第38話 しらべ、受験でやらかす
「わあぁぁぁぁぁあぁぁぁ」
「……」
「わぁぁぁぁチラッあぁぁぁぁぁぁ」
「……(無視しといたほうが無難な気がする)」
「わぁぁんチラッチラッわぁぁぁぁチラッわぁぁん」
「チラッじぇねぇよ。もう、俺に聞いて欲しいことがあるならそう言えよ」
「受験に失敗したぁぁぁぁ」
「マ、マジでか!? あんだけ自信たっぷりだったくせに?!」
「私としたことが、大失敗したぁぁぁぁ」
「だ、大丈夫だ。まだ二次試験があるだろ。欠員が出ればの話だが」
「それは関係ないけど、あぁぁぁぁぁぁ」
「関係あるだろ!? それとも他の高校の二次を狙うのか?」
「いや、そういうことじゃないの」
「なんだそりゃ。じゃあ、なにを騒いでたんだ」
「先生がね。『ボーダーラインは例年だと50点だが、今年は少し高くなっているようだ。55点は取れるように頑張れ』って言ったの」
「ああ、それを信じちゃったのか」
「はぁ?! なにあれ、ウソなの?」
「毎年、ボーダーラインを5点ずつ上乗せして全員に言っているらしいぞ。俺のときもそうだった」
「ぐわぁぁぁぁぁぁ。しまった。あんな大人しい顔していい根性してやがるぜ、先公め」
「こらこら、どこの893だよ。でもそれなら悪いほうには転ばないだろ? なにがあったんだ?」
「それが問題を大きくしたのよ。試験が終わって、問題を持ち帰って自己採点をしてみたの」
「ああ、自分の回答を問題用紙にメモしたのか。ずいぶんと余裕があったようだな」
「時間が余ったらやろうと思ってたんだけど、思った以上に時間が余ったのよ。あとでみんなと答え合わせ会をやろうと思ってメモしたんだ」
「友達も何人か一緒に受けたんだな」
「そうなの。うちの学校から7人が受験してる。それでね、まず全体をざっと見て、簡単にできる問題を先にやって」
「うんうん。それは俺が教えた通りだな」
「うん。そしたらそれだけで50点分あったもので、そこから3問だけ真面目に回答を考えた」
「3問だけ?」
「うん、1問2点だからそれで56点になるでしょ? あとは適当に書いた。記述式とか計算の面倒っぽいのは無視して選択もの全部最初の選択肢に〇」
「……それは教えた覚えはない」
「全教科それをやって、全体の平均点ぐらいはとれただろうと思ってたのよ」
「それなのに失敗したということは、予想以上に間違っていたってことか。試験をなめてるからそういうことになるんだぞ。だいたいお前はものごとに取り組む姿勢というのがだな」
「やかましい!」 ぼかっ。
「痛っ。なんだよ! 説教されてるほうが暴力を振るうな。ここはしおらしく聞いておくところだろうが!」
「間違ってるからよ」
「なにを?」
「適当に選んだ回答が、ことごとく的中しちゃったのよ!」
「はぁ?」
「全部合計すると、500点満点で440点も取ってしまったの!!!」
「はぁ?!」
「まぐれ当たりにも限度ってものがあるわよ。うちの学校から受験した中ではトップだって。全体でも10番くらいには入るだろうって先生が」
「よ、良かったですね」
「良くないから泣いてるのよ! 私の平穏な高校生活がダメになったらどうしてくれるのよ!」
「待て待て! どうしてくれる、って最後はなんで俺のせいみたいになってんだ」
「なんとなくよ!」
妹なんて、ろくなもんじゃねぇ! そういう苦情はせめて善意のウソをついた先生に言ってもらいたい。多分合格おめでとうだ! こんちくしお。
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