山賊達の願い

その頃外ではチョウとスタン達が大きな丸太小屋を作っていました。その小屋は村では一番大きく、出来上がれば相当な数の人々が寝泊まりすることができるほどの大きなものでした。丸太の組み立てる順番をチョウが決めて、他の山賊達は材料を作り、残りの数人とスタンがその材料を組み上げていくのです。山賊達に混じって力仕事をしているスタンはとっても働き者で、一緒に組み上げをしている仲間が寒さで凍えそうな時は、「オレが進めておくから少し温まってきな」と言って、仲間の休憩中にもその分組み上げの作業を進めるのでした。そのおかげもあってか、予定ではあと一週間以上かかりそうな作業が、残り数日で終わりそうな勢いでした。


仲間達はそんな働き者のスタンにこう聞きました。

「会って間もない自分達の為に、なぜここまでしてくれるのか」と。

すると、スタンは言いました。


「オレは昔人々に迷惑ばかりかけてきた。そんな時、人間の女の子がオレに優しさを教えてくれた。だからオレはその日から、人が喜んでくれる事をしよう。オレなんかが力になれるならその力を使って人の為に何かをしようと決めたのさ。」


その言葉を聞いた仲間達は涙を流しながら、

「あんた、ホント良いヤツなんだな…。」

と口々に言いました。

するとスタンは言いました。

「オレにとっては当然の事。オレのこの力は正しい事をする為にもらったものだからな。」

すると、仲間の一人は言いました。

「あんたなら、ヤツらを止められるかもしれないな…。」

他の仲間達も、そうだそうだと口々に言いました。

スタンは「どういう事なんだ?」と聞くと、一人が話を始めました。


「この先にノースフロンティアという場所があってな、俺達はそこからこの村にやってきたんだ。そのノースフロンティアでは国同士の大喧嘩が起きていて、どちらが優れた国なのかを競っているんだよ。俺達はその大喧嘩に巻き込まれて、最初は言う事を聞いてたんだけど、段々何の為に戦ってんのか分からなくなっちまった。結局意地の張り合いだって事に気がついたのさ。だったら俺は傷ついた奴らが休める場所を作ろうとしているチョウの所へ行こうと決めてここに来たんだ。もしあんたがここまでの力と優しい気持ちがあるのなら、もしかしたらヤツらを止められるかもしれないな。」


そう言うと、彼は一つため息をつきました。

「喧嘩したって何も変わらないのにさ…」

その言葉につられて、他の仲間達も深いため息をつきました。

すると、スタンがこう言いました。


「心配すんな!そこまで言うなら、あの小屋を完成させたら、オレがヤツらを止めに行く!だからそんな顔すんな!」


そう言うとスタンは作業場へ戻りました。

残された仲間達は少しの間黙っていましたが、仲間の一人が

「彼は俺達の希望だ。俺達も彼と共に頑張ろう!」

と言って飛び出すと、他の仲間達も大きな声をあげながら作業場へと向かうのでした。

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