ポールの扉

さて、ハリーがクリスタの部屋に行くには、扉を守るポールにお願いをする必要があります。最初は狼がいてくれたのですんなり通る事が出来ましたが、今度は一人で行かなくてはなりません。

そうしている内に彼はポールのいる扉の前に来ました。ひとまず一人でも大丈夫かどうかを試す為に、彼は扉に向かって話しかけました。

「ポール、僕だよ。クリスタが降りてこないから気になっているんだ。一人なんだけど通ってもいいかな。」

すると、少し待ちましたが、ゆっくりと扉が開きました。扉の向こうにはポールが初めて会った時と同じように立っていました。ハリーはゆっくりと中に入り、ポールの前まで来ると、静かに扉が閉まりました。そして…

「ハリー、あんたに話したい事がある。」

なんとポールが話しかけてきたのです。

ハリーは少し驚きましたが、落ち着いて言葉を返しました。

「何かあったのかい?」

すると、彼はこう言いました。

「俺がこうして話せるって事は、この城に何かが起こっているという事なんだと思う。昨日の夜、あの子は俺に"ちょっと月を見てくる"と言ってここを通って行った。その後帰ってきた時、あの子は"ポール、運命って信じる?"と聞いてきたんだ。俺はその時話せなかったから何も言えなかったけど、俺は運命があるならそれを信じたいと思った。俺がこうして今まで口を閉じていたのも何かの運命だと思ったし、こうしてまた口を開く事ができたのも…。もし、その運命を運んだのがあんただとしたら、俺はあんたに賭けたい。どうかあの子を救ってやってくれ。」

そう言うと、彼はまた固く口を閉ざしました。

ハリーはそんな彼の前を通りすぎると、振り返って、

「僕にできるなら、やってみるよ。」

と言い、また前を見てクリスタのいる部屋へと進んでいきました。その言葉を聞いた彼は、静かに微笑んでいるように見えました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る