第3話 あまりにも唐突過ぎてぶっ飛んだ話


「──お嫁さんに貰ってもらうんだから!」


 それはあまりにも唐突すぎて、ぶっ飛んだ話であった。その為思考回路が上手く機能せずに、ついボケたように呆けてしまった。






「ねぇ、話聞いてたかしら?私今とても真面目な話をしてたのだけど?」

「あ……ごめん。話は聞いてた。だけど……しょ、衝撃的過ぎて頭がついて行かなかっただけだよ」

「ふふ、まぁ無理も無いわね。こんな美少女がいきなり婚約を求めてきたのだから!」


 えー、そういうの自分で言っちゃう系っすか?

 確かに星崎さんは美人だけど、ちょっと自信過剰では?

 と、思うも。話の内容的に俺が得というのには変わりがないような、あるような。


 ってか、どうしてそんなお嫁さんだとか結婚だとか話が壮大になってるんだ!?


「って、あのお嫁さん?」

「そ、そ、そうよ!お嫁さん。あなた・・・のよ!生涯を共にする夫婦ってやつよ!男と女の深い契りよ!男女の永遠の愛を誓う的なやつよ!」


 な、何それ……

 ご茶混ぜの説明の戸惑いつつも、平常心を何とか抑えた。


「ちょ、ちょっと待って!一体何がどうあって結婚っていう流れになったの?動揺し過ぎておかしくなりそうなんだが?」

「まぁ、そう感じるのもおかしくはないわね。だけど、前々から……じゃなくて、今決めたの。あなたが私に対してとらなければならない“責任”ってやつを」

「いやいや、おかしいって。結婚なんだぞ!まだ高校生で、まともに働いた事すらないのに……それに、付き合うとかの過程を全部すっ飛ばしていきなり結婚とか常軌を逸してるよ!」


 そもそも俺と星崎さんは一応1年間を共に過ごしたクラスメイトなのではあるが、今さっき初めて話した薄っぺらな関係である。とても結婚に至るというまでお互いを知らないのだ。


 あ、そうだ!そういう事か!もうそれしかないな!


「星崎さん、もしかして動揺してる?」

「え……?」


 うんうん、やっぱりか。

 星崎さんは今現在、自分の裸体を見られた影響で酷く混乱状態&錯乱状態なんだ!だから当事者の俺に対し、バグった結論のまま話を進めてしまったのだろう。


 大丈夫、俺は即OKするほど聡明な男でも、決断力がある男でも、肉体目的だけの変態でも、クズでも無い。何処にでもワラワラといる普通の一般ピーポーである。


 なので、現実を見て無難に受け流させてもらおう!


「えっとね……そう簡単に自分の人生を考えるのは良くないと思うよ。確かに裸を見てしまったのは本当で、すごく申し訳ないとは思ってる。星崎さんと結婚って考えただけでも夢のある話だって思う。だけど、そこまでの責任を俺は背負いかねないかな」

「でも、嫁入り前の生娘の裸体を見た男児は責任を取ってその娘をお嫁に貰わないと行けないって、おじいちゃんが言ってたよ」


 おじいちゃんっ子……なのか?

 ギャップ萌えしそうなりつつも、我慢し話を進める。


「一体、いつの時代の考えだよ!今は令和。多様性の文化、多様性の考えが盛んで当たり前の時代なんだ。そんな古い風習?的なものは、今じゃ毛嫌いされてる世の中なんだ!」


 どうか、目を覚まして欲しい。俺なんかと、容姿端麗な星崎さんでは月とすっぽんみたいなものなんだ。全く持って釣り合わないと思うんだ。それに今回はハプニングな事な訳だし、ぶっちゃけ言っちゃえば気にしなければどうとでもなる話なんだ!


「──え……私じゃ、ダメなの?」


 っ!?


 否定、拒否を続ける俺に……どうしてか、目を蕩けさせ、甘えるかのように聞く星崎さん。オイオイ反則だろ!と、叫びたかったがぐっと乱れた理性を正す。


 まさか美少女の“お願い”がここまで心に、感情に呼び掛けてくるものだとはエグイな。





 うーむ。このままじゃ、話を強引に持ってかれる……かも。それは俺にも、星崎さんにも悪い方向に流されてしまう。破滅エンドor自滅エンドしか待っていないクソゲーになるだろう。だから俺は半ば強引に“保留”という形でこの場を切り抜けるのであった。


 だけど……


「──と、と、取り敢えず保留は了解したわ。少し考える時間が必要なのも分かってる。だけど十分に考えて自分に納得したら私に声を掛けて。私はどんな事があっても考えは変わらないと思うけど。

 ……でも断るって言うのは無いと信じてるから。お嫁前の生娘の裸体を覗いたんだもの。それ相応の言葉と覚悟を期待してるわ」


 と、釘を刺されたのであった。



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