閉ざされた城

 ふとハリーが中庭の先を見ると、真っ白に凍りついた小さなお城が見えました。

「あれは何?」

ハリーがクリスタに聞くと、彼女は答えました。

「あれは昔私達が住んでいたお城なの。今は誰も住んでないわ。」

なるほどお城の入り口は厚い氷で覆われて入れないようになっています。

しかしその時、スタンはちょっと不思議に思う所がありました。

それは、スタンがそのお城を見渡していた時、窓際に人影のようなものを見たような気がしたのです。ですが、今その話を切り出した所で、物事がうまくいかないと思った彼は、何か確信を得るその時まで話さずにいようと思ったのでした。それを見ていた狼も、その方が良いという顔をしていました。

 それからしばらくして、クリスタから歓迎を受けたハリーとスタンは夕食に招待され、子供たちと一緒に食卓を共にするのでした。子供たちが作った夕食はとても美味しくて、スタンは思わずたくさん食べてしまいましたが、子供たちはあらかじめちょっと多めに食事を用意していたので、みんながお腹いっぱい食べる事ができました。

 しばらくして辺りもすっかり暗くなり、子供たちが寝床についた頃、クリスタは二人に紅茶を用意してくれました。

「あぁ、紅茶を飲むと心が落ち着くわ...。」

クリスタはふとそんな事を口にしました。

「このお茶はどこで作っているの?」

ハリーは気になって彼女に聞いてみました。

すると、彼女は答えました。

「このお茶は特別なものだから、ちょっと教えられないの...。」

彼女はちょっと悲しげな顔をしました。

「まぁ、美味しいのは確かだ。」

スタンはそう言いながらゆっくり紅茶を飲み干しました。

そしてハリーはこう言いました。

「僕はこのお茶好きだな。」

それを聞いた彼女の表情は少し安心したようでした。

「お茶、もう一杯いかが?」

彼女はティーポットを二人に差し出しました。

「もう一杯いただこう。」

スタンはそう言ってカップを置きました。

そしてもう一杯のお茶を楽しみながら、ゆっくりと夜は更けて行くのでした。

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