時間よ止まれ

一方こちらはハリーの部屋。

彼もやはり何故か眠れず、スタンが出ていくのを見送ったばかりでした。それは何か大きな出来事が始まる前のそわそわとした気持ちで、決して悪い気はしなかったのですが、やはりここに来たからには彼女を助ける為に今までにない大きな何かと向き合う必要があるのを彼はわかっていました。

ただ、心の準備ができているかというと、ちょっと不安もありました。考えてみれば相手は街一個を飲み込むほどの大吹雪を起こす化け物。一歩間違えれば自分の命も危ない事になってしまいます。もしかしたら死んでしまう可能性も。

しかし、ハグルマビーチで友達の帰りを待っている人達の為、そして、雪と氷に埋もれた街を元に戻す為、何よりも、彼女の為に、ここまできたらやり切るしかないという強い想いがそこにはありました。

そんな事を考えながら窓の外を見つめていると、ゆっくりと静かにこちらに向かってくる足音が聞こえてきました。その足音は扉の前で止まると、ノックを2回鳴らしました。

「どうぞ。」

ハリーは優しく答えました。

すると、ゆっくりと扉が開いて、彼女が姿を現しました。

「…来ちゃった。」

彼女はそう言うと少し照れた顔をしました。

「いいよ。入って。」

彼がそう言うと彼女は中に入り、ゆっくりと扉を閉めました。

「それで、どうしたんだい?」

彼は優しく問いかけました。すると、

「実は私、あなたに大切な話をしなければならなくて…本当はもう少ししてから話したかったんだけど、ちょっと時間がなさそうだから…」

と彼女は答えました。

彼はベッドの枕元に体を移して、空いているところを手で軽く叩きながら、

「わかった。話を聞くからこっちにおいで。」

と言いました。

彼女は小さくうなずいて、ゆっくりそこに座ると、彼の顔をじっと見つめました。

彼は彼女に見つめられて少し照れましたが、まずは話を聞くのが先だと思い、

「どんな話なんだい?」

と聞きました。

すると、彼女は部屋で起こった出来事、そして魔法が解ける時、自分の身に何が起こるのかをゆっくりと話しました。

「その話を彼にしたら、この部屋にあなたがいるから行っておいでって言ってくれたの。」

そう言うと彼女は照れながら口を閉じました。

「そうかぁ。よく話してくれたね。」

彼は彼女の肩に手を置いて言いました。

すると、彼女は上目で彼を見つめながら、

「だから、今夜はこのまま、ずっと一緒にいてもいい?」

と小さな声で言いました。

彼は微笑みながら彼女を優しく抱きしめて、

「いいよ。」

と言いました。

それから二人は身を寄せながら、窓の外でゆっくりと明るくなり始める空を、ずっと見つめているのでした。

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