大人になれなかった子供たち
門をくぐると、そこには綺麗な広場がありました。花たちは氷に包まれて、その綺麗なままでずっと咲いているようです。木は雪で真っ白に染まったまま凍っているようでした。よく見ると、子供の形をした氷の像が、何体も辺りに建てられていました。その像は本当にそこに子供たちが遊んでいるようにいきいきとしているのでした。
二人は様々な形をした氷でできた子供たちを眺めながら、ゆっくりとお城の方へ向かっていきました。
すると、その時です。
「……。」
どこからか何やら小さな声がハリーには聞こえました。どうやらスタンには聞こえていないようです。ハリーはスタンを呼び止めました。
「どうした?」
スタンは振り返りながら言うと、
「…声がする。」
とハリーが答えました。
よく見ると、ハリーの胸にあるネックレスが赤く光っています。ハリーは光る石に手をあてて耳をすましました。すると、
「…ケテ…タス…ケ…テ…」
と言う声が聞こえてきました。
ハリーは耳をすまして声のする方へゆっくり歩いていくと、そこには小さな子供の形をした氷の像がありました。ハリーはその子に向かって話しかけました。
「助けてと言っていたのは、君かい?」
すると、その子は言いました。
「サムイ…ツメタイ…タスケテ…」
ハリーがその子にそっと触れると、その子は砕けて粉々になってしまいました。
「どうして…」
ハリーがつぶやくと、
「それは、もうそうなるしかなかったのさ。」
と言う声がしました。
ハリーが声のする方を見ると、そこには真っ白い狼が座っていました。
「ここにいる氷でできた子供たちは、みんなここに連れてこられてきた子供たちなんだよ。その子は数百年も前の子だから、もうそうなるしかなかったのさ。」
ハリーは狼に聞きました。
「どうしてこんなものがあるの?」
狼は答えました。
「…大人にしたくなかったのさ。大人になったら人を傷つけたり、大切なものを奪ったりする。それなら子供たちが子供のままでいることができれば幸せなんだと思って、こういったものを作ってしまったのさ。」
そこでスタンが言いました。
「誰がそんなことしたんだ?」
狼は答えました。
「この城の主人だよ。よければ彼女に会わせてあげよう。」
すると、ハリーは言いました。
「どうしてそんなに親切にしてくれるの?」
狼は立ち上がると言いました。
「君がその石を持っているからだよ。ずいぶん長い間待っていたよ。」
その言葉にハリーは問いました。
「僕が来るのを待っていたの?」
すると、狼は二人の前に立つと言いました。
「あの子を癒せるのは、その石だけだからね。…ついておいで。」
そう言うと、狼は二人をお城の中へ案内してくれました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます