最終話 ゴーレム万歳!!


 エルフ軍との決戦後、三年が経った。


 俺達は以前と同じく屋敷の食堂に集まって、仲良く席について朝食をとっている。


 いや以前と同じというのは語弊があるかもしれない。何故なら……。


「こら! 食事の時はちゃんと座りなさい!」

「やだー!」


 メイルが叱っているのは小さな女の子だ。俺とメイルの娘のメラ。


「あはは……もう少ししたらシーミャも、あれくらい元気に走り回るのかなぁ」

「んー?」


 ミレスがメイルたちを楽しそうに見ている。その横にはちょこんと座った、女の子の赤ちゃんがいる。


 名前はシーミャ、俺とミレスの娘だ。まだ一緒の食事は取れないので、離乳食もどきを食べさせている。


「メイルさんー、そろそろ躾を始めるべきですねー。明日から先生を呼びましょう」


 そして小姑いや一家の妻まとめ役のレイラスが、ニコニコしながら椅子に座っている。彼女の横にいるのは男の子の赤ちゃん、名前はジークハルト。


 ジークハルトは俺が提案した。将来の王様なのでやはり名前も恰好よくないとな。


 そんなジークハルトは赤子なのに、すでに落ち着いた雰囲気すら漂わせている。レイラスの遺伝子が強すぎるのかもしれない。

  

「えっ!? ま、まだ早いと思うのです! それに躾ならメイルが……」

「ダメです。自分の子供を躾しても、甘やかす可能性が高いでしょうー。ましてやメイルさんだとー」

「間違いなく甘やかしそうだね……」

「そ、そんなことはないです……」


 目を逸らすメイル。うん、あれは甘やかすな。


 メイルは俺にも結構甘かったからなぁ……。


「お二人は今日は何をするつもりですかー?」

「今日は国の経営状況の確認かな」

「アイガーク国の大臣が来るので、お出迎えをするです」


 ミレスはレーリア国の財務の主要人物。メイルは王族として政治の手伝いをしている。


 ちなみにミレスは財務大臣にはなれなかった。残念ながらこういうのは男がやらないと舐められると言う風習らしい。


 俺としては彼女が大臣ではないほうが、忙しさが減るのでよいと思っている。


「そうですかー。私は今日は隣国の王と会見予定ですー。明日からはベギラと一緒に、アイガーク国に向かいますねー」

「また行くのです?」

「はいー。周辺国が少し妙な企みをしているようなので、事前に警告しておこうかと思いましてー」

「警告というか叩き潰しそうな気がする……」


 レイラスは相変わらず笑っていて怖い。


 断言するが警告なんて生易しいことで終わりはしない。最低でも妙な企みをぶっ壊して、ついでに画策した組織などに大損害を与えるつもりだ。


「さてベギラ。貴方の今日の予定はなんですかー?」

「師匠と一緒にゴーレム研究だ。そろそろ救急ゴーレムが完成しそうなんだよ」


 俺はレイラスの政務を手伝いつつ、ゴーレム研究を行っている。


 決してレイラスに負担をかけているわけではない。ぶっちゃけ俺に手伝えることに限りはあるし、ゴーレム研究をしていた方が彼女の役に立つのだ。


 とレイラス自身に言われている。


 ……たぶん俺に気を使ってくれている節もあると思う。だが俺が凄いゴーレムを開発するたびに、レーリア国は豊かになっていく。


 結果的に他国との交渉カードも増えるので、レイラスの負担が減るのは間違いない。


「そうですかー。それは楽しみですねー」

「頑張るです、あなた」

「頑張ってね!」


 こうして朝食が終わって、俺は屋敷の地下室へと入った。


『ベギラ! よく来たな! 研究も最終段階じゃぞ!』


 人間サイズの土ゴーレムが俺の元へ歩いて来る。これは師匠だ。


 ただしこの土ゴーレムは外部装甲というか、パワードスーツに近い。師匠の実体は今も指サイズの小さなゴーレムだ。


 このゴーレムパワードスーツは人でも着れる。それを師匠も応用して装備しているだけ。


 マッドゴーレム技術で師匠を元のメタリックに戻すこともできる。だが師匠はもう自分自身が強すぎる力を持つつもりはないらしい。


『救急ゴーレムが出来れば世界の医療が激変するぞ! これまで死んでいた命が助かるかもしれんな! 血を送るなど発想になかったわ!』


 救急ゴーレムとは内部に血や綺麗な水を蓄えて、包帯などを内蔵したゴーレムだ。


 イメージとしては動く人型救急キットだろうか。治療に必要な道具を中に入れて、劣化しない血液パックも兼ねる。


 さらにゴーレムなので危険な場所に入って、人命救助などもできる。ゴーレムとしての特性を活かし、人を生かす完璧なゴーレムだと思う。


 俺と師匠が目指したゴーレム理念をこいつに詰め込んだ。


『よしベギラよ! この救急ゴーレムを世界に広めるのじゃ! ゴーレムは兵器ではないとな!』

「もちろんです! さっそくアイガーク王に見せてきますね!」


 俺がベギラになってからずっと、ゴーレムに助けられてきた。


 今後も俺達の前に障害は立ちふさがるだろう。だがゴーレムで全てぶち壊す。


 なにせゴーレムは人を助ける力なのだから。使い方を間違えない限り、俺達の力になってくれるはずだ!


『ベギラよ! 今度はドラゴンの肉でドラゴンゴーレムでも造るぞ! 出来れば生殖機能付きの!』

「師匠!? それはもう生命の倫理とか犯してると思いますが!?」

『人の役に立つじゃろ! ドラゴンの家畜が得られるようになるぞ!』


 ……師匠が頭ゴーレムなのは、いつまで経っても変わらなさそうだが。



----------------------------------------------------

というわけで最終話でした。

ただコメントで頂いたエピローグないのかとの要望にお応えして、閑話を数話ほど投稿予定です! 次話は一週間後とかになりそうですが。

実は8月30日に完結させれば、吸血鬼の書籍発売日に宣伝できるなぁという裏もあって書くことにしました(本音隠さないスタイル)。

もう少しだけお付き合い頂ければ幸いです! 

見たい話があればコメントで下されば、書けそうなら書くかも。



それと新作投稿し始めました。

『国盗りゲームに転生したので、無双して確定処刑される姫を救います! ~ただし姫は恐ろしいほど不運かつ無能で、無双し続けないとすぐ詰みます~』

https://kakuyomu.jp/works/16817330653867733107


ファンタジー風戦記物、というか信長の〇望がやりたい感じです。

よろしければ見て頂けると嬉しいです。

ゴーレムじゃないけど、人形もそのうち出ますので!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る