魔女の忠告
その日の晩、クリスタは彼の事が気になって眠れませんでした。二人は部屋で告白をし合った後、みんなの待つ大食堂へ向かいました。彼女は大食堂の一番奥の席へ向かうと、
「みんな、ごめんなさい。うっかり朝ごはんの時間を忘れてしまったの。私は大丈夫だから、安心してお上がり。」
と言いました。
ハリーは手前のスタンが座っている席の隣に座りました。そして、ポールの事、部屋で起こった出来事をこっそり話しました。
「いやはや、あんたも隅に置けないな。」
と言いながら笑顔を見せました。
食事が終わるとみんなで後片付けをし、それぞれがやるべき事をやる為各々の場所へ向かいました。
その日の昼下がり、彼女は彼と二人で中庭を散歩していました。木の上には鳥がとまり、足元の草花達は少しずつすくすくと育っているのでした。雪と氷に包まれた城の中で長いこと続いていた冬が、少しずつ終わりを迎えるような、そんな気がしたのでした。
ふと、彼女がなんとなく奥のお城の窓に目をやると、そこには確かに黒い影が彼女を睨んでいるように感じました。彼女は怖くなって彼の腕をしっかり掴みました。
「大丈夫かい?」
彼は落ち着いた様子で聞きました。
「ごめんなさい。大丈夫。気のせいかも。」
彼女はそう言いながら掴んでいた腕をゆっくり解きました。
そんな事を思い返して、彼女は窓の外を見ながら眠れずにいました。
その時です。
「お前、彼に恋をしたね?」
その低く落ち着いた声に驚いて振り返ると、そこには昼間見かけた黒い影がこちらを睨んでいました。その声はまた口を開きます。
「お前は私との約束を忘れたわけではないね。恋をすればお前も大人になり、永遠の命も魔法が解けるんだからね。そうすればお前の体は朽ち果てていずれ死ぬだろう。それでも良いのかい?」
その言葉に彼女は答えます。
「…わかってる。それでも私、あの人が言った言葉を信じたいの。だから、せめてもう少しだけ…。」
すると
「ふんっ。どうなっても知らないからね。」
と言って消えていきました。
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