試作品2号 魔法防御力UPネイル
「防具製作で指の爪がボロボロになってきたなぁ。そういえば最近貴族界で爪を塗って飾るネイルが流行って…っ!そうだ!今日は防具ネイルを作ろう!」
早速製作図面を作成し、自宅の裏にある素材倉庫を物色した。ネイルは身体を覆う面積が非常に小さいため、物理防御力の効果はあまり期待できないだろう。何か特殊効果を付与したいところだ。
「…そうだ!魔石を溶かしてそのまま塗料にしてみよう!!そうすれば魔石の属性に関する特殊効果が付くはずだ!」
魔石は魔物から得ることができる。魔導ランタンのような魔導具の燃料として加工しないまま用いられており、装備に使われているという情報は聞いたことが無い。それどころか魔石を加工する技術自体が存在しないだろう。
「どうやったら加工できるんだ…?色々試してみよう!」
まずは炉に入れて液体状になるか試みた。鉄のインゴットが融ける熱量でも魔石の温度は変わらない。そのため急冷しても温度差の影響を受けなかった。熱は効果がないようだ。
次に大槌を使って粉末状になるか試みた。鉄のインゴットが潰れる威力で叩きつけるがびくともしない。隣に住むマッチョに試してもらったが、結果は同じだった。衝撃も効果がないようだ。
最後に魔法を使って加工できるか試みた。私は世にも珍しい全属性魔法適性のスキル持ちであり、故郷の村で母に教え込まれたため初級魔法を扱うことができる。火の魔石に
融けた火の魔石を爪の形にして放置すること数分、きれいな赤色のネイル(片手分)が完成した。見た目がおしゃれなので性別問わずファッションとしても使えるだろう。効果は火属性魔法防御力+5が付与されていた。
「製作成功だ!加工方法が分かったことだし全属性のネイルを作ろう!!」
素材倉庫から火・水・風・土・光・闇・無の魔石を持ち出し、計7種類のネイルが完成した。効果はそれぞれの属性の魔法防御力+5で、色はそれぞれ赤・青・緑・茶・黄・紫・無色である。これで対峙する魔物が行使する魔法に対応した魔法防御力を上昇させることができる。
これらのネイルの性能を実験するべく装備時の効果を持たない4点セットを装備し、ダンジョン8層に出発した。
「ゴブリンメイジ発見!奴で実験しよう!!」
ゴブリンメイジは先日戦ったゴブリンの変異種である。容姿はゴブリンと変わらないが魔法効果のあるローブと杖を持っており、全属性の初級攻撃魔法を行使できる。
盾役が初撃の魔法を防御し、ゴブリンメイジが次の魔法の詠唱をしているところを戦士役が攻撃するのがセオリーだが、あくまで実験なので私は武器も盾も構えない。
「よし、来い!!」
詠唱中に相手が行使する魔法を見定め、魔法に対応する火属性のネイルを右手に装備して
一瞬だけ熱かったが火属性魔法防御力+5のおかげで火傷をすることはなかった。革のチェストプレートに火が点いて延焼効果が発生している様子もない。
「かなりいい性能だ!よし、次来い!!」
それから他の6属性初級攻撃魔法をその身で受けて実験した。火属性のネイルと同様にかなりいい性能を発揮し、大したダメージを受けることはなかった。
実験結果をメモしている間に何やらずっと詠唱しているなぁと思っていると、ゴブリンメイジは
「熱っ!痛っ!!」
火属性魔法防御力+5では流石に中級攻撃魔法に耐えることができず、左胸に火傷を負った。ポーションで回復し、チェストプレートに点いた火を消化しているうちにゴブリンメイジは再び《ファイヤーアロー》の詠唱を始めた。
「も、もう1回だ!来い!!」
今度は両手に火属性のネイルを装備し、火属性魔法防御力+10にアップグレードして中級攻撃魔法をその身で受けた。火が大きく揺らめき大きな音が響くとともに発火する。
一瞬だけ熱く、若干肌が爛れたが火傷は先程よりもはるかに軽傷だ。完全に防げたとは言えないが、それでも8割程度の威力を削減した。他属性の中級攻撃魔法は行使できないようなので、煙玉を地面に投げつけて安全エリアまで戦線離脱した。
「はぁ…はぁ…中級攻撃魔法は防ぎきれなかったけど十分商品化できるな!!」
それぞれの属性魔法防御力ネイルと命名し、表の防具店に陳列して実験結果をまとめてから眠りについた。
その後おしゃれなファッションで最前線に立つ有名な女性の超級魔法使いが全属性のネイルを購入し、見た目も性能も高く評価したことにより女性に爆発的に売れた。
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