ノースフロンティアの戦い
三人が門をくぐると、たくさんの兵士達がお互いに武器を交わし合って戦っていました。どちらともなく大きな傷を負いながら、それでもぶつかり合う人々。中には倒れ込んで動かなくなってしまった者もいました。
三人は手分けして1組1組ぶつかり合う人達を止めていきました。チョウは隙を見て急所を狙い双方の動きを止め、スタンは力任せで多少強引に双方の動きを止め、ハリーは暴力は苦手でしたが、これしかないと思い、双方の武器を持つ小手先を狙って武器を落とす作戦で進んでいきました。しかし、あまりにも人の数が多過ぎて、三人は段々疲れてきてしまいました。そこへ段々と人の群れが押し寄せてきました。そして、あっという間に三人はその中へ飲み込まれてしまいました。
このままでは三人とも人の波に潰されてしまいます。
その時です。
「いい加減にしろー!!!!!」
という大きな声と共に、スタンの体から大きな波動が起こり、勢いよく立ち上がると、辺り一面の人の波が大きく跳ね飛ばされました。なんと、スタンの胸につけた石の力で、窮地に立たされたスタンの体に大きな波動の力が宿ったのです。そして、チョウとハリーはその力に守られながら、それまでの疲れを吹き飛ばし、再び立ち上がるのでした。その力は段々強くなり、それまで武器を交わして戦っていた兵士達は、とうとう戦う覇気を無くしてしまいました。
スタンは彼等に言いました。
「お前らいい加減にしろ!
これ以上傷つけ合うのはやめろ!
それでもやめないってんなら、
俺が許さないからな!!」
すると、兵士達は武器を捨て、その場にひざまずいてしまいました。
そして、辺りはしーんと静まり返りました。
そこへ、一人の男が現れました。
男はチョウの顔を見るとこう言いました。
「この裏切り者めが。よくここに戻ってきたな。」
すると、チョウは返しました。
「何とでも言いやがれ。俺はこんな馬鹿げた戦いを終わらせにきたんだ。」
そう言うと、チョウはその男に向かって拳を向けました。
そう、その男とは、チョウがいたロベルタ軍の主将、プルチェコフなのです。
「お前はまだ私の本気を知らないであろう。見せてやる。来い。」
そう言うと、彼もまたチョウに向かって拳を返しました。
その時、チョウは二人に言いました。
「こいつとの決着は俺がつける。先に行け。」
と、その時です。
「おやめなさい!プルチェコフ!」
と言う声と共に、群衆の陰から一人の男が現れました。それはウッカフリーダの主将ゼルという男でした。更に男は続けました。
「あなたの暴力的な態度にはもうほとほと飽きました。彼等が現れた今、私達は戦う事をやめるべきです。もう終わりにしましょう。」
そう言われたプルチェコフは返しました。
「ゼル、お前が最初から私に協力すればいくらでも終わりにできたはずだ。今更そんな事言ったって遅いわ!」
そう言うと、彼はチョウに向かって走り出しました。チョウは彼の攻撃を交わしながら彼の体や顔に拳を入れていきます。しかし彼も負けじとチョウの体や顔に拳を入れていきます。しばらくはお互いに拳を交わし合い、いつの間にか共に体や顔を傷だらけにしながら、一歩も引かない戦いを見せましたが、一瞬プルチェコフが動きに隙があったので、チョウがその隙を狙って拳を打ち込むと、見事に彼の急所に当たり、とうとうその場に倒れ込んでしまいました。
それを見たゼルは言いました。
「ああ何という男だ。ここまでしてこの地を治めたいだなんて…」
するとスタンは言いました。
「あんたもあんただ。なぜこんなに大勢の犠牲があるのにやめなかったんだ。」
するとゼルは返しました。
「私だってこの争いは避けたかった。だか仕方がなかったのです。他に方法がなかったのです。」
そう言うと、
「ふざけんじゃねぇ!」
と叫びながらスタンはゼルの顔を思い切り殴りました。
「あんたも奴と一緒じゃねぇか!自分の大事な仲間の命犠牲にして何偉そうな顔してんだ!命を大事にしねぇ奴は俺が絶対許さねぇ!!」
そしてスタンは彼の顔をもう一度思い切り殴ろうとしました。すると
「…もういいよ。」
ハリーが静かに口を開きました。
「もうここには傷つけ合う人なんていないよ。だから、もういいよ。」
そう言うと、ハリーは胸につけたネックレスに手を当てて、そっと目を閉じました。すると、今まで薄暗かった空が明るくなり、人々の顔が少しずつ優しくなっていきました。それは、ハリーが胸につけていた赤い石の力で、人々の心の奥にある優しい気持ちを蘇らせる不思議な力だったのです。
しばらくすると、人々は互いに手を取り合い、互いの仲間を助け合うようになりました。
それを見ていたチョウは、ハリーとスタンに言いました。
「俺の目に狂いはなかった。ありがとう。俺はこれからここで仲間達の手当てをしながら暮らすから、どうか先に行ってくれ。」
すると、スタンが言いました。
「チョウ、俺たちをここまで連れてきてくれてありがとう。この恩は絶対に忘れないよ。」
そして、深く深呼吸をして目を開いたハリーは、チョウの肩に手を当てて言いました。
「村の人たちによろしく。」
そう言われたチョウがうなずくとハリーは立ち上がり、二人はチョウに別れを告げ、また北へと向かうのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます