そばにいて

階段を登り、少し歩いて、見えてきた扉を開くと、その部屋は初めて訪れた時のように明るく、鳥の鳴き声も聞こえました。クリスタはあの時と同じように窓際に立ち、小鳥と何かを話しているようでした。

「大丈夫かい?」

ハリーが言葉をかけました。

すると、彼女はハリーの顔を見て言いました。

「あら、ごめんなさい。お迎えに来て下さったの?」

いつの間にか小鳥はどこかへ飛んで行きました。

どうやら彼女は朝からずっと小鳥とお話をしていて、朝ご飯の時間を忘れていたようです。

「私としたことがうっかりしてたわ。あなたが迎えに来てくれて、私嬉しい。」

彼女はそう言いながら、ほんのり頬を赤く染めました。

「それなら良かった。みんなが待ってる。行こう。」

ハリーが手を伸ばすと、彼女はゆっくりと近づいて、その手を取りました。そして、その手を両手で包み込みながら彼女は言いました。

「お願い、もう少しだけ。」

彼女はそう言ってハリーの顔を見上げました。その顔はまるで道に迷った子猫が擦り寄って甘えているような、そんな顔でした。

ハリーはその顔を見て、少し照れましたが、

「ほんの少しなら…」

と言ってもう片方の手を彼女の手に添えました。

すると、少しの間下を向いた後、彼女かゆっくりと口を開きました。

「ハリー君、私はわがままかしら。昨夜あなたと離れた後、ずっとあなたの事が忘れられなくて眠れなかったの。出来ることなら、このままずっといてくれたらなって…わかってはいるの。あなたはいずれ元来た道をたどって帰る事を。ただ、もし、あなたが良いのなら、私と、ずっとここに…どうか私の…そばにいて…。」

そう言いながら彼女は目に涙を浮かべました。

少しすると彼女は涙をぬぐいながら言いました。

「ごめんなさいね。私どうかしてるのかも。」

そんな彼女の小さな体を、ハリーは優しく抱きしめると言いました。

「僕は君を守る。ずっと一緒だよ。」

その言葉に彼女は何も言えず、ただ小さく震えました。

朝日はそんな二人を優しく照らし、鳥は静かに木の上で見守り、時は静かに刻み続けるのでした。


「私、あなたの事が、好き。」


「…僕もだよ。」


その言葉が、二人だけの広い部屋に静かに響きました。

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