第10話 権能

 権能スキル―――それは、この世界に住む者がそれぞれ所持している特殊な能力のことを指す。

 委しくは分からないが、古くからひとりひとつの能力とされている。

 

 それは、【剣術】のような能力の底上げをするものから、【収納】のように奇跡的な現象を引き起こすものまで、その種類はまさに千差万別。


 大陸最大の宗教組織である神聖教会は、それを神からの贈物ギフトであると謳っている。


 いわば、神様公認のガチャのようなものだ。

 生まれたときにガチャを引く。

 得られた能力によっては、その後の人生に大きな影響を及ぼすことも少なくない。



 そして今日、ウチの領地では、この春に新しくやってきた移民組の【天啓の儀】が行われる。

 神聖教会の司祭をわじわざ王都から招いて、新たな住民たちが権能スキルの天啓を受けるのだ。


 本来であれば、この儀式にはひとり銀貨五枚。

 前世で言えば五万円程度の寄進が必要になるため、日々の生活に追われている平民が天啓を授かることはほとんどない。


 ところが、ウチの領地では全ての住民がこの儀式を受けることを義務付けている。

 もちろん、一切の費用は当家持ちだ。


 これは、大森林という明らかな脅威を前に、才能ある者を事前に見極めて戦力にするための苦肉の策だったりする。


 もともと、自分の権能スキルを他人に伝えることはマナー違反とされているのだが、当家て費用を賄っていることもあり、その後の進路を提案するためにも僕や関係者だけに伝えることは了解を得ている。


 今年はどんな才能を持った者たちがいるのか、僕は湧き上がる期待に胸を踊らせる。


「ヴェガ、そろそろ行こうか?」

「別にいちいちお前が立ち会うことも無いんじゃないのか?」

「いやいや、何かあったときには責任者が必要だし、いち早くスカウトするためにもね……」

「それなら、あのハゲでもいいだろうが……」


 ハゲって……。

 父上は多少薄くなっているだけで、決してハゲではないからね……。


「みっともなくハゲ散らかしやがって。アルに遺伝したらどうするんだ……」


 何やら思い出したようにつぶやいていwるヴェガを放っておいて、僕は屋敷を出ることにする。

 普段から使っている杖を手にすると、僕は左の足を引きずりながら歩みを進める。


「アル、馬車を準備させるから待て」

「いいよ、手間がかかるから」

「そんな足で広場まで行けるはずないだろうが!」

「大丈夫だよ。最近、何となく調子が良いんだ」

「だからって……おい!待てよ!」


 相変わらず口は悪いけど過保護すぎなヴェガの制止をふりきった僕は、一歩一歩ゆっくりと歩きながら微笑む。


 今日は雲ひとつない蒼穹だ。

 こんな日は外に出ないともったいないよ。


 僕は、今回の天啓の儀もうまく行くだろうとの予感を抱きながら城下町の広場に向かうのであった。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


再開です。

まだまだストックが溜まっていないので、2日おきになりますが小出しにしていきます。


いよいよ、スキルについて触れることが出来ました。

どんな才能の持ち主がいるのか、ご期待下さい。



モチベーションに繋がりますので、レビューあるいは★での評価をお願いします。

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