ホワイトアウト
それからどれだけの時間が経ったでしょう。
二人は寄り添ったまま明るくなっている窓の外の優しい明かりに包まれながら眠ってしまっていました。しかし、窓の外は明るいはずなのに、太陽が雲に隠れているのか、辺りは薄い灰色の世界に包まれていました。
よく見ると、スタンが城の方を向いてしっかり立ったままじっと城の方を見ていました。
不思議に思った二人は部屋を出て、彼のいる場所へ向かいました。
「何かあったのかい?」
とハリーが聞くと、
「風がねえんだよ。」
と彼は答えました。
確かに風がないのは肌で感じることができましたが、それが不思議に感じるのは彼の野生の直感が働いているのかもしれません。
すると、どこからか風の渦巻く音が聞こえてきて、少しずつ風が吹いてきました。
「来るぞ。」
彼がそう言うと、空から強い風に乗って、真っ白な嵐が三人に襲い掛かりました。クリスタは強い風に耐えられなくなり、ハリーの体にしがみつきました。ハリーは彼女の体をしっかり抱きしめながら背中を向けて小さくなりました。スタンはハリーを守る為にしっかりと立っていました。
しばらくすると、お城の中から黒い魔女が現れました。
「お前達、その娘は私のものだ。」
彼女はそう言うと、魔法の力を使って白い竜巻を作り出し、三人の体を飲み込みました。その竜巻の中で彼女を守っていたハリーは、あまりにも強い竜巻の風に必死に耐えながら、彼女を話さないようにしっかり抱きしめていました。しかし、竜巻の風に乗って魔女が彼の前に現れると、彼に向かって大風を撃ちました。あまりにも強すぎる風に彼の体は耐えきれなくなり、少し力が緩んだ時に、強く抱きしめていた彼女は魔女のもとへ引き込まれていきました。
「ハリー君!!お願い!助けて!!」
彼女は力の限りに叫びながら魔女と共に消えていきました。
「命だけは助けてやる。ここを去れ。」
どこからか魔女の声が聞こえました。
そして大きな竜巻は彼を高い所まで打ち上げると消えて、彼の体は真っ白な大地の上に落ちていきました。
彼は打ち付けられた体に痺れを感じながら、自分の力不足を悔しく思いました。ですが、彼の彼女への気持ちは変わりません。彼は力一杯体に力を込めて、ゆっくりと起き上がると、魔女が住むあのお城を見つめて、
「待ってて。必ず迎えに行くからね。」
と心に誓うのでした。
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