第180話 各国の流れ


 俺達がエルフとの戦いに勝利したことで、この大陸? の情勢は一変した。


 過去の歴史でも大戦で趨勢が決まった話はある。この戦はまさに関ヶ原だったのだろう。


「エルフに力を貸した敵国は攻めます!」


 レイラスの大号令の下、周辺諸国討伐が始まる。


 周辺諸国のうち、エルフ国に力を貸したところは全てレイラスの敵となった。


 降伏したエルフ女王が全て漏らしたので、全てが明るみに出たのだ。


 彼らは必死に「我が国の傭兵が勝手に雇われただけ」など言い訳したが、レイラスには全く通用しなかった。


 というかエルフ女王が他国との手紙などの証拠も献上したので、周辺諸国は言い訳のしようがない。


 レーリア国はエルフ国に攻められていた。つまり力を貸した国が攻めてきたのも同等という理屈で、正当防衛の御旗で周辺諸国にしていく。 


 もちろん俺のマッドゴーレムを運用し、巨人ゴーレム軍が諸国に襲い掛かった。敵対した国は兵士たちが怯えて、まともに戦えもせずに降伏していく。


 そうして敵対勢力が消え失せた。


「うふふ。うまくいきましたねー」

「……完膚なきまでにやりやがったなぁ」


 俺とレイラスとアイガーク王は、レイラス屋敷の応接間で話し合っていた。


 ちなみにアイガーク王はこの隙に、エルフに力を貸した国をひとつ滅ぼして支配している。報告だと「俺らに逆らったら巨人ゴーレムが来るが?」と脅して無血開城させたらしい。


 ……アイガーク王に巨人ゴーレム貸すつもりないんだけどなぁ。


「そういう貴方こそ、私の名前を利用して国を安定させてると聞きますがー?」

「当然だ、使えるものは使わせてもらうぜ。以前はレーリアの属国などにと言ってた奴らも、今はもうダンマリになっちまったぜ」

「そりゃそうだろうな……」


 結局レーリア国への属国になるという、アイガーク王の判断は完璧に正しかったということになる。


 もうアイガークの民も貴族も誰も文句を言えないだろう。最初に戦わずに従属をしたことにより、周辺諸国の中で最大の恩恵を得たのだから。


「そういうわけでよ。ゴーレムの技術をもう少しくれ」

「ダメですー。自分で研究してはー?」

「研究はしてるがよ、どうも優れた奴がいないようでな。新技術どころか、既存の技術すら理解できてないと」

「もっと優秀な人を雇えばどうですかー? うちの旦那みたいなー」

「こいつみたいながそうそういてたまるか!」


 アイガーク王は俺を睨んでくる。


「変才とは失礼な。それは師匠が冠するべきものであって、俺はいたってノーマルな男だぞ」

「黙れ変才師弟が! お前らなんでアイガーク国に生まれなかった! そうすりゃ今頃、アイガークが世界最強になってたのによぉ……」

「うふふー」


 レイラスがすごく機嫌よさそうに笑っている。


 だけど俺だけ生まれていても微妙だったと思うぞ。やはり師匠だ、師匠がいなければ俺はゴーレム魔法を学んでいたかもわからない。


「チッ、ところでよ。お前とベギラの子供が生まれたら、俺の子と婚約させたいんだが」

「まだ妊娠すらしてないんだが」

「どうせヤッてるだろ。そのうち生まれる」


 アイガーク王はニヤニヤと俺達を見てくる。


 こいつ……なんで知ってるんだよ。実はレイラスとは最近は毎日一緒に寝ている。


 散々お預けを食らっていたからな! ちなみにレイラスはベッドではすごく弱い。


「下品ですねー。くだらない話をするなら、さっさと帰っては?」

「待て待て。どうしても聞きたいことがあるんだよ。エルフの件だ、奴らまた反逆したりしてこないだろうな?」


 急に真剣な表情になったアイガーク王は、レイラスを強く見つめる。


 彼からすればエルフは心配の種だろう。なにせ暗殺まで仕掛けられて、割と危うかったらしいし。


「大丈夫ですー。エルフ達には逆らわなければ、危害は加えないと言い含めています」

「それだけじゃないだろうな?」

「当然です。マッドゴーレムを見張りに置いて、常に力の差を見せつけています。それにエルフ女王を人質にしていますから」


 エルフの国には強力なマッドゴーレムを大量に残している。おそらくエルフ五千人全員でかかっても、余裕で勝てるレベルの戦力を。


 勝ち目のない戦いを挑んでくるほど、エルフたちはバカではない。


 しかもエルフ女王もこの屋敷に住ませている。奴らエルフにとって女王はトップなので、彼女がいなければ纏まっての反逆も取れないだろう。


「はっ、随分と甘い考えだな。根絶やしにしちまえばいいものを」

「うふふ。私もそう考えていました。でもベギラの力があれば、そうしなくても大丈夫なんですー」

「そうかよ。まっ、いいんじゃねぇか。必要あれば殺すことも辞さないが、好んで虐殺する必要はない」

「はい」


 レイラスとアイガーク王は小さく頷いた。


 彼女たちはなんだかんだで、優秀な王として動くので時には厳しい判断も下す。だが二人とも非道な人間ではないのだから。


「じゃあ二国の繁栄を願って飲み会しようぜ! 酒をアイスゴーレムで冷やしてよ!」

「酒飲むなら帰ってくださいー」

「なに言ってんだ! 酒で腹割って話すから平和が生まれるんだろうが!」

「そんな酔狂な平和いりませんー」

「お? なんだ? 俺がいると夜伽の邪魔か? ベギラとアンアン言いたいから邪魔か? レイラスちゃーん? ん? ん?」

「……風で消し飛ばしますよ」


 ……レイラスとアイガーク王は、考え方がだいぶ違うのが問題だがな!



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次話が最終話です。


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