡る。


「…まぁ、そう言われたら得意だよ?と、答えるくらいには、色々やるけどさ…。おや、おやおや?…まさか…。タトスは、従兄弟殿に、何をやらせる気だい?」


ニタニタっと、悪そうな顔をして、ダドリィーが言うと。


「…殿下は、あまりに、"白"すぎる。これから先、統治者として、清濁合わせ飲むには…、まだまだ危うい。多少の"汚れ"や"穢れ"を知らねば、このままならば潰れる。いとも容易く、壊れてしまう。…であれば、今から学び、そして…。遊ばねば」


タトスは、そう淡々とした口調で答えた。


「白すぎるか…、私は」


「えぇ…。今のあなたは”白い”…。為政者として、その"白さ"はあまり、周りに感じさせない方がいい。操りやすいと、他者に思わせるのは、時に無謀な行動を伴う」


断言するタトスに、トリスは言う。


「あれ?…そうかなぁ?。まぁ、…僕としては、その”白さ”はあまり、失わないで欲しいなぁ~。その”白さ”は殿下自身だからね!」

それに、ダドリィーが。


「そうだねぇ。…なら、従兄弟殿。…”仮面”を付けるのは、…どうだい?」


と、ディアライルへ言う。


「”仮面”?」


「ねぇ、従兄弟殿。これ以上、君は…、自分の人生を誰かの好きにさせたいかい?。君は、自分の愛を自分で得たいかい?。…さぁ、どうなんだい?」


”これ以上、自分の人生を誰かの好きにさせたいか”。

"愛"を得たいか。


この2つの言葉に、ディアライルは初めて。

心の底から、強く思った。


自分は自分だと。

"愛"を知りたいと。


そして。


「私の人生は私のものだ…。私は…、母上やお婆様の人形では無い!。…"愛"を…私は得たい!」


と、気持ちを口にした。


それに対して、三人は。


「殿下、"愛"を得たいなら、殿下は変わらないとね!選ぶ側になるんだよ!選ばされるんじゃなくね!」


と、トリス。


「私は…。殿下の力になれと、そう父から言われていますし、私自身も、今の殿下の力になりたいと、思いました。その為に、全身全霊を尽くします」


と、タトス。


「おやおや…。目に力が宿ったねぇ~。…まぁ、及第点かなぁ…。じゃあ。…従兄弟殿が目的を叶える為に、僕も力を貸す。だから…、僕に、君の新たな姿を見せてくれるよね?」



と、ダドリィー。


ディアライルはそれに対して、言いにくそうに。


「3人とも…その…」



すると、ダドリィーが言う。


「従兄弟殿、その先は…。従兄弟殿が本当に、得たいものを得た時に聞きたいなぁ~」


「…ダドリィー」


良いのか?という顔をしたディアライルへトリスは言う。


「殿下!僕は暫定的に、殿下付きなだけだよ~。その先は。要らない!。すべてを殿下からは貰わない」


「トリス…」


ここで、タトスも。


「為政者が下に掛ける言葉は時期を選ばねば、意味が薄れます。殿下、今はその先は早計かと…」


と、言いきった。



「タトス…お前まで…」



3人の顔を見渡して、再度。


「いいのか…?」


と、ディアライルは言う。


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