第28話 Kindle

「おにぃ。おとんがこれをくれたんだけど」

「なにをだ……おいっ。それ、Kindleのpaperwhiteじゃねぇか!!」

「本が読めるらしいんだけど」

「読めるぞ。俺でさえも持っていないというのに、なんでお前にだけ甘いんだよ」


「私が本を読まないからって、くれたみたい」

「本を読む俺にくれよ!」


「おとんが買い換えたから、古いのをくれたらしい。だけど難しい本ばかり並んでて読む気になれない」

「どれどれ。エロ本があったら俺に貸してくれまいか」


「さすがにそれは消したと思うよ」

「なんで買ったことあるのが前提なんだ。どれどれ。三上延、支倉凍砂、三浦しおん、田中ロミオ……おおっ。良いではないか。読みやすいやつばっかりだ。田中ロミオなんてラノベだぞ?」


「ふぅん」

「なんの興味もなしかよ。アニメやドラマになっているやつばっかりだ……おとんもいい加減ミーハーだな」


「マンガなら良かったのになぁ」

「このリストにはマンガはなさそうだな。自分で買えばいいじゃないか」

「どうやって買うの?」


「これをネットに繋げば……あ、これはWi-Fiモデルか。うちにはないから、どこかで無料Wi-Fiを探す必要があるな」

「この辺のどこに接続場所がある?」


「コンビニ……まで徒歩30分か。うぅむ」

「ないよねぇ。おとんのAmazonアカウントをハックするかな」


「こらこら。親しき仲にも礼儀ありといってだな」

「いつもそれで買い物してるけど?」


「……そういえばそうだった。それならAmazonのKindleストアにアクセスして……待て、おとんは買っても良いと言ってるんか?」

「マンガじゃなきゃ良いって言ってた」


「お前はマンガしかいらないんだろ?」

「だから、コミックを買おうかなと」

「一緒だっての!」

「マンガが読めないなら、こんなもの使い道がないのよ」


「しらべ、それ、俺にくれ」

「3,000円でどないだす?」

「ただでもらったくせに、俺からは金を取るのかよ」

「なんか転売業者の気持ちが分かった」


 本を読まない妹なんて、ろくなもんじゃねぇ!

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