ノースフロンティア

二人は山賊達からもらったご飯を平らげると、早速手伝いに取り掛かりました。スタンは山賊達が途中まで作っていた小屋を作る手伝いを。そしてハリーは山賊達が手作りをしたテントの中で、傷ついた人達の看病の手伝いをしました。どうやら山賊達はこの地に小さな村を作るつもりで、傷ついた人達をその村に住まわせる計画なのだと話してくれました。そこでハリーは一つ気になる事を聞いてみました。「なぜ、こんなに多くの傷ついた人達がいるのか」と。すると、山賊の一人が傷の手当てをしながら話し始めました。


「ここから更に北に行くと、ノースフロンティアと呼ばれる場所があり、そこではウッカフリーダとロベルタという二つの国が大喧嘩をしている。その戦いで傷ついてしまった兵士達が、この場所に逃げ込んでくる。そして、元々自分達山賊はその戦いが嫌になって逃げてきた兵士だった。チョウはロベルタ側の偉い人だったが、この大喧嘩には反対だと言って一人この地へ降りてきた。それからチョウは一人きりでこの場所を傷ついた兵士達の為の村を作ろうと決めた。ここにいる患者は、どちらの国かは関係なく兵士として大喧嘩に巻き込まれた人達が傷を負って降りてきた人達なんだよ。それを手当てするのが自分達の役目なのさ。」


そう言うと、彼は次の患者の手当てに向かいました。


しばらくしてテントの中の患者を見終わった山賊達は、ひと休みする為に外へ出ました。ハリーが山賊達と一緒に外に出ようとした時、兵士の一人が「そこのオオカミさん、ちょっと来てくれ…」とハリーを呼びました。ハリーがその声のする方へ向かうと、全身包帯で巻かれた患者がハリーの方を見つめていました。

「どうしたんですか?」とハリーが聞くと、その患者はハリーの首についているネックレスを見てこう言いました。


「私は昔ハグルマビーチに住んでいたんだ。もしかしてそれは魔法使いからもらったものではないかな?」


ハリーが「そうだよ」と言うと、彼はこう言いました。


「昔こんな話を聞いた事がある。ハグルマビーチには街の人も知らない不思議な話があって、その一つに、愛と優しさを封じ込めた赤い石と、勇気ある者に力を与える黒い石があって、それを手にした者が、ノースフロンティアに平和をもたらすであろうという話があってね。もしあなたがその選ばれた者だとするなら、どうかあの場所の大喧嘩を止めてもらいたい。きっとこれは神様があなたに与えてくれた試練なのかもしれないからね。」


そう言うと、彼は静かに眠りにつくのでした。

ハリーは彼の眠る姿を見ながら、「僕にできるなら、やってみるよ。」と心で思いながら外へと向かったのでした。

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