第104話 アイガーク王
「ぐははははは! ほらレイラスもっと飲めや!」
「ベギラー、大事な妻が妙な男に言い寄られてますので助けてくださいー」
酔っ払いことアイガーク王に詰め寄られるレイラス。俺を巻き込まないでくれ知らん。
俺達はアイガークの宮殿の食堂で、豪華な歓迎パーティーを開かれていた。俺達とアイガーク王しかいないのに、大量に並べられた机には贅をつくした料理が載った皿の数々。三十人ほど客人がいても問題ないほどだろう。
「あなた。レイラスちゃんを助けなくてよいのです?」
「アイガーク王がセクハラしようとしない限りは」
俺はまだ酒を飲んでなくてシラフだ。それであのへべれけ状態の奴につきあうのはキツイ。
それとちょっと思ったのだが、テーブルゴーレムとかどうだろうか。料理に足を運ぶのではなくて、料理が自分で足を運べるようになる。わりと面白そうじゃないだろうか。
なおこのパーティーには師匠とフレイアも参加している。
「美味しいです美味しいです美味しいです! こんなに美味しいもの食べたことないですよ!」
「アイガーク宮殿のシェフが腕によりをかけましたので」
フレイアはパクパクと料理を食べ漁っていて、その横で給仕が頭を下げている。あの娘は貴族ではないし、こういった料理は初めてなのだろう。
「あのー……ゴーレム様は鉄塊などお食べになりますか……? 腕によりをかけて調理させますが……」
『逆に鉄をどうやって調理するんじゃ』
「えーっと……鉄を熱で溶かしたスープなどいかがでしょうか……? 粘り気があって美味しいかも……」
何も手を付けない師匠に対して、何とかもてなそうとしている給仕もいる。それが仕事とはいえ流石に無理だと思う。更に言うならシェフに鉄を扱わせるのは無理だろ。
「どうだ我がアイガークの料理はよお!」
うわアイガーク王こっちに来やがった!? レイラスは……部屋から出るところだと!?
「私ー、ちょっと酔ったので夜風に当たってきますー」
ウインクしながら去っていくレイラス……よ、酔っ払いを押し付けられた!? アイガーク王は俺の肩に手を乗せて笑ってくる。
「あのよぉ、俺はよぉ。お前のことは期待してるんだぜぇ? あんのレイラスがまさか人格のある婿を迎えるとは思わなかったよぉ」
「人格のある婿」
逆に人格のない婿なんているのか……? それはもう人間ではないのでは……?
「あいつのことだから人形と結婚するとばかり思ってたぜ!」
「ああ、操り人形ってことか」
「いや本物の人形だが?」
ダメだこの男、完全に酔っぱらっている。できればメイルやミレスに更に押し付けたいのだが、二人はすでに俺から距離を取っていた!?
「あなた、頑張るです! 応援してるです!」
「ありがとうベギラ。魔の手からボクたちを守ってくれて!」
「お前よかったなぁ! 可愛い妻たちに応援されて男冥利につきるなぁ!」
「誰のせいで応援されてると思ってるんだよ!? というか酒臭い離れろ失せろ!」
もう相手が王だろうが知るか! というか威厳も何もあったもんじゃないなこいつ!?
俺がそう叫んだ瞬間、アイガーク王は獰猛な笑みを浮かべる。
「しゃあ! じゃあちょっと行こうぜ」
「いやどこへだよ。というかそれならメイルたちも一緒に……」
「ダメだ、女はダメだ! 神聖なる行事だからな!」
「いやなんだよそれ」
「連れション」
そりゃダメだなうん。というか王がするなと言いたいが、この男なら普通に野外で立ちションしてそうだ。
「じゃあ行くぞオラァ! 奥様やゴーレム様におかれましては酒飲みまくってくれや!」
「うわ引っ張るなおい!?」
俺はアイガーク王に無理やり引っ張られて、食堂の外へと連れ出されてしまった。そして廊下を少し歩かされて、とある部屋に案内される。中に入ると応接間だった。
「……トイレは?」
「いや流石に連れションなんてしねぇよ。仮にも王だぞ何言ってんだお前」
アイガーク王は腕を組みながら部屋にあった椅子にドカリと座る。お、お前が言ったんだろうが!?
「おらお前も座れ。サシで話したかったんだよ」
「……まあいいが」
俺はアイガーク王と対するように椅子に座った。こいつは王らしい豪華な服を着ているが、ところどころ見える肌などから鍛えられた筋肉が見える。やはり王というよりも戦士だ、それも一流の。
「改めて自己紹介するぜ。俺はアイガーク王。ベルギール・ノヴァ・アイガークだ。ちなみにノヴァは俺が勝手につけた、恰好いいだろ?」
「あんた何してんの」
「ぐわはははは! こちとら一代の成り上がりだからな! なんかそれっぽい家名が必要だったんだよ!」
大笑いするアイガーク王。一代の成り上がりだと?
「俺は元々はそこらの豪族の息子だったんだよ。だが色々とあって気が付けば王になっちまった」
「色々とありすぎだろ」
「ちげぇねぇな。だがな、お前も俺と似たような立場じゃねぇか? 貧乏貴族の四男があれよあれよと辺境伯の夫。更にはレイラスがレーリア国を獲れば王配だ」
アイガーク王の言葉にうなずく。確かに俺も成り上がり者なことに変わりはない。ハーレム目指して今まで突っ走ってきたのだから。
正直ここまで成り上がらなくてもハーレム築けた気はするが、ここまで来たらどれだけ登れるかやりたい感も出ている。
「あんたと俺が似ていることは分かった。それで何が言いたい? わざわざ俺をメイルたちと引きはがしたんだから重要な話があるんだろ」
「おう分かってるじゃねぇか」
「レイラス相手にしてたら多少は裏を読むようにもなる」
連れションが嘘だとするならば、アイガーク王の動きはだいぶ不自然だったからな。しかも俺だけを個室に連れ出したのだから、何か話があるに決まっている。こちとら散々ライラスに操られたからな!
「じゃあ単刀直入に言うぜ」
アイガーク王は途端に真剣な目で俺を睨んできた。これまでのふざけた様子はどこにもなく、明らかに王と呼んで差し支えない姿になっていた。
「俺はレイラスがレーリア国の王になるのを認めない。だからよ……お前があいつから王座を奪え」
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新たなジャンルにも挑戦したい今日この頃。
カクヨム的にはラブコメが熱そうなのですが、私に適正があるかが分からない。
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