第6話 2人だけで馬鹿みたいに楽しい会話をする
昼休みに星崎さんを誘ってからというもの、緊張やら興奮やらで授業などの詳細な記憶が無い。だから今の俺は──放課後になるのって、こういう時に限って速すぎね?と思うばかりだった。
そんなショートコント以下の1人劇場的なもので1人でボケていると、星崎さんは覚悟を決めた表情で教室を出て行った。
多分、一旦別行動で現地集合。互いに後を付けてくるであろうクラスメイト達……特に陽キャ集団を撒いてから集まろうということだろう。
言葉などハッキリ言って無粋。考えれば何となく分かるイージーな問題だ。
──だって、2人の大事な話を互いに邪魔されたくなんて無いからな。
数分後、俺もしれっと教室から出ると……予想通りにコソコソと後を付けてくる輩が数人居る。恐らく仲の良い友達が冗談交じりで追い掛けて来てるのかと思ったが、どうやら俺の苦手な陽キャたちであった。
──うん、全力で撒こう。
絶対に、絶対に邪魔されたくなんて無いからな!
俺は自分に喝を入れた。
そして早歩きをしたり、遠回りをしたり、途中で無駄な行動や唐突な全力疾走。俺しか知らない抜け道や隠し通路、近道……など自分で考えられることの全てをやり尽くし、間髪入れずに掻き乱し続け追っ手を撒くのてあった。
☆☆☆
「はぁ、はぁ、はぁ……」
一応、こんななりでも運動部(弱小サッカー部)で体力には自信があるんだけれど、ここまで追っ手がしつこいとは……ね。数十分学校を動き回り、ようやく陽キャたちを撒き終わり約束の旧校舎の資料室へ辿り着いた俺。
その時には全身汗だくで、今日は涼しい日なのにも関わらず、前にここに来た時と同じ状況に近いような気がした。
「ふぅ……」
取り敢えず、陽キャたちなんてことは一旦忘れて……頭を星崎さんだけにする。
そして乱れた息や服装を整え、資料室へ入る。
自然と前と同じように、なんの気にもせずに入った。
「あ……」
「や、やぁ!」
資料室に入ってすぐに、星崎さんと目が合った。
「っ!?」
すぐに顔から下に視線をやるが………うん、今回は服着てる。
って、当たり前か!
資料室=裸の星崎さん で、俺の中ではここはすっかり定着してしまっているので、ついつい驚いてしまった。
「──ちょっと。今絶対、また私が裸だったらなんて想像しながら身体を見たでしょ?変態、キモイ!」
「おいおいおい、入っていきなり罵倒ラッシュかよ」
まぁ、星崎さんが言っていることはほぼほぼ合ってるけど。
ここは俺と星崎さんが初めて会話をした場所であり、星崎さんの産まれたばかりのありのままの身体を独占欲視聴してしまった“思い出”&“馴染み”のある場所でもある。
「はは……ここだとね、何かと色んなことを思い出しちゃうかも。まぁ“何か”とは言わないけど」
「あら、じゃあもう一度ドロップキックをお見舞しなくちゃならない場面かしら?」
「あ……あはは、嘘です。すいません、冗談言いました。じ、自分はあの強烈なキックを貰ってからすっぽりと頭から抜けちゃって実は何も覚えてないんですよ!」
「へぇー、ならばよし!って、馬鹿みたいにとぼけたって責任は無くならないけどね!」
ったく、どうしてこんな馬鹿みたいな会話なのに……そんなにも楽しそうに話をするのだろう。前々から感じてたけど、俺と星崎さんって……元は知り合いだったり?
まだまだまだまだ初対面ということに変わりは無いはずなのに、どうしてここまで息が合って会話が盛り上がるのだろう?相性が元から抜群に良かったりするのか?
うーん?でも同中に『星崎』って言う苗字の女子は居なかったし、前に同小の卒アルも確認して居なかったはずだけど?
まぁ、いいか。
俺は気持ちを切り替え、星崎さんとの馬鹿みたいに楽しい会話で抜け落ちてしまった緊張感を再び装備し、真剣な表情で本題に入るのであった。
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