第15話 工藤春が死んだ理由

宮北は公園に来た雷句先生にあるものを見せた。それは工藤春について知っていることがあるかを複数の工藤春のフォロワーにdmを送った、その後の返信だった。

その中で皆一様に知らないの一点張りだったが1人だけ、彼女のことを知っていると言う子がいた。

彼女の名前は沙織(さおり)というらしい。

彼女はdm上でこう言っていた。

『春は私に自分の腕を見せたんです。私には綺麗な何も書いていない腕に見えたんですけど、彼女は腕にいっぱいバツが書いてあるって言ったんです。なんのことか全然分からなくて、調べてみたら心の問題というか、心に問題があると見えないものが見えるってそのサイトには書いてあって、だから春が見ているものも全部心のバグなんじゃないかと思って彼女に言ったんです。『すぐ消えるよ』って。でも、彼女みたいな優しい人が亡くなるなんて信じられませんでした』

それを雷句先生は見て、心のバグかそういう見方もあるかもねと言った。

雷句先生からも話があるようだった。

雷句先生は言った。

『君の言っていた彼女の彼氏に会いたいか?医者にも黙っていることも必要なんだけど、彼女の亡くなった理由の核心をついてしまうが言っていいかい』

宮北くんは言った。

『もったいぶらないで言ってくださいよ。俺らはチームでバディなんだから』

雷句先生は言う。

『確かにチームだが、バディになったつもりはない。そこだけは強調しておくよ。実はその彼女の彼氏を診察した時があるんだ。彼にもバツがあったんだ。でも、彼は悲観的にバツを見ていなくてバツこそが人間を変えることができるって意味のわからないことを言っていたよ。彼のいる場所は分かるんだ。彼は君と同じ高校に通う高校生で、君ならすぐ分かると思うよ。髪が茶髪で眼鏡をかけていて、生徒会長をしているから。確か名前は鍵山だっかな』

宮北くんは先生を見ていった。

『鍵山くん、知っています。でも、なぜ彼はみんなが春が亡くなり涙を見せていたのに、彼だけ下を向いて欠伸をしていたのでしょう。彼女の彼氏ならもっと辛いはずなのに』

雷句先生は分からないのかと首を傾げて言った。

『それは多分鍵山くん自身に何か取り憑いているんじゃないか。鍵山くんに聞かないとなんとも言えないが、鍵山くんに何かあるのはなんとなく分かる。学校にでも行ってみるか?生徒会があるからまだ学校には残ってるだろ』

そう言って、俺と雷句先生は放課後の教室を訪れた。

雷句先生は何かあるか分からないと学校の外で待つことにしたらしい。

教室をひとつずつ確認していると鍵山らしい男が春の机にチョークでバツと書いていた。

彼は犠牲になってくれてありがとう。と言っていた。

それを見て、鍵山くんに声をかけた。

『鍵山くん、どうしたのこんなところで。さっき、聞こえちゃったんだけど鍵山くん『犠牲になってくれてありがとう』って言ってたけど、それは無いんじゃない。彼女は死んでしまったんだよ。鍵山くん何か隠してるよね。春が死んだ理由知ってるの?』

鍵山くんは急にオドオドし始めて言った。

『聞いてたの?耳いいんだね。彼女は僕のせいで亡くなったんだよ。僕と彼女が付き合ってた時、彼女が僕のことを本当に愛してるか分からなくなって、彼女が他の男と話すたびに嫉妬が渦巻いて彼女に魔法をかけたんだ。彼女の辛い記憶とか全部が蓄積されてバツになる魔法をかけた。彼女が死ぬまで魔法は続く。心のバグは無くならない。でも、彼女がいなくなったおかげで僕についていたバツが消えた。誰かが死なないとこのバツは消えないんだよ。あー、あいつがいなくなって本当良かったよ』

宮北くんは涙をこぼして言った。

『全部...お前のせいだ』

宮北くんは鍵山くんの前で手をかざし言った。

『お前はこれから、3階のこの窓から飛び降りる。理由は工藤春が亡くなり、気が動転して死にたくなったから。目を覚ました時、自分が工藤を殺したと自首する』

そう言って鍵山は窓に足をかけて飛び降りる準備をしながら、宮北を見て言う。

『お前、なんなんだよ。死にたくない。助けてくれよ』

そう言って飛び降りた鍵山を発見した雷句先生は救急車を呼んだ。

かろうじて生きている鍵山は病院へと運ばれて、鍵山が目を覚ましたのは1ヶ月後だった。

鍵山は自分で飛び降りたこと、工藤を殺したのは自分だと自首したのだった。

学校では生徒会長がまさか工藤を魔法で殺したとは思わなかったと話題は持ちきりになった。

放課後、宮北と鍵山が話していたことすら周りは気づいていなかった。

雷句先生は事情を知り、宮北に言った。

『お前と一緒で自分も事実を知ったら同じことをしていたと思う。だから君を責めたりはしない。ただ、教えてくれ、君は何者なんだ』

宮北は言った。

『俺は天馬山(てんばやま)で生まれた魔術師であり、高校3年生の受験生です。先生こそ何者ですか?』

雷句先生は答えた。

『自分はここで先生やりながら数々の患者のバツを見てきた医師だ。治すために、話を聞いたり、助言をしたり薬を出したりして助けてる。

頑張ったな、宮北。さすがバディだな』


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