第179話 事後処理


 戦いは終わり、俺達は屋敷へと帰った。


 エルフたちは全員が一度は捕縛されたが、見張り付きで国へと返すことにする予定だ。


 もちろん見張りの兵士にはゴーレムたちを持たせる。俺の新作であるマッドゴーレムもいるので、エルフたちでは歯がたたないだろう。


 もしここから更に逆らうようなら……残念ながら今度こそ酷いことになるだろう。流石に限界というものはあるのだから。


 あ、ただ一人だけは返さないことになった。


「我らエルフに慈悲を与えて下さり、ありがとうございます。今後は心を入れ替えベギラ様とレイラス様に尽くします」


 屋敷の寝室。そこでは俺とレイラスが隣り合ってベッドに座っていて、その前に跪くエルフ女王がいた。


 エルフ女王だけは国には返さない。彼女は人質だ、エルフたちが逆らわないようにするための。


 この人質は決して非人道的なことではない。現代日本ならばともかく、この世界は戦国時代みたいなものだ。むしろ人質は当たり前だったりする。


「そうですかー。心を入れ替えてですかー。じゃあ早速最初の仕事を言いつけますねー」


 レイラスは笑ってこそいるが少し不快そうだ。


 まだエルフ女王への怒りが収まっていないのだろうか。


「なんなりとお申し付けください。どんなことでも」

「わかりましたー。ではベギラと子供を作りなさいー」

「ははっ。ベギラ様と子供を……は?」

「は?」


 俺とエルフ女王の間の抜けた声に、レイラスは更に不機嫌そうに笑う。笑ってるのに感情がわかるってある意味器用だよな可愛い。


 いやそうじゃない!? なんで俺とエルフ女王が子供!?


「あ、あのレイラス様!? それはどういうことでしょうか!?」

「レイラス!? 俺も聞いてないんだが!? 流石にどうなんだこれは!?」

「どういうこともなにも。ベギラとエルフ女王で子を作り、その子を時期エルフ王にする。そうしてエルフの統治をするつもりですが?」


 レイラスは淡々と告げてくる。


 俺とエルフ女王で子で王!? なんで!?


「待てレイラス! 俺はすでに三人の妻がいて!?」

「ベギラ、上に立つ者には義務があります。あなたとエルフ女王が子を成すことが、エルフと人の架け橋になる」

「さ、流石にちょっと」

「まさかと思いますが嫌とは言いませんよね? 今の事態を作りだしたあなたが! この事態への最善策を! 取らないなんて! あり得ませんよね!」


 レイラスは笑いながら怒っている。あ、これダメなやつ……。


「あ、はい……」

「エルフの女王も異論は認めません」

「……異論はありません。ですがエルフと人で子が成せるかは分かりませんが……」

「雨ごいは雨が降るまでやればいつか降ります」 


 できるまでヤレということですね、まじかよ。いやあの……妻にそれ言われるのちょっとショックなんだけど……。


「というかエルフ女王、見た目が子供に近いんだけど」

「実年齢的に問題ないでしょう。というかエルフ女王、身体を成長させる魔法とかありませんか? 他のエルフは成人の見た目をしているのなら、長老に近いだろう貴方は若作りしてるだけでは?」

「……元から見た目が幼く見えるもので、若作りしているわけではありません。ただ十四歳くらいまでなら、成長も可能でしょう」


 エルフの女王、若く見えるタイプだったらしい。実年齢は聞かない方がよさそうだ。


 というか成長できるって便利だなー……。


「ではエルフの女王は部屋から出なさい」

「ははっ」


 エルフ女王は立ち上がると執務室から出て行った。


 するとレイラスは少しだけすねたように、俺の方に視線を向けてきた。


「……本当は嫌なんですよ? でもこれが最善の策なので、仕方ないと言いますか……」


 レイラスは両指を重ねていじけている。え、なにこれ可愛い…………よく考えたらさ、もう我慢しなくてもよくないか?


 だってエルフには勝ったし、もう強敵は残ってない。そして世継ぎが必要なわけで…………いける!!


 俺は即座にレイラスに飛び掛かった。


「ちょ、ちょっとベギラ!? 何を……!?」

「よくよく考えたら、エルフ女王よりもレイラスとのほうが先かなって……!」

「……!? い、いやあのそのでも……」

「だって世継ぎは絶対必要だし、早い方がいいと思うわけで」


 嘘は言ってない。


 今度に統治をするのに、レイラスの子供は絶対に必須だ。


 世継ぎがいなくて国が割れるなど、歴史でいくらでもある話だからな!


 レイラスもそれは反論しづらいようで、しばらく顔を真っ赤にして黙り込んだ後。


「…………や、優しくしてください」


 そうして俺はとうとう、あのレイラスと一緒に寝るのだった。


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