第103話 野蛮な国?


 俺達は馬車ゴーレム改に乗って、無事にアイガーク王国の王都へと到着した。


 今は街の中を走っている。窓から写る景色はレーリア国の街並みとは少し雰囲気が違う。レーリア国が西洋風とすれば、アイガーク国は東洋風というか砂漠の民族みたいな感じだ。


「アイガーク国は西に砂漠があるのですー。なので我が国とは雰囲気が少し違うのですよー」


 レイラスが俺の疑問に答えてくれる。砂漠の国ということか。


「おおー、すごいのです!」


 メイルも窓の外を覗いている。よく考えたら俺もメイルもレーリア国から出るのは初めてだ。つまりこれは海外旅行みたいなものでは? 海の外ではないけど。


「砂漠……なら水が貴重だよね。レーリア国から荷台ゴーレムで水を大量に運べば儲かるんじゃ……」


 ミレスは座席に座ってままブツブツと呟いている。やはり商人だけあって儲け話への嗅覚が強いようだ。


「ちなみにアイガーク国が我が国に攻めてくる理由なんですよねー砂漠。レーリア国の緑豊かな土地が欲しいからとー。砂漠しかない土地を養うためにー」

「あー……」


 豊かな土地を求めるというのはよくある話だからなぁ……気持ちはわかるがそれで攻められる方も困るのだ。こればかりは難しい問題だ。


 そうして馬車は大きな宮殿の前に到着した。いや城なのか? 東洋風の大きな建物ってよく分からない。


 扉が開けられたので外に出ると、馬車の前には鎧姿のアイガーク王が腕を組んで立っていた。


「よく来たな! 待っていたぜ!」

「……なんで鎧を着てるんですかー? 使者でありお客様である私たちを出迎えるというのにー、その恰好はあまりにあんまりではー?」

「これが俺の正装だ! そもそもお前たち、お客様としてやってきたんじゃなくて交渉しに来たんだろ! ならば戦装束で迎え撃つのが俺の作法!」

「はー、もう本当頭くらくらしてきました」


 レイラスがすごく嫌そうな顔で呟いている。相変わらずアイガーク王相手だと表情がすごく出るなぁ……。


「まあいいですー。では宮殿内を案内してくださいー」

「いやまずは街を案内する! 俺についてこい!」


 そう言ってアイガーク王は歩いていく。


「え? 徒歩でです? アイガーク王は王族で、レイラスも辺境伯なのです……」

「おうかわいい子ちゃん! 徒歩に決まってるだろ! 歩いて自分の目で見て、肌で感じるからこそ分かることもある! 馬車の中では分からないことがな!」


 困惑するメイルに対してアイガーク王は獰猛な笑みを浮かべる。一理あるが王がやってよいのだろうか……。


「安心しな。警備はがっちりつける! だが……俺達の兵士はいらなそうだがな。なんだよその化け物……」


 アイガーク王は師匠ゴーレムを見て少し顔を引きつらせる。こいつ、師匠の強さを理解しているのか!? 師匠は見た目はただの鉄で造られたゴーレムなのに。


『弟子よ、いいのではないか。ワシが護衛してやる。まさかとは思うが暗殺でも仕掛けてくるなら、この王都がどうなるか保証せぬがの』

「ははは、安心しな。王都を人質にされて何かするほど愚かじゃねーよ。しかしこいつを護衛にするのズルくね? 大軍引き連れてやってくるのと同じだろ」

「あらあらー。私たちはゴーレム一体を連れてきただけでー、文句を言われる筋合いはありませんよー」


 レイラスが楽しそうだ。師匠ゴーレムとかいうチートがいれば、だいたいのことは何とかなるからな。


「さて行くぞお前ら! 俺に続け!」


 こうして俺達は何故かアイガーク王都を練り歩くことになった。


 露店などの広場を歩いていくと、民衆が俺達というかアイガーク王を見て歓喜の声をあげる。


「王様ー! また祭りをしてくれー!」

「またハーレムはびこらせてるー! 私もその中にいれてー!」

「また酒を飲みに来てくださいー! 待ってますよー!」


 ……まるでパレードのように民衆が道を開いて、俺達はそこを歩かされていく。うーん……これはなぁ……俺が目立てないから微妙だなあ……。


「はぁ……よりにもよってあんな奴のハーレムに見られるなんて……!」

「は、恥ずかしいのです……」

「ボクも……」


 レイラスは明らかに怒っていて、メイルとミレスは顔を真っ赤にして俯いている。くそぅ、ここでゴーレム作成して俺が主役に成り代われないかな。


 そうして広場を抜けた後、王様は先の路地を指さした。


「あそこから先はスラムだ。俺一人なら行くこともあるが、悪いがお前たちを案内はできない」

「そんなところ案内されても困りますー」


 いや王様、あんたスラムにたまに行ってるのか……明らかに治安悪くて危険だろうにダメだろ。そう思いながらアイガーク王を見ていると、俺の視線に気づいたのか腕に力こぶしをつくった。


「俺は強いんだよ。この鉄壁の肉体は剣をも弾くかもしれないし、半端な毒なら問題ないぜ!」

「王がそこまで強い必要はないと思いますがねー」

「強くて悪いことはねぇ! よしじゃあ宮殿に戻るか!」


 アイガーク王は宮殿の方に歩みを進めだした。


 ……何となく俺はスラムの路地を見続ける。ライラス領の主都? であるリテーナ街はレイラスの治世が優れているのでスラムはない。だが他の街にはきっとあるのだろう。


 俺はそんな人たちがどのように暮らしているか見たことないな……。



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私の全作品の今後の投稿予定を記載しています。

興味ありましたらご覧ください。

なおこの作品に関しましては、しばらくはこのまま投稿するので特に記載はありません。


https://kakuyomu.jp/users/clon/news/16817330652253336182


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