守りたかったもの

 二人がお茶を飲み終わると、クリスタは二人と狼を連れて部屋を出た後、階段を下り、扉を開けて廊下に出ると、さらに階段を降りてエントランスホールから下の階の左側の扉を開け、大食堂の中を通り、奥にある大きな扉を開けると、そこにはまた長い廊下が続いていました。

廊下の両脇にはいくつかの部屋があり、食事を作る部屋、使用人が休む部屋、住み込みで働いている人達が寝る部屋等、この城を支えたたくさんの人の為の部屋が設けられていました。話によるとこの城は元々外からの王様やその使いの人達が滞在できるように、彼女のお父さんにあたる王様が建てたものなので、宿のようにたくさんの部屋があるのです。

そして、その廊下を奥まで進むとまた大きな扉があり、その扉を開けると、大きな中庭が現れました。そこではたくさんの子供達が遊んだり本を読んだりしていて賑やかでした。

その中にはハグルマビーチにいた子供達もいました。その中の一人がハリーとスタンの姿を見つけて駆け寄ってきました。

「どうしてここにいるの?」

そう聞かれると、スタンはこう言いました。

「君たちがどうしてるか気になって、二人でここに来たんだよ。」

すると、こんな事を言いました。

「でも、あの街は吹雪でなくなっちゃったんだよね?お姉ちゃんは僕らをあの吹雪から救ってくれたんだよ。だから、僕らはここに来てよかったと思ってるよ。」

そう言って他の友達の所へ戻っていきました。スタンは疑問に思いましたが、ハリーはそれを聞いた後、スタンには何も言わないように合図をすると、クリスタにこう聞きました。

「どうして子供たちをここに?」

すると、クリスタは子供達を眺めながら言いました。

「私ね、小さい頃からこの場所が好きだったの。穏やかで、毎日が楽しくて、時々外の国の偉い人が訪れて、その時はみんなでお客様をもてなしたものだわ。

あれはいつの頃だったかしら。外の国の人がね、この場所を自分の領地にしようといって襲いかかってきたの。その時、私は秘密の部屋に隠れていたから助かったけど、他のみんなは殺されたり、捕虜にされたりしたわ。

私、とても悲しかった。それまで穏やかで楽しかった毎日が大人達の都合でなくなってしまった事が。私はそれ以来そんな身勝手な大人達を憎んだわ。私はそれから古くより伝わる雪の魔女と契約を結んで、大人達に報復したわ。私の家族や大切な人々を奪ったんですもの。当然の事。でもね、子供達には罪なんてないの。私と同じで、ただ穏やかに楽しく暮らしたいだけ。だから子供達だけはここに置いてあげようって思ったの。」

彼女はそう言うと、悲しそうに下を向きました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る