防具開発職人~邪道だと追放された防具職人は異質な新防具で革命を起こします~

島津穂高

試作品1号 物理防御力UPベルト

「革のレギンスってサイズが合わないとすぐずり落ちるんだよなぁ。この前戦闘中に脱げて魔物に殺されるかと…っ!そうだ!今日は防具ベルトを作ろう!!」

 私は防具の製作図面を作成し、自宅の裏にある素材倉庫を物色した。中には公務員の給料約半年分の素材も存在する。貯金のほとんどを使って仕入れただけのことはある。


「メインはミノタウロスの革で…あっ、アクセントに銀細工を入れたら恰好よくなりそうだな。よし、早速製作に入ろう!!」

 まずは専用の裁ちばさみでミノタウロスの革をベルトの形に切断する。次に銀で小さな円錐をたくさん作る。最後に銀の円錐を研磨し、ベルトに接着する。


「完成だ!!我ながらなかなかの自信作だな…!」

 ミノタウロスの革はつやつやとしていて高級感のあり、キラキラと輝く銀色が革の高級感を強調している。日常のファッションとしても使えそうなデザインだ。

 相乗効果は見た目だけではなく、装備時の効果にも発生した。

 本来であればミノタウロスの革で物理防御力+10が付与されるのだが、実際には物理防御力+15と1.5倍の効果が付与されていた。


 早速このベルトの性能を実験するべく効果を持たない革のヘルメット・チェストプレート・レギンス・ブーツの4点セットを装備し、ダンジョンへ出発した。

 ダンジョンとは魔物が存在する異界への扉であり、塔のような階層構造になっている。上層に上がれば上がるほど出現する魔物の戦闘力も上がっていく。ダンジョン入り口と各階層の安全エリアには水晶が置かれており、それに触れることで任意の階層や入り口へ転移できる。ちなみに私は荷物持ちとして上位パーティについていったことがあるため40層までであれば転移できるが、今回は2層へ転移した。


「ゴブリン6体発見!奴らで実験しよう!」

 ゴブリンは魔物の中で最弱である。戦闘能力は木の棍棒を持った10歳の子どもくらいだ。それでも人間の脅威となる理由は最低6匹以上で一緒に行動する習性を持っており、人海戦術で仕掛けてくるからだ。

 実験をするには数が多すぎるため、遠距離から弓矢で間引いて1匹にする。ちなみに弓は故郷の村で父に教え込まれた。弓を地面に置き、両手を広げて攻撃を誘う。


「よし、来い!」

 ゴブリンは棍棒を大きく振りかぶり、勢いをつけて私の左太ももを叩きつけた。その瞬間、予想だにしない音が聞こえた。本来であれば肉を叩く鈍い音がするのだが、まるで腕をしっぺしたような軽い音が聞こえた。

 驚いたのは音だけではない。物理防御力+15の恩恵か、ほとんど痛みを感じなかったのだ。せいぜい叩かれたところが少しヒリヒリする程度だ。


「おぉ…!!想像以上の性能だ!!」

 ゴブリンの攻撃であれば何度受けても大丈夫なようだ。実験結果をメモしているうちに、いつの間にかゴブリンの上位種であるホブゴブリンが目の前にいた。身長も体重もゴブリンの2倍ほどあり、ゴブリンの身長と同程度の棍棒を握りしめていた。


「…よ、よし来い!耐えて見せる…!!」

 ホブゴブリンは棍棒を振りかぶり、私の左腕を叩きつけた。その瞬間、肉を叩く鈍い音が響くとともに鈍痛に襲われた。骨折はしていないようだが、打撲したようだ。私は即座に煙玉を地面に投げつけ、安全エリアまで戦線離脱した。


「はぁ…はぁ…流石にホブゴブリンの攻撃は耐えきれなかったかぁ…でも打撲で済んだし十分商品化できるな!!」

 ミノタウロスベルトと命名し、家の表で経営している防具店の棚に陳列して実験結果をまとめてから眠りについた。


 その後革の装備で最前線に立つ有名な男性の戦士がミノタウロスベルトを購入し、見た目も性能も高く評価したことにより革の装備を利用する人々に爆発的に売れた。

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