試作品3号 耐性UP下着

「昨日一昨日と革の装備着て戦闘したら下着が擦れてもうボロボロに。また買いに行かないと…っ!そうだ!今日は防具下着を作ろう!!」

 早速男性用下着型防具の製作図面を作成し、自宅の裏にある素材倉庫を物色した。下着の耐久性と肌触りを優先し、それに加えて物理防御力や特殊効果といった効果を付与したいところだ。


「耐久性と手触りがいいのはやっぱりスパイダー系魔物がドロップする糸だよなぁ。…そうだ!ポイズンスパイダーの糸を使って作ってみよう!!」

 まずは2種類の糸を溶液に浸して繊維の耐久性を向上させる。次に糸を整えて下着全体の強度を高める。最後に専用の織り機を使ってひたすら編み続ける。といっても、この織り機は魔導具なので燃料の魔石が切れるまで自動で織り続けてくれる。非常に高価だが便利な代物だ。


 待つこと1時間弱、ポイズンスパイダーの糸でできた男性用下着が完成した。手触りはシルクを彷彿とさせるほどなめらかで、見た目は素材本来の紫色が活かされて高級感がある。さらに素晴らしいことに、物理防御力+5・毒耐性+10と2つの効果を付与することができた。


「大成功だ!!物理防御力+5が付与されたからそれなりに強度はあるだろうし、パラライズスパイダーの糸で2種類目を作ろう!!」

 同じ手順で作業すること一時間強、パラライズスパイダーの糸でできた男性用下着が完成した。手触りは1作品目と同様にシルクほどなめらかで、見た目は素材本来の黄金色が活かされて高級感がある。効果は物理防御力+5・麻痺耐性+10の2つが付与された。


 これらの下着の性能を実験するべく装備時の効果を持たない4点セットを装備し、ダンジョン21層へ出発した。


 「ポイズンバタフライ発見!まずは奴で実験してみよう!」

 ポイズンバタフライは蝶型の魔物で、毒効果のある鱗粉をまき散らして獲物を捕食する。毒の強さは素材にしたポイズンスパイダーと同程度である。魔法使いが風属性魔法で鱗粉を吹き飛ばし、その間に戦士役が攻撃するのがセオリーだが、実験のため私は両手を広げて攻撃を待った。


「よし、来い!!」

 ポイズンバタフライが頭上を大きく舞って鱗粉をまき散らした。呼吸の度に体内に毒が入り込む。本来であれば鱗粉を吸ってすぐに苦しくなるのだが、驚くことにその症状は現れなかった。どうやら毒耐性+10によりポイズンバタフライの鱗粉を完全に抵抗したようだ。


「おぉ…!よし、次の攻撃来い!」

 今度は耐久性の実験だ。ポイズンバタフライは魔物全般が持つ鋭い牙で噛みつき捕食する。私は実験の邪魔になる革の防具を脱ぎ、毒にかかったフリをして倒れこんで攻撃を誘った。しかし、突然服を脱いだ異常な行動を警戒したのか襲ってこない。

 待つこと十数分、ついに右太ももの下着の上に牙を立てた。さすがに物理防御力+5では防ぎきれず肉にめり込んで痛い。攻撃箇所を見てみると、なんと下着は破れておらず糸が少しほつれただけで済んでいた。


「かなり良い性能だ!もう一方も試してみよう!!」

 太ももへ噛みついているポイズンバタフライを仕留め、今度はパラライズバタフライで実験した。結果は1作品目と同様に麻痺効果のある鱗粉を完全に抵抗し、鋭い牙による噛みつき攻撃も糸がほつれるだけで破れなかった。

 実験結果をメモしている間に防具のない左ふくらはぎを噛まれて傷を負ったため、煙玉を地面に投げつけて安全エリアまで撤退した。


「はぁ…はぁ…これは文句なしで商品化できるな!!」

 それぞれ毒耐性男性用下着・麻痺耐性男性用下着と命名し、表の防具店に陳列して実験結果をまとめてから眠りについた。


 その後ミノタウロスベルトを購入した最前線で戦う男性戦士がこれら2着を購入し、性能を高く評価したことにより革の装備を利用する人々に爆発的に売れた。

 さらに評価を聞いた女性戦士達からも大量の発注依頼を受け、素材卸売り店と提携して大量生産・大量販売することになった。

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