サウスゲート

「戻ってきたぜ。バカヤロウ。」

チョウは門の前に佇みながらそう言いました。

サウスゲートはとてつもなく大きな壁が遥か遠くまで続いていて、まるで他の世界と隔離されているようでした。よく見るとそれは長い間降り積もった雪と氷が何層にも重なってできていて、いつの間にか石のように固くなってできた壁なのでした。

ハリーは「どうしてこんな大きな壁があるの?」と聞くと、チョウはこう言いました。

「この壁はな、元々はなかったらしいんだが、ここはクリスタルマウンテンの入り口でもあって、さらにはあの大喧嘩が長く続くもんだから、誰かが他の世界と隔離をするために作られたものなんだって誰かが言ってた。呪われた場所なんて誰も行きたいだなんて思わないだろう?」

その話を聞いて、スタンが言いました。

「俺が住んでたあの森も、こんな風に見えてたのかな…」

そんなスタンにチョウは言いました。

「誰にだって怖くて近づけない場所はある。だがその向こう側で必死に生きてる奴もいる。一度は離れたこの場所には、俺が終わらせなきゃならない戦いがある。俺は君達の勇気を信じる。共にこの長く続いた戦を終わらせよう。」

スタンとハリーは胸を張り、堂々と親指を立てました。

三人にとってこの時、それぞれの心が一つになったのを強く感じました。

目の前にあるとてつもなく大きな壁の向こうにある、誰も止めることができなかった戦いと、その向こうで助けを待っている沢山の人達の為に、いよいよ三人は大きな壁の中に小さく開いた門の中へと消えていきました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る