第113話 今後の予定
「では王家と対立するにあたって、成し遂げたいことが四つほどあるのですー」
レイラスは一枚の紙を食卓に置いた。
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レイラス考案王家崩壊術(秘)
1.王家が滅んだ方がよいと諸侯に思わせる。
2.諸侯もしくは民衆から討伐を乞われて、
王家を滅ぼす形にする。
3.圧倒的な力の差を見せつけて降伏させる。
4.一年以内にカタをつける。
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「この四つを満たした上で王家を滅ぼしたいのですー」
「……多いな。これ全部達成しないとダメなのか?」
「必須ではないですが極力は。理由は今から説明しますねー」
レイラスは一本の指を立てた。
「1の理由は簡単ですー。王家に味方する諸侯をほぼゼロにしたいのでー」
「王家が滅ぶべきと思ったら、味方する諸侯はいなくなるもんな」
「その通りですー。では二つ目ですー。これは大義名分ですねー、私たちが野蛮な反逆者と思われたら今後の統治に影響が出るためですー」
「他の人からお願いされてやるのと、自分からやるのは違うってことだよね?」
ミレスの問いにレイラスはうなずいた。
第三者の要請に応じたという態を作って、仕方なく王家を攻める雰囲気を出したいって感じかな。自分のためだけにやったら略奪者だが、他の人に助けを求められて答えるなら義の将と思ってもらえる。
「3は王都を焦土にしないためですねー。王家が最後まで抵抗したら王都に引き籠るでしょう。そうすれば王都が戦場になって酷いことになりますー。王家に勝った後は私たちの土地になりますのでー、ボロボロだと困りますからー」
ごもっとも過ぎる。俺としても王都が焼け野原になるのは嫌だしな。
王家は大嫌いなのでどうでもよいが、王都に住む民衆に罪はないのだから。
「4は今後を見据えてですねー。他国との停戦協定が二年なので、一年で王家を潰して態勢を立て直したいのですー。そうじゃないと攻められかねません」
「内乱した後の国なんて、他国からすれば恰好の的だもんね」
典型的な漁夫の利を狙われてしまうからな。
アイガーク国を従属させたのも、王家に勝った隙を狙われないためというのも大きい。
「なるほどな。この四つを満たした上で勝利すれば、レーリア国は他国に隙をつくらないってことだな。分かりやすい」
「そうですねー。全て達成可能だと思ってますー」
レイラスは少し得意げそうに告げてくる。
たぶんこの紙は彼女の手書きだろうな。文字を見るかぎり。
「確かにどれももう一押しでいけそうだな。王家の降伏だけは怪しいかも知れないけど……」
「力の差を見せたとしても、あの王家なら降伏しない恐れがあるよね……」
「そこはもう少し考えないといけませんねー。あの王家なら王都が灰になろうと構わず戦うでしょうしー」
「王家はそこまで酷いのです?」
「王家が多少でもまともなら私は逆らおうとは思いませんでした」
レイラスはため息をつく。俺もあの王家は腐ってるから、彼女が立ち上がったのは間違ってないと思う。
「じゃあこれからはこの4か条を意識しつつ立ち回るよ。それでいいよな?」
「お願いしますー、期待してますよー。王家を倒したら何かご褒美をあげないとですねー、欲しいモノはありますか? 何でもいいですよー?」
「レイラスと寝たい」
「…………か、考えておきます」
レイラスは顔を赤くして俯いてしまった。
欲しいモノって聞かれたからつい…………。
こうして晩餐が終わった俺達は解散するのだった。
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「諸君! これより我らは盗賊団を退治する! 安穏に生きる民を守るために!」
俺はリテーナ街の広場で演説を行っている。
この場には大勢の兵士たちと、野次馬の民衆が集まっていた。つまり絶好のアピールのしどころだ、俺が働いていることの!
それとついでに五百体ほどのゴーレムもいる。土ではなく少し変わったのが多い、泥ゴーレムとか。今回の盗賊団退治は実験として最適なので、色々なゴーレムを試してみるつもりだ。
「敵はラレヤ盗賊団! レーリア王都で数年暴れていた賊だ!」
ざわざわと民衆が騒ぎ始める。王都で長い間捕まらなかったということは、結構な規模の盗賊団なことは容易に想像がつくからだ。
だけど俺から言わせれば王家が無能すぎるだけではと思ってしまう。今までの王家のムーブは無能の極みというか、最悪の選択を常に選んでるイメージだ。なのでラレヤ盗賊団がすごいというか、取り締まる側がダメダメだった説あると思う。
「だが恐れることはない! レーリア王家よりもライラス辺境伯の方が数段優れている! それを見せてやろう!」
「おおおおおお! ライラス辺境伯様ばんざい!」
「ベギラー! やってやれー!」
「王家がなんぼのもんじゃい!」
民たちは俺に対して叫んでくる。
すでにライラス領は王家に対して独立宣言をした。それは民衆とて当然ながら知っていることだ。だが大した混乱は起きていない。
皆がどこかで期待していたのだ、ライラス領が独立することを。思っていたのだ、何で自分より弱いモノに税を払わないとダメなのかと。守ってもくれないのにと。
ちなみに王家に対して俺達側から宣戦布告はしていない。あくまで独立を宣言しただけだ。事実上の宣戦布告ではあるが、実務上ではしていない。
なので王家が攻めてきたら向こうから仕掛けてきたという態をとれる。屁理屈に近いがそれでも理屈なのである。
「よし! これより出陣するぞ! 俺に続け!」
俺は兵士とゴーレムを引き連れて、ラレヤ盗賊団の拠点に向かって出陣するのだった。俺はゴーレム象に乗っての移動になる。
『弟子よ。ワシの考案したゴーレムも暴れさせるのじゃぞ』
「師匠! 私のもお願いします……!」
横で歩く師匠とフレイアの言葉に俺は頷くのだった。
悪いなラレヤ盗賊団。お前たちは俺達の実験対象でしかない、メイルを襲った罪はその身体で償わせてやるよ。
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