第126話 巨人改造計画
「そういうわけで巨人ゴーレムをまた造ります。ただ以前と全く同じなのは面白くないので、せっかくなので強化案を募集します」
俺は屋敷の庭で師匠とフレイアに対して相談していた。
巨大ゴーレムを製造するには二人の協力が必要だし、せっかくあの規模をもういちど作成するのだから前よりもよいゴーレムにしたい。そうそう何体もつくれるものでもないからな。
『ふむ。ならば車輪移動にするのはどうじゃ? あの巨体が車輪で動けば気味が悪いぞ』
「移動するだけで全部壊すからダメです」
二足の長所は壊したくないものは踏み越えられることだ。車輪だとそういうの無理なので、例えば街に押し入るなどは不可能になってしまう。二足なら広場に足をつけるなどで一応は可能だ。
「俺としては巨大四足ゴーレムを造りたい気持ちはあるのですが……そうすると縦に低くなるんですよね。身長が低くなるというか」
「恐怖を与えるなら高くて目立つ方がよいということですか?」
「そうそう」
高い方が遠くからでもより目立つからな。相手の戦意をへし折って降伏を促すゴーレムなので高い方がよい。
『剣みたいなのを持たせればよい気がするのう。巨人が巨剣を持っていたら怖いじゃろ』
「あー確かに……武器持たせるのはアリですね」
やはり人間は武器に恐怖を抱く。例えば巨人に剣なり大きな石のハンマーでも持たせたら、より恐ろしさが際立つかもしれない。大量の鉄の用意は大変なので岩で代用になるが。
「俺としては顔も怖いデザインにしようかなと思ってます。悪鬼羅刹みたいな」
『面白い案じゃの。身体も土そのままじゃなくて色を変えれないかのう?』
「それは難しそうですが……外側の薄い岩膜などでコーティングなどして、その膜に色を塗る形式ならいけそうです」
土の色を変えるのは難しいが、岩を塗るのは簡単だ。ゴーレム製造時に塗料も用意しておけばよいだけだから。
「怖い色って何でしょうか?」
『赤に塗ればいいんじゃないかのう。もしくは漆黒か』
「それいいですね。じゃあ今まで出た案で製造を……」
「あ、あの師匠! 私の案も聞いて欲しいです!」
今までほぼ黙っていたフレイアが必死に手をあげてきた。
彼女の案か、楽しみではある反面ちょっと怖くもある。また大量破壊兵器みたいな提案してきたらどうしよう……聞いてみないと分からないか。
「分かった、教えてくれ」
「は、はい! すー、はー」
フレイアは深呼吸をして後に俺を見据えてくる。以前のことがあったので彼女も緊張しているようだ。
「ほ、炎を! 炎をゴーレムにまとわせたいです!」
「……フレイア。巨人が炎を全身に纏ったら、どうあがいても燃やしまくるぞ?」
「ぜ、全身ではないです! 例えば頭の上の髪や、首の周りなどの一部だけです! 炎を纏ったらより怖くなりますし、高い部分なのでそこまで延焼の危険はないと思います!」
目を閉じながら必死に叫ぶフレイア。
……確かにアリだな。首や髪辺りなら地上からだいぶ離れているので燃えない。もし倒れたら危ないかもだが、それについてはそもそも巨人ゴーレムが倒れた時点で大被害確定だ。
炎は恐怖の演出としては最適だ。遊園地のアトラクションでも炎で怖がらせるのよくあるし。
「……俺は面白い案だと思う。師匠はどう思います?」
『よいと思うのう。取り入れるべきじゃ』
「じゃあ炎の髪を用意しよう。その部分はフレイアに任せていいか?」
「は、はい! やります! やらせてください!」
すごく嬉しそうな顔で笑うフレイア。俺も正直嬉しい、彼女がちゃんと破壊だけでないゴーレムの案を出してきてくれたことが。特に以前に失敗した炎を再利用していることがなおよい。
これが弟子の成長を見て喜ぶという気持ちか……!
「フレイア。お前は俺の最高の弟子だ。今後も頑張ろうな!」
「は、はい! ……ち、ちなみに弟子だけですか?」
「そりゃフレイアは俺の弟子だからな」
レイラスからはフレイアとも寝ろとか色々言われている、だが考えて欲しい。師匠である俺がその身分を振りかざして、弟子と肉体関係を持つって最低じゃないかと。
なのでフレイアは俺にとってすごく可愛い弟子であり、俺から娶ろうとすることはしないと決めた。レイラスにはガツンと言って土下座して謝ることにする。
「……そ、そうですか」
少し落ち込んでいるように見えるフレイア。
もしかしてアタックしたら娶れるのかもしれないが、師匠としてはそれをやるわけにはいかない……! フレイアから来たら話は別なので、あわよくば彼女から言い寄って来てくれると嬉しい。
『さてではワシが巨人ゴーレムの設計図を描く。それに沿って素材などを集めて行くのでよいかの?』
「問題ありません。レイラスにも完成図は見せないとダメですからね。……今回は彼女の許可なしだと材料費降りないんですよね」
レイラスは今回、俺達に好きにお金を使わせてくれないのだ。彼女曰く「好き放題やらせたら何をしでかすかわかったものではありませんからー」と。
夫なのに信用されてなくてつらい。おかげで好きに魔改造できないではないか。
『どうせなら金色も少し入れたいのう。黄金とかどうじゃ?』
「いいですね! 黄金の輝きは神々を連想しますし! 金メッキにすれば黄金の節約もできます!」
まったく俺はすごく節約も考えているというのに。完全許可制にしなくてもいいじゃないか。
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