第38話 開墾開始!
「ゴーレムたち! この森を開墾してくれっ!」
「「「「「ごおおおお」」」」」
ツェペリア領の西に位置する森。
ここでは百を超える大量のゴーレムたちが、森の開墾作業を行っている。
今回は前のライラス領で行った作業とは少し違って、森の切り開き以外もゴーレムにやらせてみる予定だ。
木を伐採して平地にするまでは同じだ。それに土を耕して農地、ライラス領との道の整備……という開墾作業を一連全てやらせてみる。
幸いにもこの近くには川が流れているので、水に関してはひとまず問題はない。
いずれ水路も造りたいが、現状では専門知識のある者がいないからな……
「ベギラ、この開拓工事はどれくらいで終わりそう? ライラス領での作業が一ヵ月だったから、それくらいが目途かな?」
ミレスが俺のすぐ横まで寄ってきた。
……もう少しで肌が触れそうなくらいの距離だ。よく見るとミレスの顔もほんのりと赤い気がする。
「い、いやもう少し早く終わる予定だ!」
「そうなの? 以前の作業で慣れた結果、効率よくできるようになったとか?」
「いや初動が違うんだ。前はゴーレムを全て現地で造っていたから、最初の方は人手……ゴーレム手が不足していた。今回は最初から二百いるからな」
ライラス領での作業時はゴーレムゼロから始めたので、初日は四十体しかいなかった。
その後は稼働時間半年くらいのゴーレムを、日に十体ほど増やしていった。
なので二百体での作業体制が整ったのは二週間を過ぎた頃だ。
作業が完全効率になるまでに半月以上かかった上で、一月の作業時間で完了した。
今回の開墾作業は、最初から前のライラス領の最高作業効率で開始できる。つまり前よりも早く終わるはずだ。
「そういうわけで農地を作る作業を加味したとしても、今回の開墾はライラス領の時よりも早く終わるはず。終わらなさそうならゴーレム追加すればよいし」
「……ベギラのゴーレム魔法、正直ズルいよね。本来なら森の開拓なんて物凄い一大事業だよ? これだけの人手を集めるだけで、どれだけのお金がかかるか……二百人を無料で使えるなんて」
「ミレス、それは計算が間違っている。ゴーレムは人よりも力があるから、二百人分の労働力よりも遥かに高い」
ゴーレムのパワーはすごいぞ。
人間の中では力自慢の奴が全力を出しても、土ゴーレムの片手にすら押し負けるほどだ。
ほら賭博ギルド長だったバルガスだ。あいつは【撲殺剛力】とかイキっておいて、土ゴーレム一体にパワーでボロ負けしてた。
あれでは【撲殺剛力】じゃなくて【貧弱貧力】だ。
実際はバルガスのパワーは人間としてはかなりの力持ちだったが、ゴーレム相手ではな。
前提である生物としての能力が違いすぎるのだ。クマ相手に相撲勝負するようなもの。
いくらバルガスが力持ちだとしても、『人間としては力が強い』程度では勝ち目がない。
マサカリ担いだ金太郎くらい常人離れしてないとな。
「あはは……いっそ他領の工事請負でもする?」
「考えたがゴーレムを移動させて逐一工事の指示してーが大変過ぎる。ゴーレム売るのは選択肢だが……」
力だけで考えればゴーレムは人間よりも遥かに優れている。
だが普通のゴーレムは人間よりも足が遅い。それに逐一の命令が必要で、ある程度監視役が必要な弱点がある。
例えば今の工事は辺り全面が森で、雑に開墾すればよいからできること。
街中ならこんな大勢のゴーレムを俺一人で指揮するのは難しい。下手したら道とか関係ない建物を壊す可能性もある。
ダメなことをしそうになったら、停止を命じる人間が必要だ。
現代地球でもロボットに作業を全任せせずに、人の見張りなどがついているはずだ。
人間でもゴミクズみたいにヤバイのいるだろって? あんな奴は流石に問題外。
俺はあくまで常人基準での話をしている。
「なるほど……うまくやればお金の匂いがするのになぁ」
「俺が領主でなければ、ゴーレム工事請負商店開いて儲けるのも選択肢だったかもな」
「それいいね。今のツェペリア領よりも、よほど健全な経営ができそうだね。予算的な意味で」
「…………」
俺だってハーレムの大義さえ望んでなければ、こんな領地を誰が継ぐか畜生!
俺達がだべっている間にも、ゴーレムは黙々と作業を続けている。
「さてと……とりあえずゴーレムたちは放置で大丈夫だろう。半日に一度くらい様子を見に来れば」
「大丈夫なの? 何か問題が発生したら?」
「仮に土砂崩れでゴーレムが全て生き埋めになっても、そこまでの問題にはならない」
「うわぁ……」
俺のゴーレムたちの最大のメリットは、使い捨てができるところだからな……。
永続稼働のゴーレムだと製造費用が高いので勿体ないが、俺が製造できる消費期限付きゴーレムは諦めがつくレベルだ。
「じゃあ俺は領地の様子を見回ることにするよ。ミレスはどうする?」
「うーん……元手にお金がないから、ボクは現状だとあまり仕事はないかなー……」
せっかくミレスに来てもらったのに、あまり仕事が割り振れないのは本当に申し訳ない……。
何としても彼女に、「ツェペリア領に来てよかった!」と思ってもらえるようにしないと!
そうじゃないとミレスのお義父さんに合わせる顔がない……。
「だよなぁ……悪いが少しだけ暇しててくれ。すぐに忙しくして、俺についてきてよかったと言わせてみせるから!」
「あはは、メイルちゃんにも似たようなこと言ってたよね?」
「うっ……」
メイルを外に仕事に出さずに、自宅の家事をやらせてた時も「すぐに出世するから待っててくれー」とか言ったなぁ……。
もしかして俺ってダメ男なのでは……? 後で何とかするーとかそんなのばかりじゃん……。
少し打ちひしがれていると、ミレスが楽しそうに笑った。
「ボクはね、ベギラについてこれただけで満足だよ?」
「…………」
泣きそう。
いや本当に何としても、ミレスに活躍の場を与えないと!
ゴミクズのせいで予算がゼロだからーとか言い訳してる場合じゃない!
男としての甲斐性を見せなければ! やってやる、やってやるぞ!
「おっしゃあ! やるぞぉ! ツェペリア領を金で溢れる領地にするぞぉ! そして……」
「ボクとメイルちゃんを差し置いて、ベギラのハーレムを増やすんだよね?」
「…………なんかすみません」
……好いてくれる女の子の前で、ハーレムを増やすとか宣言したら客観的に見てクズでは?
少し気まずくなっていると、ミレスはケラケラと笑い始めた。
「あはは。冗談だよ、貴族なら妻は複数必要なのは当たり前。特にこのツェペリア領を発展させていくなら親戚も増やす必要がある。ボクもメイルちゃんもそれは当然納得してるよ? むしろベギラは妻を大勢娶った方がよいことは」
実際のところ、側室を増やすというのは貴族的なメリットがかなりある。
例えば俺がA準男爵の三女などを側室にすれば、ツェペリア家とA準男爵とのパイプが生まれるからな。
今後発展していきたいツェペリア領なので、そういった血管……いや親族パイプは重要だ。
更に言うなら俺の子供を他の家に嫁がせるなども可能だ。
子供を産むには妻が必要で、更にその子供にも格がーとかややこしい話になってくるが。
結論から言うとだ。家の繁栄を考えるなら、財政的に余裕があれば妻はそれなりの数は娶った方がよい。
「俺は理解ある素晴らしい妻を持って幸せです」
「でも……お金に余裕がないのに、無理に妻を増やそうとしたら……怒るよ?」
「肝に銘じておきます!」
ミレスってメイルよりも結構直接的に言ってくるタイプのようだな!?
流石は商人だな、頼もしい!?
ミレスの仕事を増やすためにも、ハーレムの大義のためにもいっぱい稼がないとな!?
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