第133話 ゴーレムの城攻め②
ゴーレムは王都の正門を破った後、すぐに撤収させた。
そのまま俺達は王都に兵をなだれこませずに、普通に包囲して一晩を過ごした。たぶん王都の住人や兵士は生きた心地がしなかっただろう。なにせ正門が崩れ去っているので、敵の侵入を防ぐ手立てがないのだから。
だがこのままあっさりと勝利しました! では困るのだ。まだゴーレムの有用性をあまり示せていない。
そして翌日。俺と師匠とフレイア、そしてレイラスは再度正門の近くに立っていた。
「ベギラ、ゴーレムはうまく大活躍してますねー」
「ふふふ。ゴーレムは機動力が低いのが弱点だけど、敵が動かない城塞ならばたいした問題にはならないからな」
レイラスは甘えた声で俺に囁いて来る。この会話も彼女の風魔法で王都中に響き渡っていた。
戦争でゴーレムが最も輝く使い道は攻城兵器かもしれないな。
本来ならば門の破壊には専用の道具を使う。例えば破城槌――城の門壊す時に複数人で持つ大きな杭――で門をたたいて壊すのだ。
だが当然ながら城門に生身の人間が近づけば、敵の矢の雨を受けてしまう。その中で城の門を破壊しなければならないのだから大変だ。
城を攻略する側には、防衛側の戦力の三倍が必要と言われている。その理由の大きな点がこれだ。攻撃側が門を破壊している間、防衛側は攻撃側の兵士を攻撃し続けられる。
「ゴーレムは力があって頑丈だ。人が扱える程度の武器ではなかなか殺せない」
だがゴーレムであれば話は別だ。矢なんてほぼ効果がないし、落石だってかなり大きな物でなければ耐える。
「素晴らしいですねー。普通の魔法使いではああも簡単には城門を破壊できませんー。ゴーレムはもう普通の魔法使いよりも優秀ですねー」
レイラスはゴーレムの評判を上げるために、あえて普通の魔法使いよりも持ち上げている。
ちなみに城門なんて魔法使いがいれば簡単に壊せると思うだろうが、残念ながらそう簡単にはいかない。射程の問題で魔法使いも門にある程度近づけねばならず、すると敵の魔法使いから狙われるのだ。
今回も壁の上で魔法使いが待ち受けていたように、こちらの魔法の射程内ということは敵の魔法の射程内にも入る。門を狙っている間に敵魔法使いに殺されかねないし、弓矢だって届く可能性がある。
フレイアのように凄腕の魔法使いならば、敵の魔法使いの射程外から魔法を撃って門を破壊できるだろう。だがそんなレベルはそうそういない、というかゴロゴロいたら城塞自体がオワコンになっている。
「さてー。では今日は壁を壊しましょうー。王都のみなさんー、これから正門付近の壁を壊しますので、離れていることをおススメしますー」
レイラスは笑いながら呟いた。
門をあっさりと陥落せしめた次は、その門の横にある壁を破壊する。ゴーレムの力を見せつけるためだけにだ。勝つだけなら正門から兵士送れば終わるし。
「これからー、一体のゴーレムが壁に突撃しますー。ではあなた、お願いしますねー」
「任せろ。馬車ゴーレム、前へ」
俺の後ろに控えていた一頭の岩で作られた馬ゴーレムが、ゆっくりと俺の前へと出てきた。
こいつは貴族に配布した馬車ゴーレムの、車を轢かせていないものと同型。今は移動手段で見れば荷台ゴーレムより性能が劣ってしまう。だが作成コストでは断然こいつの方が軽い。
軽いからこそ荷台ゴーレムでは勿体なくて使えないことができる。
「《コア・スタンピード》!」
馬ゴーレムが桃色に輝き始めた。最近使う機会が減ったが、この魔法はゴーレムコアを暴走させる魔法だ。一時的に性能を爆上げした後……爆発する。
「行け! 壁に突撃しろっ!」
馬ゴーレムは俺の命令に従って、凄まじい速度で城壁に向けて突撃し始めた! しかも真っすぐに進むのではなくて、ジグザグに移動することで敵に狙いの的をしぼらせない!
「て、敵襲! あの馬を倒せぇ! 魔法使い部隊、魔法を放て!」
「は、速すぎます! 狙いが定まりません!?」
「そもそも敵が近づいて来たら、破られた城門の場所に岩を落として穴塞ぐ予定でしたよね!?」
敵は完全に混乱している。なるほど、岩を落とせる魔法使いならば破られた穴を塞ぐこともできるな。面白い発想なので覚えておくことにしよう。
しかし岩を落とす魔法では、高速に移動する馬ゴーレムを当てるのは難しい! なにせ岩を頭上に発生させても、地面に落ちるまでに馬ゴーレムは移動してるからな!
事前に馬ゴーレムの移動予測をして、置き落石でもしないと当たらん! そもそも馬ゴーレムは回避能力もあるので、岩を見てから避けられるけど!
そして馬ゴーレムは城壁へと近づいていき、凄まじい速度のままに体当たりをしかけた! 凄まじい衝撃によって哀れ壁は粉砕して大穴をあけた!
「じょ、城壁が破られた!? そんなバカなっ!?」
「こんなのどうしろって言うんだよ!?」
「どうだっ! これこそが対壁用ゴーレム戦法、猛進特攻!」
巨大な岩の塊が凄まじい速度で突っ込んでくるので、防ぐ手段がほぼないに等しい!
重さ×速度=パワーとはよく言ったものだ! 両方兼ね揃えてしまえば反則級である!
なお今回は馬ゴーレムは体当たりで木っ端みじんになったが、もし耐えた場合は更に爆発する。敵陣中央に突撃させて、爆発させて岩片を飛び散らせるという攻撃方法もあったり。
「ではー。今日は終わりですー。また明日攻めますねー」
そしてレイラスが宣言して今日の攻城は終了する。まさに舐めプの極みであった。
「城壁も門も破られてどうすればいいんだ!? 敵の狙いは何だ!? 何故我らをなぶるようなやり方をする!?」
城壁の上で敵軍の隊長らしき男が悲鳴をあげている。
狙いはゴーレムの力を見せびらかすことだからな。そもそも門も城塞も破られた時点で、もう王都陥落しているようなものだ。
俺達の都合でトドメはさしてない生殺しをしているに過ぎない。明日が総仕上げだ。
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王「イジメよくない」
ずっと毎日投稿を続けてきましたが、そろそろ隔日投稿にするか検討中です。
徐々に終盤に差し掛かり始めましたので、時間かけて書きたいと言いますか。
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