第31話 朝と夜の境界線

【エネミーの全滅を確認】

【戦闘が終了しました】

【種族レベルが1上昇しました】 

【職業レベルが1上昇しました】

【中級風魔法 1→2】

 魔法を取得:『カースドウィンド』

【魔力視 3→4】

 パッシブスキルを習得:『魔力捕捉』

【以下の称号を獲得しました】

 『悪神との邂逅』

 『原初に触れる指』

 『危機一髪』

【アイテムを獲得しました】

 ・流砂の悪爪

 ・砂塵魔の片翼

 ・砂塵魔の麻痺袋(レア)


 礼服の裾についた砂埃を払って、一息つく。現在俺達が探索していたのは遺跡都市ガラドリエルの九層。ここまで罠だのモンスターの群れを突破しながら、さして苦労なくここまで来たのだが、この大部屋は勝手が違ったな。


 広々とした大部屋に入った俺達は、部屋の壁に施された装飾や朽ちかけの本棚、中央にある祭壇から謎解きを行っていたのだが、部屋の中に隠されていた盃を祭壇に捧げた瞬間に【悪神は貴方達の呼びかけに応え、供物を求める】という通知が流れた。


 その後は部屋の天井から『サンドデビル』がおおよそ二十体近く降り注ぎ、ぐちゃぐちゃの乱戦開始だ。


 サンドデビルの外見は三叉槍を持った毛むくじゃらの黒い猿だが、頭部がヒル科のそれにすげ変わっており、伸縮自在の頭部を用いた噛みつきが特に面倒だった。

 その上、地下だというのに遠慮なく炎魔法を乱射するので、別の意味でもヒヤヒヤとさせられた。


「はー、マジ……キッツ……槍は折れるしナイフは持ってかれるしでヤバかった」

「危ない所でしたね……部屋が多少なりとも広かったことが幸いでした」

「お嬢ちゃん、ホントにありがとね〜。途中何度も助けられたよ」

「いえ。たこらいすは背中を預ける仲間ですから、当然です」


 この無茶苦茶な乱戦のMVPはアリスだろう。彼女の『不滅の滅剣』は文字通り十二人分の働きで攻防を兼ね備え、俺やたこらいすを攻撃から守りつつも、手の届く範囲のサンドデビルを微塵切りにしていた。

 片や俺は、被弾や致命的なミスこそ無かったものの、新しく押し付けられた『心識』の影響で思ったように動けなかった。


(この『心識』……一対一ならメリットしか無いが、一対多だとデメリットの塊だな)


 新たな心識『知の無知。白紙の辞書』は


 ・貴方に背を向ける全てのエネミーは『無防備』と『スロー』の効果を受け続ける

 ・貴方はエネミーに背中を向けている間、すべての強化状態が無効化される


 という二つの効果を持っている。メリットの方は充分に素晴らしい。『スロー』は背後の俺への反応を遅らせてくれる上、逃げようとする背中への追撃性能を高めてくれる。『無防備』は付与されている間、回復効果と防御強化状態を得られなくなる状態異常で、これによって差し込みの回復や防御バフでダメージ計算をズラされることが無くなる。


 それだけを見れば非常に有用、なのだが……デメリットの方の『エネミーに背中を向けている間』という条件があまりにも面倒だった。

 二十体の敵、その全てに対して正面を向くには、部屋の角に立つしか無い。が、背後に壁を背負えば当然機動力が死ぬ。正面からの圧に耐えきれなくなる。


 苦し紛れに《四肢粉塵》を出したが……テレポートした先の俺の背中に別の個体が降ってきていたらしく、本来機能するはずだった全ての強化状態――『装甲貫通』や『部位破壊属性』『防御強化解除』『勇心』『不屈』『不可視』が一切機能せず、ただの背後からのクリティカル攻撃になってしまった。

 その結果、ギリギリで狙ったサンドデビルを仕留め損ね、余計に戦闘が泥沼化したのだ。


(バフ解除じゃなくて無効化なだけ優しいが……そういう問題じゃない)


 なんとかメリットの部分だけを活かせるように立ち回るしかない。歯噛みする俺に、アリスとたこらいすが声を掛けてきた。


「お兄さんもお疲れ〜。相変わらず八面六臂な大活躍だったねー」

「お疲れ様。……まあ、途中に色々あって、個人的には上手く立ち回れなかったが」

「部屋の角に押し込まれた辺りでしょうか? 確かにミツクモにしては危ない位置取りでしたが……」

「お兄さんの心識か何かの関係かな? 影踏まれるとスタンするとか」

「半分正解だな。敵に背中を向けていると強化状態無効だ」

「げぇっ!?今みたいな戦いメッチャキツイじゃん!」

「……正直、敵に背中を向けない立ち位置を調整するのはかなり面倒に思ってるよ」


 何故か俺ではなくたこらいすが頭を抱えて渋い顔をする。ちなむと、彼の心識にも『精神干渉、気絶、盲目を無効化する代わりに戦闘中に膝をつくと全ての強化状態を解除』と『両手に武器を持っている間スーパーアーマー状態になるが、両手に武器を持っていないと全ステータスが減少』というハイリスクハイリターンなものがある。


 たこらいす曰く、「心識ってそういうもんだから、上手く付き合っていかないとね〜」とのことだったので、俺も自分の戦い方を見直していくべきだろう。


「しかしまあ、俺も言えた口じゃないけど、ピーキーだねぇ〜」

「このゲーム的には『逃げずに戦え』みたいな話なんだろうな」

「別に戦闘中に背中取られるのって逃げじゃない気がすんだけどなー」


 俺とたこらいすの会話を聞いていたアリスが戦闘で乱れた髪を整えながら、言葉を溢す。


「背中を向けずに戦う、という話であれば、一つ確実な方法があります。……普通の人間には出来ませんが、ミツクモになら出来るはずです」

「およ? さっきみたいに端っこに立って全員相手にする以外にあるのかな?」

「はい。ミツクモには、戦場の端よりも中心が一番相応しいと私は思うのです。だから――誰の手の届かない空で、全員が仰ぎ見る高みに立ち続ければ、誰も貴方の背中に追い縋ることは出来ないはずです」


 アリスは俺の目を見つめてそう言った。仄暗い紅の瞳には、確かな信頼が滲んでいる。


 ……空、か。逃げないで立ち向かう、正面から挑む。そればかりに気を取られて、自分の強みを忘れていた。

 目線を気にして、壁を背負って戦うのは……俺らしくない。誰よりも高い場所に、戦場で最も『熱い』場所に立つのが俺なんだ。


「……分かった。やってみよう」

「背中を取られないように下がるんじゃなくて上に飛ぶって、確かに理に適ってるなぁ……俺も色々考えてみよっと」


 ニッとたこらいすが笑みを浮かべ、同時に大部屋の中心でピシリ、と薄氷を踏むような音が鳴った。全員が即座に武器を構え、音の発生源――祭壇に捧げられた黄金の盃を見る。

 盃からは黒々としたモヤが絶えず漏れ出しており、背筋に冷たい物を感じる。


「あれー……?俺の記憶違いじゃなかったら、あんなヤバそうなオーラ出てなかったと思うんだけど」

「間違いはない。俺の記憶でもそうだ」

「……これは、神気?」

「え、ナニそれ」


 俺の隣のアリスがボソリと呟く。……確かに、通知では『悪神』という単語が出ていたが、まさかまた何かしらの神が関係しているのか?

 警戒する俺達の視線の先、モヤを放つ盃が……ガラスのように砕け散った。


【悪神は開いていた口を閉じ、不満げに鼻を鳴らす】

【贄が足りぬ。より濃く、深く、はらわたの底の闇を寄越せ】


「……ん?終わり?」

「気配が消えました。恐らくは下……迷宮の底へ帰っていったようです」

「……何が何だかよく分からないな」


 弾け飛んだ盃の破片がどろりと黒い液体になって消えていく。同時に俺の背中に感じていた冷たさは消え、無意識に強張っていた肩が軽くなった。どうやら、この場で戦闘にはならないらしい。

 ふぅ、と深く息を吐くアリスに目線を送ると、彼女は何とも言えない表情で口を開いた。


「申し訳ないですが、私にも『あれ』が何かは分かりません。ですが……恐らくは私と同じく、神格の持ち主なのではないかと、そんな予感がしています。邪悪で、狡猾な……けれど、どこか不完全な神の気配です」

「そうか……面倒なことにならないといいが」

「なるほ――ん? んん……? 同じ神格?」


 アリスの言葉にたこらいすは一つ頷き、顎に手を当てて固まる。そこから綺麗な二度見がアリスを捉えて、困惑の極まった赤茶の瞳が俺を見た。


「……諸事情だな」

「お嬢ちゃんの諸事情に包含されてる内容がデカすぎない? ん〜……てか、この世界神様とかマジで居るんだ」


 この世界に確かな神が居ることはハルファスの民のやらかしから分かっている。が、そんなにポンポンと神格?とやらを持っているのが居るとは考えていなかった。

 たこらいすは俺の濁した言葉に面食らったような顔をしたが、ちらりと見たアリスの表情から踏み込むべき案件ではないと感じだったのか、すぐに何でもないような顔に戻る。


 その切り替えの早さにたこらいすのコミュニケーションスキルの高さを感じていると、彼は思い出したかのように「あぁ」と呟いた。


「口とかハラワタって単語で思い出した。俺、飯食ってないわ」

「もうそんな時間……いや、16時か」

「そうなんだよ〜。俺は結構バラバラなタイミングで昼るんだけど、流石にお腹激ローって感じかも」


 ス・ラーフで装備を整えて砂漠を渡り、ダンジョンに入って数時間。すでに時刻は16時を回っている。昼食にしては遅すぎるくらいだろう。

 俺も、よく考えれば昨夜から飲まず食わず眠らずの状態だ。コンデションを考えれば多少の休憩は必要かもしれない。


 ちらりと見たアリスに関しても、騎神の名に恥じない泰然とした態度だが、今日は彼女にとってあまりにも大きな一日だ。


「一旦切り上げか?」

「そうね〜。俺、リアルで色々残ってる仕事あるから、夜のINは厳しいかなー。ごめんよ」

「いや、大丈夫だ。最悪ソロでもこのレベル帯なら周回できる」

「……お兄さんも大分前からINしてそうだけど、ピンピンだね。体力すっご」

「確かに、私はまだしもミツクモは何度も大怪我を負っていました。精神や肉体の疲れは無意識でも溜まっているはずです」


 割合真剣に二人に心配をされてしまった。正直な所、俺のコンデションはいつもと何ら変わっていない。流石にここからもう一日飲まず食わず眠らずだと、多少は反応速度が落ちるだろうが……これくらいの周回で音を上げるほど、俺の身体はやわではない。


 水と簡単な食事さえ取れれば、最大で一週間は変わらないコンデションを維持出来る。チームメイトからは一周回って真剣な様子で『病院に行ったほうがいいのでは』と心配されたこともあったが、結果は見事な健康体だった。

 俺の診断結果を何度も見返して困惑するラクトと、『かすてらいおん』さんの顔を今でも覚えている。


 ――ん? これは基準値一覧表?結果は? ……これが結果ぁ!?


 ――ははは……流石の私もちょっと引き気味だよ。何故その生活で健康が維持出来ているのかな……。


 懐かしい記憶に小さく笑みを溢して、目の前の二人に「問題無い」と言葉を返した。


「自慢じゃないが、身体と頭の丈夫さは人一倍なんだ。それに……イベントに向けて、出来るだけのことはしたい」

「まー、それは俺もそうなんだけどねー……」

「……ミツクモが大丈夫というのならば、私が言えることは何もありません。ですが、無理はしないでください」


 休むことも、また戦いの一部ですから。アリスは整った眉根を心配そうに下ろしてそう言った。俺はそれに曖昧な笑みを返して、今日の探索はここで切り上げになった。

 このゲームのダンジョン周回はプレイヤーが何度も挑戦しやすいように、戦闘中でなければその場でダンジョンからの脱出が出来る。


 代わりに、もう一度探索を行うときは第一層から再探索だ。たこらいす曰く、ダンジョンはその日その日で少しずつ通路の形や部屋の中身が変わるため、ローグライクなテイストで周回を楽しめるという。


 パーティリーダーの俺が入口へのファストトラベルを実行すると、即座に視界が暗転し、次の瞬間には夕日差すピラミッドの前に立っていた。


「これは……転移魔法? 来訪者の技術力には驚くばかりです」

「魔法のようではあるが、実際魔力は使ってないから微妙な所だな」

「そうねー。……てか、魔力使ってないとしたら、俺らは何を使ってファストトラベルしてるんだろうな」


 目を白黒させるアリスにたこらいすは愉快そうに笑った後、自身も少し不思議そうな顔をした。俺としては『ゲームだから』とメタなことを考えて、それ以上に思うところは無いが……もしかしたらこのゲームならば、そのメタな部分にも理由を埋め込んでいるのかもしれない。


 ちらりと見上げた夕焼けの空の向こうには、やはりもう一つの大地がある。ハッキリ言って、俺はこの世界について微塵も理解が及んでいない。何せ、勢いで始めたゲームだ。世界観の説明も、PVについてもまるで確認していない。

 空を見上げる俺に何を思ったのか、同様に目線を上げたアリスが声を掛けてくる。


「『下界』が気になるのですか?」

「……『下界』? どっちかっていうと『天界』じゃないのか?」

「……? いえ、こちら側が『天界』で、向こうが『下界』です。来訪者としては確かにでしょうから、戸惑う気持ちは分かりますが」


 アリスの言葉に思わずその表情を見る。彼女は相変わらずの無表情で、どこか困惑を滲ませて俺を見ている。何を当たり前なことを、というようなその反応に、俺の隣のたこらいすが『分かるぞ』とばかりに頷いた。


「俺も最初にそれ聞いた時焦ったなぁ……しかも、お兄さんと同じこと聞いたらNPCメッチャ不機嫌になってたし二重でビビった」

「……固有名詞の部分はもうそういうものだとして、上も下も一緒ってのはどういうことだ?」

「あー、それは俺も気になるな〜! 掲示板だと、空の方の……『下界』側でスポーンしたプレイヤーって居ないのか盛り上がってたよ」


 確かにそれは気になる。そもそも俺達はセントラル共和国の無縁墓地でゲームを始め、各地の無縁墓地からリスポーンをするが……天、いや下界にも無縁墓地はあるのか?

 俺とたこらいすの目線を受けたアリスは更に困惑の色を強め、眉を下ろしながらこう言った。


「それは……ありえないことです。『来訪者』は『大災厄』の到来に際して、彼らを討ち滅ぼす為に天を這い、地を廻る存在ですから……彼らの全てが下界に降りるその時まで、『来訪者』が下界に降り立つことは無いはずです」

「『大災厄』……?」

「あー……なんか発売前のトレーラーでそんなことを言ってたような言ってなかったような……俺達来訪者は『この世界を廻る衛星オービター』だとかなんだとか、『大災厄ワールドボス』がどうとか」


 確かにオービターorbiterは意味だけ捉えれば『旋回するもの』『軌道を走るもの』の意だが……。

 そもそも俺達は、とそこまで口を開いて、周囲の目線に気が付いた。しまった……目立つ場所で長話を続けすぎた。俺達と同じくダンジョンから帰還したプレイヤー、これからダンジョンに挑むプレイヤーが俺やアリスを見て、たこらいすを含めた三人編成のパーティを確認すると、ヒソヒソと話をしている。自意識過剰でなければ、恐らくはイベントを見越したアレコレを話しているのだろう。


「あそこのパーティってまだ一枠空いてるのかな……」

「いや、止めといたほうが良いんじゃない……?一応ユニークネームド倒したって所でしょ?」

「でもレベル的にはそんなに離れてないっぽいよ?」


 そんな会話を聞いたたこらいすが慌ててアイテムボックスから三つ、何かを取り出す。やけに見覚えのあるそれは、最後に立ち寄った街へファストトラベルが可能な『流転の水晶』だ。


「じゃじゃーん、流転の水晶!ここで立ち話もアレだから、ささっと街に帰ろう!」


 たこらいすの言葉にアリスは頷いたが……俺は首を横に振る。


「……俺はもう少しレベリングしてから帰る。俺のことは気にせず、先に帰っていてくれ」

「えぇ、と……まあ、お兄さん相手に『大丈夫』ってのは無粋かぁ。まあ、明日もお昼INするつもりだから、俺から連絡するよ」

「分かった。お疲れ様」

「んー、乙〜」


 ……正直な所、もう少し成果が欲しいというのが現状だ。二時間近く時間を使って、手に入ったのは素材が諸々とレベルが1ずつ上がった程度。上がりにくいとは予想していたが、流石にここまでとは思っていなかった。

 それなりにレアリティの高い装備はダンジョン内の宝箱から手に入ったが、正直今手に持っているものがものなので、使えるかと言われれば厳しい。


 もっと、力が必要だ。このゲームの一番に立つには……『good knight』らしい戦いをする為には、足りないものが多過ぎる。


 微妙な顔をしたたこらいすが流転の水晶を砕いてス・ラーフへ帰還するのを見送り、隣のアリスを見る。一応彼女も、俺と共に昨夜からここまで走り抜けてきている。

 俺はアイテムボックスから『流転の水晶』を取り出すが、アリスは俺の言葉を先読みしたように首を横に振った。


「いえ……大丈夫です」

「……俺が言えた口じゃないが、いいのか?」

「はい。ミツクモが迷宮の奥で戦っているのを知りながら、安全な宿屋で眠れる自信は無いのです」

「いや、そういうのは気にしなくても大丈夫だぞ? これは俺がやりたいからやってるだけで、夜まで付き合わせるのは忍びないんだ」

「それなら私も、やりたいからやっている、のです。……ミツクモが無理をしないか、監視の意味も込めて、迷惑でなければ付き合わせてください」


 そう言って、アリスは小さくはにかむ。恐らく、冗談の一つだろう。参ったな……そこまで言われると、返事は一つしか思い浮かばない。


「そうか……それじゃあ、よろしくな」

「はい。よろしくお願いします」


 俺の勘違いでなければ、ほんの少し機嫌が良さそうなアリスに苦笑して、踵を返す。向かう先は、先程抜け出したピラミッド。沈んでいく夕日を一瞥して歩き出すが、背後から足音が聞こえない。

 思わず振り返るが、アリスは不思議そうな顔をして俺の後を追っていた。


「……そうか」


 心識、か。俺には、パーティメンバーと友好的なNPCの足音が聞こえない。この非凡な瞳を得た代償なのか、それとも……最初から失われていたものなのか。

 一人分の足音にそんなことを思っていると、かつて『俺』の背中に投げ掛けられた声が脳裏を過った。


 ――すまないな、good knight。もう私では、君について行けそうもない。君はあまりにも……遠すぎる。


 どんな時でも冷静で、誰よりも迷い無く、いかなる状況でも勝利を諦めなかった『かすてらいおん』。そんな彼女から溢れた、諦めの篭った声。ゾクリと背骨が震えて、心の臓が縮こまる。

 だが……ここで足を止めれば、それこそアリスに心配を掛けてしまう。震える手足を悟られないよう、深く息を吸って歩き出した。

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