第35話 スイセン

「細野議員って自民党入りしたんだってね」

「もうずいぶん前だと思うが。それがどうした?」


「あの議員さん、発言がはっきりしていなくて」

「元民主党議員としては保守寄りだが、今の政権からすると微妙な立場になるかな。確かに中途半端な感は否めない」


「なんだかモナ足りない」

「それが言いたかっただけかよ!」



「この森の花も、そろそろ咲き始めたね」

「状況説明乙」


「これだけで、ふたりが森の中を歩いているという」

「それも以前やったからやめろ。スイセンが満開だな」

「私は正規入試を受けるよ?」


「推薦じゃねぇよ。草のスイセンの話だ。あの黄色いやつ」

「ああ、あれスイセンっていうのか。そういえば良く見るね」

「この季節に咲く花は少ないから目立つな。色も自己主張が強いし。そうそう、あれ猛毒だから食べないようにな」

「え? 毒があるの?」


「毎年4~5人ぐらいが、間違えて食べて病院送りになっているらしい」

「こんな花を、どうしたらなんと間違えるのかな」


「花は食わないだろ。葉がニラと似てるんだよ。八百屋さんが間違って販売したって事件が報道されてたな」

「うわぁ。売ってるものでも安心できないのかぁ」


「3人ぐらいが病院送りになったらしい。しらべには良く形を覚えておいてもらいたい」

「自分の命が心配だもんね」

「ま、そ、その通り」

「正直でよろしい」


「植物での食中毒で一番数が多いのがスイセンだから、特にこいつには気をつけてくれ」

「あれ? でも一番多くて年に4~5件ってのは少なくない? キノコなんかもっとありそうだけど」


「キノコは植物じゃないからな。菌類だ」

「こまけぇこたぁ、いいんだよ」


「分類だから仕方ないだろ。キノコは毎年200件ぐらい食中毒が起こってたはずだ。たしかに件数では圧倒的にキノコのほうが多いな」


「今度おにぃとケンカしたら、そこいらのキノコを入れたビーフシチューを作ってやろうっと」

「それだけは止めて!」


 妹なんて、ろくなもんじゃねぇ!

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