第39話 しらべのうっかり

「わぁぁぁぁぁ」

「まだやってんのか? 高校には受かったんだから良いだろ。順位なんか気にするな……ってのも変な話なんだが、するな」

「まだ正式な結果は出てないけどね。いや違うの、ご飯がお焦げ焦げになっちゃったの」


「どれど……わぁ、これはひどい。ちょっと食べられるもんじゃないなこりゃ」

「うぅぅ。おにぃならなんとなる範囲かも知れない」


「ならねぇよ! 白いとこがほとんどないじゃないか。いったいどうしてこうなった?」

「ちょっと考えごとしてて。おコメを研いだあと、水を入れるの忘れて炊飯器にセット。そしてそのままスイッチオン……」


「おう、なんてこった。この炊飯器も古いからなぁ。それにしても、お前にしては珍しいミスだ。いったい何を考えてたんだ?」

「ロシアのウクライナ侵攻で株価が暴落したでしょ。いよいよ世界はリセッション入りかなって」


「分かりやすいウソをつくな。ほんとは?」

「マンガ読んでた……」

「そんなことだと思った。そういえば、無料でマンガが読めるサイトがたくさんできたんだったな」


「そうなの。コミックアーススターにマグコミ、ガンガンオンライン。ニコニコマンガ、サンデーうぇぶり」

「ずいぶんと増えたな」


「集英社のマンガMeeでは『リボン』『マーガレット』、白泉社は『花とゆめ』『LaLa』とか」

「なんか豪勢だな」


「雑誌を読ませて単行本を買わせようっていう作戦らしいよ」

「なるほどね。ネット配信雑誌なら、印刷や配送の必要がないだけコストも安くできるはずだ。これからのマンガ業界のビジネスモデルは、儲けは単行本で出すという方向に行きそうだな。良い時代になったものだ」


「それでね」

「まだなんかあるんか」

「おとんから貰った吉牛の割引券がここにあるわけだが」

「それがどうした?」


「使えるのは未成年だけで、しかもお持ち帰り限定なの。だから、ね?」

「……」

「ねってば?」


「ご、ご飯ぐらい炊き直せばいい。炊飯器は俺が洗うからもう一度コメをとげ」

「そうすると、時間がかかっちゃうもん」

「パンとかないか」

「買ってない」

「うどんがあったよな」

「いまから作るとまた時間が」


 俺が買ってくる時間はかかってもいいのかよ。


「あ、卵はあるからお新香もいっしょにね」

「分かりましたよっ!」


 妹なんて、ろくなもんじゃねぇ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る