第100話 どう運用するか
荷台ゴーレムがひとまずの完成を迎えたので、妻三人に見てもらうことにした。
立ち入り禁止区画に呼びよせて、荷台ゴーレムが爆走しているのを見てもらっている。
「大きな魔物みたいです。荷台が走るの違和感すごいです。でもどこか愛嬌あるです」
「おおおお! これならゴーレム自体に荷物が積めるから、すごくお金儲けができる予感が……! それにこれだけ速く走れるなら、盗賊とかも迂闊に寄ってこれないよね!」
メイルもミレスも高評価だ。やはり荷台ゴーレムは会心の出来だな。
ちなみに盗賊に襲われる心配もかなり低い。理由としてはそもそも奴ら風情に止められる手段を用意できないからだ。
いきなり襲撃しようとしても馬より速い荷台ゴーレムには追い付けない。侵攻ルートで待ち構えていたら轢き潰される。しかも荷台ゴーレム本体も相当強いぞ、ゴーレムだしパワーもあるのだから。
戦闘力は計測していないが、俺の推定では象よりも強いと思われる。魔力コーティングによって耐久も強化されているし。
「ところでー、御者席がないのですがー」
「「「あっ」」」
レイラスの会心の一撃によって早速欠点が見つかった。
自走に意識取られ過ぎて人が乗る場所用意してなかった。ゴーレムなので自走できるとはいえ、御者を荷台部分に乗せるのはマズいか。
もし人身事故などの不慮の事態に陥った時に困るし。
「御者台はつけることにするよ。他には何か懸念は?」
「今のところは荷台ゴーレム自体にはないですねー。生産性にやや難がありますが、そこはおいおい解決していく課題でしょうしー」
今の荷台ゴーレムは十五日に一台、更に俺しか作成できない。普通のゴーレム馬車に比べて速く長いので、倍近くの量を運べはするけども。
運搬量など考えれば十五日に一台でも破格ではあるのだが。
「後はこの荷台ゴーレムをどう運用していくかですねー。速く多くの量を運べる上に、ひとまずは私たちのみで扱うことになりますしー」
「それについては案がある。実はな、鉄道という考え? があってな」
鉄道。現代地球なら当たり前の電車運用方法だ。
この荷台ゴーレムの場合は線路などは必要ないが、列車運行の仕組みは役に立つのではないだろうか。
「鉄道とはー?」
「雑に言うと時間をかなり細分して固定化する馬車便かな。ほぼこの時間に来ると分かっていれば、事前に色々と準備できるし信用性も違うだろ?」
まあ現代地球のような緻密なダイヤなど不可能だが。
あれは連絡手段とかないと無理ゲー過ぎるし。現状だと時間に正確で大量に物や人を運べる馬車便と言ったところだろう。それでも相当なチートだけどな、線路ひかなくていいなどのメリットもあるし。
「確かに疲れ知らずで休憩も不要なゴーレムなら、馬車に比べて安定した速度で走ることができそうですねー。今後次第ですが検討してみましょうー」
「後は氷で荷台を造れば物を冷却保存しながら運ぶことも可能!」
「あらあらー、それは……計算外ですね。スノウゴーレムやフィッシュタンクゴーレムの欠点であった、足の遅さが解消されるとなると」
レイラスは真剣な顔で何かを考え始めた。
むしろ普通の荷台ゴーレムよりも、氷とかの荷台の方が価値が上がってしまうかもしれない。魚を内陸の国に大量に運んで大儲けとかも可能になるのだから。
内陸地の国の貴族たちはこぞって魚を買うだろう。彼らは金に糸目をつけないだろうから、荷台で運べる程度でもすさまじい利益を叩き出す。間違いなく我が国に莫大な貿易黒字をもたらしてくれる。
「あー……ちょっとまずいですね。メフィラス!」
レイラスは少し焦った口調でメフィラスさんの方を向いた。
「すぐにアイガークとエルフ公国を除いた周辺国と、三年ほどの停戦協定を結べるように働きかけます。具体的にはアイガーク国の更に西の国家と、レーリア王家の東にある国家たちです」
「難航しそうですがよろしいですか? 彼らからすれば漁夫の利を狙える状況です、我らとアイガークやレーリア王家が潰し合った後をと」
レイラスは急にどうしたのだろうか。確かにその辺の国と停戦を結べたら大きいだろう。俺達がアイガークやレーリア王家を奪った後、弱ったところを即座に攻めてこられることはない。
だが向こうもそれは当然理解していて、強気な交渉に出てくるに決まっている。なのにそんな相手に急いで交渉しようとすれば、間違いなくこちらに不利な条件を押し付けられるのに。
「多少不利な条件になろうが構いません。それよりもこの荷台ゴーレムの存在を知られる前に、停戦を結んでしまわなければ……」
「なるほど、承知しました。周辺国が攻めることができないように致します。レイラス様の馬車をお借りしても?」
メフィラスさんは荷台ゴーレムを見ながら呟く。それにレイラスが頷いた。
「なあレイラス、何をそこまで焦ってるんだ? 荷台ゴーレムでアイガーク国に圧力かけるって話では……」
俺の言葉に対してレイラスはニコリと微笑みかけて来た。
「私が他国の王ならば、荷台ゴーレムの存在を知ったらどうすると思いますー?」
「物資運搬に差が出過ぎて、経済的に不利になると動揺する」
「なるほどー。まあいいでしょうー。では荷台ゴーレムを量産しつつ、アイガーク国のことを考えましょうかー」
レイラスの笑顔がすごく怖い。怒っている……わけではなさそうだが。
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レイラスはベギラに伝える予定はないですが、荷台ゴーレムは相当ヤバイ代物です。
ヒントは鉄道がそこまで脅威ではない理由。
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