第117話 守りを固めよう


 俺達は盗賊討伐後、屋敷に戻って執務室でレイラスに報告していた。


「そうですかー。王家が盗賊を雇った証拠が見つかりましたかー。ならこれで『王家が滅んだ方がよいと諸侯に思わせる』は達成ですねー。私たちが攻める大義名分も得ましたー」


 レイラスは印章つきの書類を見て機嫌よさそうに笑っている。


 王家が盗賊と結託して他の土地を攻めさせた。汚職の証拠としてこれ以上のものはそうそうない。諸侯からしても盗賊は悩みの種なのだから、感情としても許せないだろう。


 つまり諸侯は今の王家はもういらない、滅んだ方がよいと思ってしまう。


「今さらだけど王家って馬鹿だよな……何で印章つきの書類を盗賊に渡すんだよ」

「そうしないと盗賊側は信じませんからー、仕方のないことだと思いますよー。寄る辺のない盗賊はすぐ切り捨てられるので、だからこそ自分達の身を守る証拠を欲するのですー」


 なるほど。印章つき書類を盗賊に渡さないと、そもそも司法取引が難しかったからか。


 それにしたって馬鹿だとは思うがな。自領の商人をやたら襲撃しない交渉ならまだし、外に攻める兵として使ったらこうなる。


 レイラスは以前に俺に見せた王家崩壊術の紙を取り出して、満たした箇所に横線を引いた。


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レイラス考案王家崩壊術(秘)

2.諸侯もしくは民衆から討伐を乞われて、

  王家を滅ぼす形にする。

3.圧倒的な力の差を見せつけて降伏させる。

4.一年以内にカタをつける。

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「残りは三つですねー。よろしくお願いしますー」

「任された。ところで王家を攻めるにあたって、まずはやりたいことがある。防衛を強化したいんだ」

「防衛ですかー? 王家から攻められたとしても、我が軍が負ける要素はないと思いますよー?」

「軍の防衛じゃない。メイルやミレス、そしてレイラスを守る態勢の強化だ」


 以前もエルフが屋敷に侵入してきたし、王家は街に暗殺者を放ってきた。今後は更に仕掛けてくる恐れがある。


 もちろん今後は俺達も迂闊には街に出ない。出たとしても貴族街などの防犯がしっかりされた場所のみにする予定だ。だがこの屋敷にまた侵入してくる可能性は十分ある。


「なるほどー。私は風魔法が使えますから大丈夫ですがー、メイルさんとミレスさんの警備強化は必須ですねー」

「いやレイラスも必要だ。レイラスに何かあったら俺はキレる」

「そ、そうですか。た、確かに私は最高権力者ですし、狙われやすいから警備の強化をして損はないですね」


 少し焦って顔を赤くするレイラス。可愛い。


「えっと、具体的には何をするのですかー?」

「外に出る時はゴーレムを連れ歩くとして、やはり屋敷の防衛を強化したい。特に夜の闇に紛れての暗殺が厄介だからな。それに屋敷で気が休まらないのは御免だ」


 外にいる時の暗殺はそこまで怖くない。移動中は荷台ゴーレムで走っているので誰も暗殺ができないし、建物に入ってからも警備がしっかりとついている。


 問題は屋敷にいる時だ。四六時中、傍に警備をつけているわけにはいかない。私室ですら警備をいれたら気が休まらなくて、精神の方が参ってしまう。それに屋敷内でも気を張ることになったらしんどい。


「それはそうですがー。どうするつもりですかー?」


 レイラスは首をかしげながら尋ねてくる。流石の彼女も俺の考えは読めないらしい。


「端的に言おう。俺はこの屋敷をゴーレムハウスにしたい」

「……ゴーレムハウス? なんですかそれは?」


 俺の言葉に対してレイラスは笑みを見せる。あ、これはよく分からない時の顔だな。


「この屋敷自体をゴーレムにすることだ。そうすれば侵入、いや攻めてくる敵に対しての絶対の要塞となる!」

「なるほどー、まったくわかりませんー」

「あれ?」


 ようは建物型ロボットに近いノリなのだが、レイラスはあまり理解できないようだ。俺はこの言葉ですごく納得できるのだが……建物が動くということ自体が現代地球の創作に多いからかな?


 ほら基地が変形してロボットになるとかあるじゃん。恰好いいじゃん。


「んー、ゴーレムになれば外壁が丈夫になるのは分かりますがー」

「それだけじゃない。自動防衛機能が付与されるはずなんだ」

「自動防衛機能ー?」

「えっと、ほらロボットが勝手に動いて敵を迎撃して」

「ロボットー?」


 ダメだ。現代地球の感性の説明がまったくもって通用しない……!


 セ〇ムとか言ってもダメだろうしなぁ。


「屋敷内に大量の家具ゴーレムを配置して、侵入者が入ってきたら迎撃させる命令を出す。そして屋敷自体もゴーレムになることで丈夫になり、なんか動いて侵入者を迎撃する能力を得る」

「なるほどー、大雑把にはわかりましたー」


 レイラスは微笑んできた。今度はなんとなーくわかった雰囲気のようだ。


「ですがーそれを造るとなるとー、ベギラはしばらく荷台ゴーレムを造れませんよねー?」

「確かにそうだ。でも俺はメイルやミレス、レイラスの身の安全の方が重要だ。荷台ゴーレムはすでに二十くらいはあるし、後は師匠やフレイアにも手伝ってもらう予定だ。たぶん二週間くらいで終わる」

「なるほどー…………わかりました。許可しましょう」

「よし! じゃあ早速取り掛かる!」



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『吸血鬼に転生しましたが、元人間なので固有の弱点消えました。贅沢したいので攻めてくる敵軍に無双しつつ領地経営します! ~にんにく? ガーリックステーキ美味しいですが何か?~』

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投稿初日の結果で、異世界ファンタジー週間ランキング113位入ってて驚きました。自信作なので是非見てください!

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